2008年01月27日

NYCのランチタイムコンサート

1). NYC関連の話題ニ題。まずはこちらの記事。バッテリーパークにほど近い、ウォール街の入り口に当たる場所に建つトリニティ(三位一体)教会。ここの音楽監督を17年も務めたオーウェン・バーディック氏がいきなり(?)辞職したことを報じたもの。バーディック氏のお名前は寡聞にしてはじめて知ったのですが、Naxosレーベルにここの聖歌隊を指揮したハイドンとヘンデルの録音を出している人みたいです。職を辞したのは今月7日のことで、記事によると、29日公演予定のモンテヴェルディの有名な「聖母マリアの夕べの祈り」のリハーサルをしていた最中のことだったらしい。教会がこの事実をはじめて公表したのも金曜日になってある記者に訊かれてからで、なんでまた急に、と記事を書いた記者が取材しても教会側は「被雇用者の辞職事由についてはノーコメント」。当の本人に電話したら、「いまは忙しくて話せない」。その後も無しのつぶてだそうです。なんだかよくわかりませんが、なにかあったことだけはたしかなようですね。3月にはハイドンのミサ曲、5月にはフランス古典期のモテットを演奏予定だったようですが、今月末のモンテヴェルディと5月のモテットのほうは代役を確保したものの、ハイドンのほうはまだ決まっていないとか。ちなみにここの教会のオルガンは9/11事件のときに被害を被ったため、プロスペクトのパイプ列だけ残して中身はそっくりデジタル楽器に入れ替えられた代物らしい(→関連記事)。

2). ここ数年、首都圏のコンサート会場では平日お昼のランチタイムコンサートが盛んになっていますが、この記事によると、NYCでも流行っているようです。たいていこの手のコンサートってなじみのある名曲が演奏されるもの、と思いきや、記事ののっけからなんとも通好みの作品が演奏されているではないですか(Amédée Rasettiってだれだか知らないけれど、18世紀の忘れられた作曲家らしい)。なんでもJupiter Symphony Chamber Playersという室内楽団は、あまり名の知られていない作曲家の作品を積極的に取り上げる昼・夜のコンサートを年20回、月曜日に開いているとか。また記者がクリスマス前に聴いたという'Trefoil'なる古楽三重奏団のランチタイムコンサートは14世紀イタリアのノエルを35分間、無料で聴かせてくれたという。ちなみにここの教会(パークアヴェニュー沿いのセントバーソロミュー教会)の音響は、

They began by slowly walking up the aisle, and from my spot in the 6th of 15 rows I could hear each voice distinctly as it passed, in clear, otherworldly harmonies.

だそうで、声楽にはうってつけの会場だったようですね。

 ユダヤ教シナゴーグのランチタイムコンサートはなんとオルガン演奏会。そこの楽器にはクレズマーの楽師が使うクラリネット(?)と「ショーファ」なる羊の角笛を模した変わった音色のストップを備えているんだとか。いったいどんな音だ??? もちろんNYCなので、デューク・エリントンとか、ジャズのランチタイムコンサートもあります。

 またジュリアード音楽院でもランチタイムコンサートを重要なカリキュラムの一環として力を入れているそうで、音楽院のキャリア開発部長氏いわく、

'One of the educational requirements for students is that they get performance experience,” Derek Mithaug, director of career development at Juilliard, said. “These kinds of concerts tend to attract a wide range of audiences, and they are a wonderful opportunity to connect to people who would not normally come into a concert hall.'

下線部はうなづけるお話です。日本でもそうですよね。こういう気軽に楽しめるコンサートを通じて音楽の喜びに接する機会をたくさん作ることがなにより重要かと考えます。

 ちょっとおもしろいな、と感じたのはつぎの一文。

At the same time, daytime concertgoers can be the best behaved of all. At Good Shepherd-Faith, where the Jupiter clientele is mostly retirees, all sat in rapt silence once the music began. I have never witnessed such decorum even at the Metropolitan Opera, where tickets cost up to 15 times as much.

えッ、それほんとですか、と思わず訊きたくなる。なんか逆のような気がしますが。さらにもっと驚くのは、

At first I thought people might have fallen asleep, something I’ve seen plenty of times at the Met. (And at the Philharmonic and Carnegie Hall.)

へぇ、そうなんだ! そういえばLiberaの子たちが、日本の聴衆は音楽に集中してくれるから好きとかって言っていたのを読んだことがあります。そんなにnoisyなのかなあ、向こうの聴衆というのは。居眠りについて言えば、ワインを飲んでから演奏会に臨んだものの、途中で舟を漕ぎはじめたという失態を一度、やらかした前科があります(恥)。

posted by Curragh at 20:58| Comment(3) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
この記事へのコメント
新宿で、もうずいぶん長いこと、月一回昼のコンサート(無料)を実施しているビルがありますけれど、プログラムは有名曲ではないことのほうが圧倒的に多いです。演奏家も有名な人は出ない。
でも、お客さんはいつもいっぱい。
・・・残念ながら、タイミングが合わないことが多くて、いつもは聴けないのですけれど、演奏の質は、耳にした限りでは、みんな、とてもいいんです。ヘタな有名演奏家よりいい。お客さんがお昼ご飯を忘れてまで席を立たずにいるのが、納得できます。
Posted by ken at 2008年01月27日 23:04
Kenさん

それってもしかしてオペラシティですか? くわしくは知りませんが、自分もときおり、財団からDMをもらっていますので。

みなとみらいホールやサントリーホールもオルガンや管弦楽など、多彩なランチタイムコンサートを開いていますが、いまだに行けず…チラシを見て楽しんでおります。それでも静岡市で開かれた地元演奏家によるお昼のコンサートは何度か聴きに行ったことはあります。たしかに有名演奏家も顔負けのすぐれた演奏、というのはありますね。

ほんとうは「リューバ」も見に行きたかったのですが、あいにくむりみたいです。
Posted by Curragh at 2008年01月27日 23:45
いえ、モノリスビル、と言う、ごく普通のオフィスビルなんですよ!
だから、
「よく続けているなあ」
と、感心しています。

日常仕事をしている場所で、ふと「いい音楽とすれ違う」というのは、恵まれた環境ですね。
すぐ近所なのに、私のいるビルでは、とんと企画がありません。

>「リューバ」も見に行きたかったのですが、あいにくむりみたいです。

あら、残念。。。
Posted by Ken at 2008年01月28日 20:26
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