厳密にはまだ完全にフリーランスではないけれど、フリーという仕事形態に軸足をだんだんに移していくなかでもっとも悩ましいのが、「仕事の切れ目」。なるべく依頼が切れないようにと考えて引き受けたつもりが、こちらの予測をはるかに超えて? うれしいのか悲しいのか、よくわからない状態になることってときおりあると思うんです。で、いまのワタシがちょうどそんな感じ。2年ほど前からいまのような生活スタイルになったんですが、まさか年末年始も休まず稼働しっぱなしになるとは思ってもみなかったので、困惑しつつも楽しんで自分の好きな仕事に励んでおります。
と、前置きはこれくらいにして、ホントはもっともっと大事なお知らせがあるんです … じつはワタシ、人生初の本を書きました! 本、と言っても、小冊子といったほうがふさわしいくらいの、ささやかなもんです。
書名は、『《輝き》への航海──メタファーとしての「ラブライブ! サンシャイン !!」』でして、これは紙の本じゃなくて、Amazon Kindle ストア経由で流通している電子書籍というやつでして、本屋さんで売られているふつーの紙の本のような「実体」というものがありません。で、なんせはじめてのことだから、いったいどうやって「出版」すればよいのかもまるでわからず、脱稿したあとはほんとに手探りでやっとこさ、自分の誕生月である 10月にむりやり間に合わせ、なんとか刊行の運びとなりました(当たり前ですけど、原稿を書き終えるだけで1年くらいはかかっている)。
じつはさらに「じつは」があって、「やっぱ紙の本も作りたいな〜」と思ってググったら、なんとなんとこういう Web サービスがありまして、何冊か作ってもらいました(と言うと聞こえはいいが、じっさいは目次にノンブル入れ忘れたりでおシャカにしてしまった分もカウントしてのこと。Kindle 本は「リフロー」形式でいわゆる「ページ」という概念がないので、目次にページ番号を割り振っていなかったのが失敗のもと)。
自分の本の宣伝、とくると、今年は京都の観光大使だかなんだかを仰せつかっていた若い芸人さんが Twitter で、いわゆる「ステマ」もどきなことしてしっかり報酬はもらっていた、なんてことがバレて叩かれたりしました。自分の書いた本を自分が宣伝するぶんには問題なかろう、とは思うんですけども、インスタントに世界とつながってしまうこのご時世、うっかり不用意なこと書こうものなら矢だのテッポウの弾だのどこから飛んでくるかもしれぬ。なのであんまりおおっぴらに言いたくはないんですけど、このさいだからハッキリ言います──「みんな、買ってね !!(『サンシャイン!!』第1期5話、「リトルデーモン4号」になった黒澤ルビィふうに)」。
もうすぐ年明けを迎えますが、この小冊子についてはいくつか書きたいことがあるので、また稿を改めてここでも告知がてら、書き足すことにします。それでは本年はこのへんで。ちなみにいま、なんの仕事をしているかといえば、レバノンにトンズラした哀れな男に関する長めの取材記事の訳出(なんとタイムリーな、というか TV の前でひっくり返っていた)。これ以上は守秘義務上、言えませんので悪しからず。
… 来たる年も、とにかく前を向いて歩いていきましょう。「人生はすべてが苦である」と言ったのはお釈迦さまですけど、だからこそ、「うわっ! と思う瞬間がある」と高倉健さんは生前、おっしゃっていた。「《いまここ》で永遠を経験しないかぎり、どこへ行っても経験することはできない」と比較神話学者ジョー・キャンベルも言っている。たとえどのような世界であっても、そこに生きる人がみな生き生きしていれば、それだけで世界は救われることになる。これでも人並みに 50 年、生きてきて、ますますつよくそう感じるようになりました。
2019年12月31日
2019年12月22日
フィンランド発 MaaS サービスの衝撃
先々月の地元紙で見かけて興味を惹かれ、クリッピングしておいた記事についてもうじきクリスマスで冬至だというのに書いてます。
昨今は SaaS(=Software as a Service)だの、PaaS(=Platform as a Service)だの、「モノのインターネット」を表す IoT が急激に普及してからだしぬけに飛び交うようになった感があります。で、その記事が報じているのは、フィンランドで開発された MaaS アプリが日本上陸した、というもの。
MaaS とは Mobility as a Service、「サービスとしての移動手段」のことでして、ようは ICT による交通手段利用の革命ってことらしい。なにが革命的かって言うと、この記事で紹介されているフィンランドのスタートアップの開発した「Whim」の場合、「スマホ1台で目的地までの最適ルート選択、および鉄道、バスなどの交通手段の支払いがまとめてできる」という!
