毎年、この時期になると古い欧州の音楽伝統における「クリスマスと新年」が流れる「古楽の楽しみ」ですが、シュッツの「クリスマス物語」、そしてこの時期おなじみの「高き天よりわれは来たれり」(パッヘルベル)、「古き年は過ぎ去りぬ」(バッハ、BWV 614)などのオルガンコラールの名品もかかっていやがうえにもクリスマス気分がアガったのですが、フランスバロックのルイ=クロード・ダカン(1694−1772)が編んだオルガンのための「ノエル集」もまたこの時期よくかかります。でも先日の放送では「ノエル第3番」がかかる前に、MC の先生がなにやらもったいつけて「ある仕掛け」があるから聴き逃さないように、と言っていたのでたぶんアレだろうと思ったら BINGO でした。
ありていに言いますと、「水笛」というオルガンの自動演奏装置のストップが曲の後半で追加されていた、ということ。水笛はフランスでは「ナイチンゲール」を意味する「ロシニョール」(rossignol)とも呼ばれているのだそうで(こちらは初耳でした)、オンライン辞書でてっとり早く調べてみたら、rossignol にはなんと「売れ残りの本」、「流行遅れの品」なんて意味まであるじゃないですか! 「国家とは怪物である」とかつて喝破したニーチェじゃないですけれども、国家の指導者が誰も望んでなどいない侵略戦争を勝手に起こし、失われずにすんだ人命を殺戮するという、このアナクロ全開な動物以下の業(ごう)は、いつになったら「時代遅れ」になるのでしょうか。
そんな折も折、やはり NHK-FM のこちらの番組で流れていた「星空に愛を」を、2022 年を締めくくる1曲としてご紹介しようと思ったしだいです。じつはこちらの楽曲、カナダのプログレバンドのクラトゥの作品で、カーペンターズがそれをカバーして 1976 年に発表したものです。…… いかにも '70 年代な「オールヒットレイディオ」なる音楽番組で、「電リク」(もはや死語か …)してきた「マイク・レジャーウッド」なる人物に、DJ がやたらと早口で「リクエストをどうぞ!」とまくしたてて曲は始まる(気温 11℃、番組開始 13 分過ぎ)。
「ワレワレハ、キミタチノ地球ヲ観察シテキタ…」
「あ〜、マイクごめんよ、そういう曲はうちのプレイリストにはないんだ」
「ワレワレハ、キミタチノ地球ヲ観察シテイル ……」
「あ〜ごめんマイク、それはないんだ、あのね ……」
「ワレワレハ コンタクトヲトリタイ キミタチト …… BABYチャン」
[※最後のはミア・テイラーふうにしてみました]
お願い どうか平和的にやってきて
(降り立てばきっとわかる)
わたしたちの地球はもう持たないかも
(だからお願い、来て)
どうかお願い、惑星間お巡りさん
サインをくれませんか? サインを
応答を示すサインを?
(↑、"Only a landing will teach them" で太字部分がなぜか? love となっている誤記が散見されるため、ご注意。そうとったらそもそも意味がつながるはずもなし)
まさにいま、この歌詞のまんまな事態に陥りつつあるのは、まことに遺憾ながら認めざるをえない気がする(この前ここで触れた例の本の読後感は年明けに。もうひとつちょっと書きたいこともべつにあるので)。良き新年を。