2022年11月30日

バッハの無伴奏チェロ組曲

 先週の「古楽の楽しみ」は、バッハの6つの無伴奏チェロ組曲の特集みたいな構成でして、聴いたことがない珍しい音源があったり、じつは「フーガの技法」や「平均律」とおなじく、このケーテン時代の傑作にも「先行例」があったことなど、たいへん興味深く聴取させてもらった。願わくばこの番組も、「らじる」の聴き逃し対応にしてくれませんかね ……

 珍しい音源とは、ちょうど祝日だった先週水曜の回でかかった、グスタフ・レオンハルト自身がチェンバロ独奏用に編曲した版で自作自演した音源のことでして、ワタシはもうずいぶん前になるが、たしか東京芸術劇場で開かれたレオンハルトのオルガンリサイタル(招聘したアレグロミュージックさんの前宣伝には「貴(あて)なる人」とか書いてあった)会場にて購入した、「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」のチェンバロ独奏用編曲自作自演盤なら持っていて、ときおり耳を傾けたりしているけれども、こちらはまったくの初耳。さすがレオンハルト大人(たいじん)、無伴奏ものはヴァイオリンソナタ/パルティータのみならず、しっかりチェロ組曲も鍵盤用に編曲されていたんですね〜、掛け値なしにすばらしいとしか言いようがない(いま探してみたら、鍵盤編曲ヴァージョンの全曲盤もありました)。というか、気がつけば今年は没後 10 年ではないですか。レオンハルトは若かりしころがちょうど第二次大戦真っ只中で、電気も水もなく食料もわずかななかで、音が外に漏れないように練習していたとかどこかで読んだ記憶があります。いままた暗雲垂れこめつつある欧州の現状を、草葉の陰でどう思っているのだろうか。またレオンハルトには、こんなレアものの音源まであるみたいです。

 「無伴奏チェロ」の先行例として紹介されていたのが、ドメニコ・ガブリエッリ(ca. 1650〜1690)という北イタリアのボローニャの音楽家が残した「チェロのためのリチェルカーレ」という曲集のようで、こちらも寡聞にして初耳だった(遅かりし由良之助)。ちなみにこちらのガブリエッリ氏、ヴェネツィアの有名なガブリエリ一族とは無関係の人。バッハはこの人の出版譜かなにかを所有していたのかな? 『バッハ事典』に転載されていた「遺産目録」のコピーとか、あとで確認してみよう。 この「無伴奏チェロ」づくしな「古楽の楽しみ」、かかった演奏者もレオンハルトをはじめアンナー・ビルスマ、そしてバッハのこの作品ときたらぜったいに外せないパブロ・カザルスなど、往年の名手の懐かしい名録音も聴けて、なんだか心洗われる思いがした。

posted by Curragh at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM