2023年08月27日

Barbie

 この夏、物議を醸したことのひとつが、いわゆる“Bubenheimer”。で、オラには関係ないや、なんてのほほんと構えていたら天の配剤(?)か、やむを得ない事情で急遽、鑑賞することに。

 ごく手短に感想を書きますと、作品じたいはとてもよくできていて、配給元はなんであんなバカげた騒動を引き起こしたのかがさっぱりわからない。そしていまやかまびすしい感すらある(皮相的な)フェミニズム云々に偏向することもなく、のっけから『2001年宇宙の旅』のパロディで幕を開けるなど、楽しい仕掛けも盛りだくさん(バービー製造元マテル社の男の CEO が何度か“sparkling”と口にするが、ひょっとしたらこれも米国在住の近藤麻理恵氏のパロディかもしれない。「心がトキメクものだけを残せ」がこんまりメソッドにあると思うが、そのトキメキの英訳に使用されている単語が sparkling)。

 あらすじは、「なにもかも完璧で、毎日が同じことの繰り返し」なバービーランドから、現実の人間世界で起きたある事件をきっかけに、万年ボーイフレンドのケンとともにピンクのオープンカーでバービーランドと現実世界との“結界”を超えて人間の住む現実のカリフォルニア州へと乗り込む。人間世界にやってきたふたりは、バービーランドにいたときには感じなかった疑問に直面し、それがきっかけでバービーランドは大混乱……みたいな展開。結末はなんか人魚姫的にも思えたが、ミュージカル仕立てで(こちらも過去の映画作品のパロディを連想させる)ストーリーが進行するなか、ひとりの女性が、旧態依然な男中心社会がいまだに残るこの世界でどう生きるべきかも深く問いかける内容で、2時間近い上映時間もまったくダレることがなかった。

 ところで主人公バービーが模索した「女性の生き方」、いや、男女のべつに関係なく人としての生き方の参考になると膝を打った本があります。それが、初代バービー人形の着せ替え衣装を米国人デザイナーとともに開発した日本人、宮塚文子さんの回想記『バービーと私』。「ふつうの女子社員に名刺を持たせるということがない時代」に、「自分の時間はすべてバービーにささげました」と胸を張る宮塚さんのこの半世記はすばらしく、心を打たれた(宮塚さんはその後、自身の縫製会社を起業し、志村けん人形(!)やモンチッチ(!!)の衣装作りも担当したという)。

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posted by Curragh at 10:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画関連