ふだんから公共交通機関を使い倒しているおっさんですので、この手の MaaS とかいうサービスをはやく試してみたい、と思ったりします。もちろんどんなテクノロジーにも思わぬ落とし穴はあるから、最低限の現金はあいかわらず持ち歩かないといけないとは思うけど、あれほど嫌っていた「なんとかペイ」、よもや自分がその「なんとかペイ」のキャッシュバックに喜ぶようになるとは昨年のいまごろはツユほども思わなかった(でもこれはいたしかたないこと。こっちだって好きでデジタル決済で支払ってるんじゃないです。おなじようなご同輩は多数いるものと思われる)。
ちなみにこのサービス、千葉県柏市で年内にも試行するとかで、思うに過疎地域でもあり、観光地でもある伊豆半島なんかまさにぴったりのような気がするんですけどね … 『ラブライブ! サンシャイン!!』効果で自分の住む街には全国どころか海外のお客さんもたくさん来てくれてますが、よく耳にするのが「PASMO 使えないの?」という声。もしこのフィンランド発のサービスがここでも利用できるようになったら、それだけでも「伊豆半島めぐりは楽しい! また来よう!!」ってことに、つまりアピールポイント、差別化につながるんじゃないかな。東海バスの乗り放題パスだけではダメで、タクシーも電車もぜんぶ入りではなければこれからはお客さんを呼べない時代になった、と言えるかもしれない。
… 自動運転の EV バスとか試験運行するみたいで、それはそれでけっこうとは思うが、もっと利用者の立場に立ったこの手の MaaS の導入に本腰入れないとイカンと思われますがどうでしょうかね。ちなみにヘルシンキの公共交通機関利用者のうち、この会社のサービスを利用した人の利用率はそうでない人が 48 %だったのに対し、63%もいたそうです。目的地までの経路検索+交通機関のデジタル決済付き、とくれば、当然利用者は増えますよね。公共交通機関が元気になれば、地域社会にももっと活力が生まれるはずです。
昨今は SaaS(=Software as a Service)だの、PaaS(=Platform as a Service)だの、「モノのインターネット」を表す IoT が急激に普及してからだしぬけに飛び交うようになった感があります。で、その記事が報じているのは、フィンランドで開発された MaaS アプリが日本上陸した、というもの。
MaaS とは Mobility as a Service、「サービスとしての移動手段」のことでして、ようは ICT による交通手段利用の革命ってことらしい。なにが革命的かって言うと、この記事で紹介されているフィンランドのスタートアップの開発した「Whim」の場合、「スマホ1台で目的地までの最適ルート選択、および鉄道、バスなどの交通手段の支払いがまとめてできる」という!
