COVID-19 の流行もだいぶ落ち着いてきたかなぁ、などとぼんやり思っていたら、ガザ地区からの電撃的攻撃で突如して戦端が開かれてしまった中東情勢(下手をすると、第五次中東戦争になりかねない)。それにつられて高止まりする原油などのエネルギー価格。毎月の電力料金の明細を見て嘆息しておられる方も多いと思う、今日このごろです。
ワタシは大の読書家でも愛書家でもないと自認してるんですが、それでも仕事に関係なく気になった本は図書館で借りたり、図書館になければこちらの専門サイト経由で注文して買ったりと、そこそこ読んでいるほうではないかと思ってます。というか、一度気になる本が出てくると読まずにいられないたち。たとえば 1987 年発行の奥付のある『ネットワーク犯罪白書』という翻訳本。インボイス問題でさんざん騒がれて、消費税というものが(とくにわれわれ零細業者にとって)益税でもなく、かつそんなもんは存在さえしないことがすこしは知られてきたのかな、などと思ってはいるんですが、とにかくその騒動の元凶である一般消費税導入前、まだ物品税で、パソコンも PC-98 全盛時代の昭和末期にアスキーから出版されたこの本の内容は、なんと「コンピューターを悪用したネットワーク犯罪」。すでにそんな知的犯罪が欧米のみならず、日本でも話題にのぼっていたなんて、いまの若い世代が知ればビックリ仰天すること請け合いです。読んで損はない、というか、資料価値もきわめて高い1冊かと思います。
ここで個人的な話をすこしだけしますと、いまワタシは2冊めの Kindle 本を準備しています …… 今回は翻訳本。翻訳といっても、100 年以上も前の 1906 年に初版が刊行された原著の新訳になります。いま流行りの言い方を使えば、「古典新訳」というやつですね。なので原書は原則的に版権フリーです。これをいつだったか、オンライン古書店で買い求めて読んでいるうちに、つぎはこの新訳版を出そうと心に決めました(笑)。
この Kindle 本についてはまた後日、正式に刊行したときにでも軽く触れるとして、いまいちばん強く思うのは、こういう騒がしい時代だからこそ、秋の夜長にお気に入りの1冊を手にとって、紅茶でも飲みながらページを繰る、というひとり静かに過ごすひとときがいかに人間の精神にとって大切か、ということ。どんな本だってかまわない。ワタシの場合はいちおうこれでも翻訳者なので仕事柄、アタマをカイメンみたいに絞らないとわからない、なんて難物もときには読んだりしますが …… たとえば個人的に近年、読んだなかでとくに難物だったのがコレ。おかげでダニエル・C・デネットという、米国の認知科学者にして哲学者を知ることができた。かなり時間はかかったけれども読了し、そのまま忙しさにかまけて放置していたんですが、新聞投稿の景品の図書カードが溜まりまして、ようやくいまごろになって ¥4,200 もするお高い訳書(しかもペンギンブックス版原著より分厚いハードカバー仕様!)を地元書店にて買い求め、ヒマなときに比べ読みしています。原文と人さまの訳を突き合わせるのもやはり仕事柄、必要な勉強というわけです。ちなみにこのデネット本、COVID-19 がらみで「耳タコ」になったワードの PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に関する記述もあります! 本を書いたデネット先生自身、まさかここまで人口に膾炙するバズワードになろうとはユメにも思わなかったでしょう(分厚い本、とくると、つい最近、延び延びになっていたトマ・ピケティの最新刊の邦訳がようやく出ましたね)。
そして前回、ここで紹介したような、読む者の背中をそっと押してくれるような爽快な読後感が期待できるラノベだっていいんです。先日、帰りのバス車内で女子高生のすぐ後ろの席に座ったんです。見るとはなしにその子のようすをうかがっていると(※ストーカーではない)、目にも止まらぬ早わざでじつに器用に親指フリックフリック! で、インスタだの LINE だの、iCloud フォトだのブラウザだのイヤフォンで聴いている音楽プレーヤー画面だの、それはそれは目まぐるしく画面を変え続けて、すこしは手も目も休めりゃええのにって、まことにお節介ながらそう感じて眺めてました。…… ま、ワタシもスマホいじくってるときは、おそらく第三者からそう見えているでしょうけれども。
で、思ったんですね。…… なるほど、だから『ネット・バカ』とか『スマホ脳』とかの翻訳ものノンフィクションがベストセラーになったのかって。たしかにそんなことばっかり続けていたら、マジで精神的に崩壊する恐れはある(Apple 元 CEO のジョブズや、MS 共同創業者のビル・ゲイツといった IT テック企業人でさえ、子どもにスマホやタブレット端末は持たせなかったって話もあるくらい)。そこで読書の出番だ。たまにはスマホから手を離して、紙に印刷された活字を追ってみるのも楽しいですよ。ハロウィーンパーティーで盛り上がるのもいいけれども、「読書の秋」とは、けだし至言です(投稿のお題は、ショーペンハウアーの古典『読書について』のもじり)。