何度か言及しているように、ワタシがこのシリーズとはじめて邂逅したのは 2017 年の夏で、たまたま深夜のEテレで『ラブライブ! サンシャイン!!』1期 13 話の一挙放送があり、自分の住む街が舞台のアニメっていったいどんなのずら、とほとんどなにも考えずに観たのがきっかけ。それから幾星霜 …… は大袈裟ながら、この『ラブライブ!』シリーズを知ってしばらくしてから、不肖ワタシも劇場版『ラブライブ!』で主人公の高坂穂乃果(こうさか ほのか)に「飛べるよ!」と背中を押した謎の「女性シンガー」のことばどおり、思い切って飛んで=Aいまの自分がいるみたいな経験もしているので、よりいっそう思い入れが深い。2015 年と言えば、じつは大晦日の「紅白」で、それとは知らずに μ's の「中の人」たちによるパフォーマンスを観ていた。…… よもや数年後、こんな展開になろうとは当の本人がいちばんオドロいている。
4DX 版ということで、われわれ観客もじっと静かに鑑賞させてはもらえない。穂乃果が走っている場面でさえ座席がゆさゆさ揺れ、NYC の摩天楼の展望ポイントで東條希や絢瀬絵里が風に吹かれれば肘掛けあたりから風が吹き付け、ハイウェイで μ's メンバーを乗せたタクシーと並走するコンボイトレーラーがホーンを鳴らせばその振動が伝わり、「Angelic Angel」、「SUNNY DAY SONG」、そしてバッハが音名 B-A-C-H でやったように、歌詞に μ's メンバーの名前を織り交ぜた感動的なエンディング曲「僕たちはひとつの光」といったライヴシーンでは座席が動くだけでは飽き足らず、スクリーンに映し出されている世界と同じく紙吹雪まで降ってくる。こちとら 4DX なんて経験したことないから、初回を観に行ったときは正直、面食らった。Don't disturb me! ってな感じで。2回目はもちろん織り込み済みだから、鑑賞に集中することはできましたが。
たとえばこちらのブログ記事のように、鑑賞がもっと楽しくなること請け合いの小ネタやトリヴィアのたぐいは μ's の物語ゆえ、すでに語り尽くされた感ありなので、ストーリーの感想とかは不要でしょう(cf. 星空凛が、「わかったよ! この街にすごくワクワクする理由が! この街ってね、すこしアキバ[秋葉原]に似てるんだよ!」という科白がある。劇場版『ラブライブ! サンシャイン!!』では、浦の星女学院スクールアイドルの Aqours のめんめんがローマのスペイン広場でライヴを披露したあと、メンバーの国木田花丸が「なんとなく、沼津の海岸にある石階段に似てたからずら」とそこを選んだ理由を答える科白があるが、個人的に花丸の回答は凛の科白とのアナロジーを感じる。花丸が学校の図書室で隠れて読んでいたスクールアイドル雑誌の表紙に登場していたのは、その星空凛で、花丸は彼女に憧れていた)。4DX 版は残念ながら本日で終了するけれども、ダマされたと思ってまずは虚心坦懐に作品をご覧になることをおススメします。何度も言うけれども、ワタシは決して「自分が呑んだことのないワイン」をうまいだのマズイだのと言わない人なので。ただ、エンディングの μ's のラストステージで歌われた「僕たちはひとつの光」に出てくる「いまが最高」という歌詞こそ、この作品がいちばん訴えたかったメッセージが集約されているように感じる。過去でも未来でもなく、「いまここ」で永遠性を経験しなければそれは決して経験することはできないという、比較神話学者キャンベルのことばがどうしてもオーバーラップしてきますね。
最後に、謎の女性シンガーが歌っていたあの楽曲について。「500 曲(!)にものぼる『ラブライブ!』シリーズ全楽曲がプレイできる」が売りのリズムゲームアプリ「スクフェス2」にも収録されてないから? と思っていたところ、なんとこれ、1930 年代のミュージカルナンバーのカバーだったことが判明した(1942 年の映画『カサブランカ』にも使われている)。どうりでないわけか(ちなみに「中の人」は、あの『名探偵コナン』主人公の中の人)。ブロードウェイの街ということでこの往年の名曲が採用されたのかどうかは不明ながら、『ラブライブ!』オリジナル曲と言われてもわからないほどこの作品にぴたりハマっていて、この楽曲を選んだセンスにも脱帽するほかない。
観に来ていたお客さんも若い女性が多くて、さすがは名曲と言われる「スノハレ(Snow halation)」の μ's だなァ、と感じたしだい。
…♪切なくて 時を巻き戻してみるかい?
No no no いまが最高!
だって だって いまが最高!
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