ふだんから公共交通機関を使い倒しているおっさんですので、この手の MaaS とかいうサービスをはやく試してみたい、と思ったりします。もちろんどんなテクノロジーにも思わぬ落とし穴はあるから、最低限の現金はあいかわらず持ち歩かないといけないとは思うけど、あれほど嫌っていた「なんとかペイ」、よもや自分がその「なんとかペイ」のキャッシュバックに喜ぶようになるとは昨年のいまごろはツユほども思わなかった(でもこれはいたしかたないこと。こっちだって好きでデジタル決済で支払ってるんじゃないです。おなじようなご同輩は多数いるものと思われる)。
ちなみにこのサービス、千葉県柏市で年内にも試行するとかで、思うに過疎地域でもあり、観光地でもある伊豆半島なんかまさにぴったりのような気がするんですけどね … 『ラブライブ! サンシャイン!!』効果で自分の住む街には全国どころか海外のお客さんもたくさん来てくれてますが、よく耳にするのが「PASMO 使えないの?」という声。もしこのフィンランド発のサービスがここでも利用できるようになったら、それだけでも「伊豆半島めぐりは楽しい! また来よう!!」ってことに、つまりアピールポイント、差別化につながるんじゃないかな。東海バスの乗り放題パスだけではダメで、タクシーも電車もぜんぶ入りではなければこれからはお客さんを呼べない時代になった、と言えるかもしれない。
… 自動運転の EV バスとか試験運行するみたいで、それはそれでけっこうとは思うが、もっと利用者の立場に立ったこの手の MaaS の導入に本腰入れないとイカンと思われますがどうでしょうかね。ちなみにヘルシンキの公共交通機関利用者のうち、この会社のサービスを利用した人の利用率はそうでない人が 48 %だったのに対し、63%もいたそうです。目的地までの経路検索+交通機関のデジタル決済付き、とくれば、当然利用者は増えますよね。公共交通機関が元気になれば、地域社会にももっと活力が生まれるはずです。
タグ:MaaS
2019年12月04日
南アルプスの恩人、逝く
日本の山岳写真の第一人者が亡くなった。白籏史朗氏です。
静岡県民としては、南アルプスの自然を美しいラージフォーマット(大判写真)やハッセルブラッドなどの中判カメラで捉えた写真作品として世界に発信した功績がまずまっさきに思いつくんじゃないかって感じるんですけれども … それと静岡県主催の「秀景ふるさと富士写真コンテスト」の審査委員長を 2010 年度から 10 年間務め、また NHK 静岡主催の「富士山とわたし」写真コンテストの審査委員長も務めていたこともありました。床一面に並べられたプリント写真を長い指揮棒みたいなスティックで仕分けしていく場面も TV で拝見したことがあります。
白籏氏は師匠にあたる富士山写真の先駆者、岡田紅陽の強力(ごうりき)みたいなことをしていたそうですが、偉大な写真家ながらたいへん気さくな方でして、ここにいる門外漢も一度だけだが、アットホームな講演会を聴きに行って、質疑応答のときに「寒さでシノゴ(4 x 5 インチの大型カメラ)のレンズシャッターのオイルが効かなくなってシャッターが壊れたことがあるのですが、先生はどんなオイルを使っているのですか?」とおよそ一般人が訊くような質問ではない質問をしたことがあります。そのときの白籏氏のお答えは「ぼくは鯨油を使っています」だったが、その後、自身の写真や主宰する写真愛好会「白い峰」の作品を前にだれとでも気さくに歓談しておられたその姿は、まだ 20 代だった自分にもとてもまぶしく、ああ、こんなふうに歳を重ねていったらすばらしいものだと思ったものでした。とにかく人徳と言うのか、まわりにすぐ人が集まる感じのやさしい人柄の方でした。
ザイルごと転落して九死に一生を得た話とか、活動拠点が高山なので、常人にはおよびもつかないとてつもない「体験」もふつうの人の何倍もされているから、きっとそういう体験の幅の厚みがすなわち人間力だったのかとも思う … とにかく訃報に接したとき、まず思ったのはああ、先生が愛してやまなかった南アルプスをめぐって大問題が持ち上がっているさなかに逝かれてしまった、という悲嘆だった(ご自宅がなんと三島市だったのにはびっくりした。あのへんはよく通りがかっているんですけども … )。生前、「リニア中央新幹線計画はほんとうに必要なのか」という地元紙のインタビューにも応じていたそうで … 「日本の国土を蜂の巣のようにしてなんのプラスがあるのか」。利潤追求の究極のエゴとマイホーム主義で取り返しのつかない結果を招く愚だけは、なんとしても避けなければならない、と静岡県民のひとりとしてつよく思う。合掌。
もし白籏氏の意を汲んで南アルプス保全のための署名活動とかが始まることがあれば、まっさきに署名したいと考えている。先日も地元のラジオ番組でパーソナリティーの方が、「(リニア新幹線トンネル工事予定地の)南アルプス直下の破砕帯は巨大な地下ダム。ここにトンネルを通すということは、この地下ダムをいっきに破壊する、ということだ」と卓抜な比喩で危機感をあらわにしていたのが印象的だった。
付記:「署名」、ということに関してすこしだけ補足。インターネットの普及とインフラ化にともない、いろいろなサービスがネット経由で行われるのがごく当たり前な 21 世紀前半のいまなんですが、いまひとつフに落ちないのが、いわゆる「ネットで署名運動ができちゃう」プラットフォーム。以前、高尾山古墳の保存を求める署名活動を進めていた市民団体がそこを利用していて、自分もそこを経由して署名したんですけど、他のネットサービス同様、そもそも「署名を集める」ということをまるで理解していないか、悪ノリ、ないし悪用さえしている例が目立つ気がする(いや、気がするんじゃなくて、じっさいにそう)。たとえば昨年のいまごろ、自分の住む街を舞台にしたアニメ作品『ラブライブ! サンシャイン!!』の主人公のスクールアイドル Aqours を演じる声優さんたちが晴れて紅白に出る、ということになったらなったでさっそく(?)、「彼女たちを出演させるな!」みたいなネガティヴキャンペーンもどきな「署名集め」がそのプラットフォーム上で展開されたことがある。
ワタシ自身、かつて西伊豆町宇久須[うぐす]の旧珪石鉱山だった山のてっぺんにアスベスト処分施設を造る話が持ち上がったとき、ほんとガラにもなく署名用紙握りしめて親戚や知り合い、馴染みの床屋や写真材料店なんかに飛びこんでは、建設計画の白紙撤回を求める署名をお願いしますと頭下げて廻ったもんだ。もちろん、人によっては断られたりもした。ひとさまの署名を集めるって、よほどの cause がなければとてもできませんよ、ふつうは。紅白出場無効を求めた話については署名を集める正当性もないし、だいいちそんなことよけいなお世話もいいところで時間のムダ、ですわぁ〜、とおおいに呆れたことがあります。そして自分がそこで「署名」して以来、迷惑メールよろしく、そのプラットフォームから「署名のお誘い」メールが頻繁に来るようになった。ほんとよけいなお世話。署名すべきかどうかその当人が判断すればいいだけのこと。Amazon のような商売するためのプラットフォーマーとは根本がちがう。
いずれにせよ署名活動のキホンはしっかり「顔出し」して、なんでそうする必要があるのか、ほんとうに署名を集めなければならないのか、を第三者にわかるように主義主張を訴えたうえで、「よろしくお願いします」と頭を下げるのが常識ではないですか。だれもかれも「署名集め」にかこつけて揚げ足を取ったり誹謗中傷まがいのことをするのはどこの世界に行ったって許されるもんじゃないって思うんですけどどうですかね。ネットが普及していちばん目につくようになったのは、この手のあと先考えない「安直人間」が爆発的に増えたこと。これには疑いの余地がない。
静岡県民としては、南アルプスの自然を美しいラージフォーマット(大判写真)やハッセルブラッドなどの中判カメラで捉えた写真作品として世界に発信した功績がまずまっさきに思いつくんじゃないかって感じるんですけれども … それと静岡県主催の「秀景ふるさと富士写真コンテスト」の審査委員長を 2010 年度から 10 年間務め、また NHK 静岡主催の「富士山とわたし」写真コンテストの審査委員長も務めていたこともありました。床一面に並べられたプリント写真を長い指揮棒みたいなスティックで仕分けしていく場面も TV で拝見したことがあります。
白籏氏は師匠にあたる富士山写真の先駆者、岡田紅陽の強力(ごうりき)みたいなことをしていたそうですが、偉大な写真家ながらたいへん気さくな方でして、ここにいる門外漢も一度だけだが、アットホームな講演会を聴きに行って、質疑応答のときに「寒さでシノゴ(4 x 5 インチの大型カメラ)のレンズシャッターのオイルが効かなくなってシャッターが壊れたことがあるのですが、先生はどんなオイルを使っているのですか?」とおよそ一般人が訊くような質問ではない質問をしたことがあります。そのときの白籏氏のお答えは「ぼくは鯨油を使っています」だったが、その後、自身の写真や主宰する写真愛好会「白い峰」の作品を前にだれとでも気さくに歓談しておられたその姿は、まだ 20 代だった自分にもとてもまぶしく、ああ、こんなふうに歳を重ねていったらすばらしいものだと思ったものでした。とにかく人徳と言うのか、まわりにすぐ人が集まる感じのやさしい人柄の方でした。
ザイルごと転落して九死に一生を得た話とか、活動拠点が高山なので、常人にはおよびもつかないとてつもない「体験」もふつうの人の何倍もされているから、きっとそういう体験の幅の厚みがすなわち人間力だったのかとも思う … とにかく訃報に接したとき、まず思ったのはああ、先生が愛してやまなかった南アルプスをめぐって大問題が持ち上がっているさなかに逝かれてしまった、という悲嘆だった(ご自宅がなんと三島市だったのにはびっくりした。あのへんはよく通りがかっているんですけども … )。生前、「リニア中央新幹線計画はほんとうに必要なのか」という地元紙のインタビューにも応じていたそうで … 「日本の国土を蜂の巣のようにしてなんのプラスがあるのか」。利潤追求の究極のエゴとマイホーム主義で取り返しのつかない結果を招く愚だけは、なんとしても避けなければならない、と静岡県民のひとりとしてつよく思う。合掌。
もし白籏氏の意を汲んで南アルプス保全のための署名活動とかが始まることがあれば、まっさきに署名したいと考えている。先日も地元のラジオ番組でパーソナリティーの方が、「(リニア新幹線トンネル工事予定地の)南アルプス直下の破砕帯は巨大な地下ダム。ここにトンネルを通すということは、この地下ダムをいっきに破壊する、ということだ」と卓抜な比喩で危機感をあらわにしていたのが印象的だった。
付記:「署名」、ということに関してすこしだけ補足。インターネットの普及とインフラ化にともない、いろいろなサービスがネット経由で行われるのがごく当たり前な 21 世紀前半のいまなんですが、いまひとつフに落ちないのが、いわゆる「ネットで署名運動ができちゃう」プラットフォーム。以前、高尾山古墳の保存を求める署名活動を進めていた市民団体がそこを利用していて、自分もそこを経由して署名したんですけど、他のネットサービス同様、そもそも「署名を集める」ということをまるで理解していないか、悪ノリ、ないし悪用さえしている例が目立つ気がする(いや、気がするんじゃなくて、じっさいにそう)。たとえば昨年のいまごろ、自分の住む街を舞台にしたアニメ作品『ラブライブ! サンシャイン!!』の主人公のスクールアイドル Aqours を演じる声優さんたちが晴れて紅白に出る、ということになったらなったでさっそく(?)、「彼女たちを出演させるな!」みたいなネガティヴキャンペーンもどきな「署名集め」がそのプラットフォーム上で展開されたことがある。
ワタシ自身、かつて西伊豆町宇久須[うぐす]の旧珪石鉱山だった山のてっぺんにアスベスト処分施設を造る話が持ち上がったとき、ほんとガラにもなく署名用紙握りしめて親戚や知り合い、馴染みの床屋や写真材料店なんかに飛びこんでは、建設計画の白紙撤回を求める署名をお願いしますと頭下げて廻ったもんだ。もちろん、人によっては断られたりもした。ひとさまの署名を集めるって、よほどの cause がなければとてもできませんよ、ふつうは。紅白出場無効を求めた話については署名を集める正当性もないし、だいいちそんなことよけいなお世話もいいところで時間のムダ、ですわぁ〜、とおおいに呆れたことがあります。そして自分がそこで「署名」して以来、迷惑メールよろしく、そのプラットフォームから「署名のお誘い」メールが頻繁に来るようになった。ほんとよけいなお世話。署名すべきかどうかその当人が判断すればいいだけのこと。Amazon のような商売するためのプラットフォーマーとは根本がちがう。
いずれにせよ署名活動のキホンはしっかり「顔出し」して、なんでそうする必要があるのか、ほんとうに署名を集めなければならないのか、を第三者にわかるように主義主張を訴えたうえで、「よろしくお願いします」と頭を下げるのが常識ではないですか。だれもかれも「署名集め」にかこつけて揚げ足を取ったり誹謗中傷まがいのことをするのはどこの世界に行ったって許されるもんじゃないって思うんですけどどうですかね。ネットが普及していちばん目につくようになったのは、この手のあと先考えない「安直人間」が爆発的に増えたこと。これには疑いの余地がない。
タグ:白籏史朗