2006年08月27日

思いつくままに

 最近の新聞記事から雑感をいくつか。

 イランのハタミ前大統領が来日したことを聞いたとき、?? と思ってましたが、目的は第8回世界宗教者平和会議(WCRP)に参加するためだったらしい。その前に東京都内で講演会も開いたみたいですが、やっぱり言ってることはいまのイラン大統領と変わらないじゃないか、と思う。せっかく被爆国日本に来たのだから、京都からそのまま広島・長崎にも足を伸ばしていただいて、核兵器の恐ろしさを感じてもらいたいところです。核兵器といえば、闇市場もあるとか…なんとも末恐ろしい世界になったもんだ。ソ連など、旧共産圏が解体してしまったのもその一因でしょう。核の闇市場を扱ったエスピオナージュものもいろいろ出てますが、なにをするかわからないテロリストの手に核兵器が渡ったらそれこそこの世の終わりでしょう。

 世界宗教者平和会議では世界の諸宗教の代表が「平和とすべての命を守るために」いま宗教者になにができるのか、ということを命題としてきのうから全体会議がはじまり、ハタミ前大統領も「すべての宗教は寛容性や倫理を共有している。文明間の対話で憎しみを愛に変えていこう」とのスピーチをしたとのことですが、申し訳ないけれど既存の組織宗教にそんな力はないでしょう。逆に民族間の対立をあおっている。いまのレバノン「戦争」を見ても、両当事者ともどう考えても宗教をダシにして体よく利用し、一般市民を扇動しているとしか思えない。religion が、本来の語源どおり、「人と人をふたたび結びつける」使命をまっとうできるようになればよいがなと思わずにはいられません。

 ちょうどおなじとき、東京外大の学生劇団が昨年のインドにひきつづき、来月パキスタンでも「はだしのゲン」を公演するという一報も読みました…。昨年、東京外大のおなじ舞台はインドで反響を呼び、インド公演直後にたまたま来日したパキスタン人ジャーナリストが鑑賞していたく感激したことがきっかけになったそうです。「この劇は核放棄を望まない人々の心をも変えることができる」とこのジャーナリストみずからパキスタン公演を熱望して実現したとのこと。こちらはすばらしいことです。ぜひ成功させてほしいと思う。

 かつてジョーゼフ・キャンベルは人生において「宗教と芸術」がおすすめだと発言されていたけれど、もしおんなじことを訊かれたら、自分なら迷わず「芸術のほうがおすすめ」とこたえる。以前ノーベル賞作家の大江健三郎氏もおんなじこと言ってましたが、「芸術の力」は大きいと信じています。芸術には表面的な憎しみやわだかまりを解き、人が本来持っている良心を覚醒させる力がある。

 話変わってロシアのエルミタージュ美術館で古美術品221点が大量盗難にあった事件。先月末に摘発されたもので、じつは内部犯行だった…というお粗末な顛末の記事を最近目にしました。旧ソ連時代、文化遺産はそれこそ国家の威信をかけて手厚く保護され、それを管理する美術館にもふんだんに予算が割り当てられてきたが旧ソ連崩壊後、文化遺産を管理する美術館はどこも財政難に直面。切れるところから切る、ということで職員の賃金も低く抑えられた結果、モラル低下を招いて各地で内部犯行による盗難事件が続発している、という…。

 でもこれって他人事ではありません。いつだったか遺物発見を「捏造」したトンデモない輩がいたり、高松塚古墳壁画の修復作業中誤って壁画を損傷した事実をつい最近までひた隠していた文化庁。ロシアの事件は政府が経済効率つまり金もうけ最優先、美術館・博物館の現状には無関心で、学芸員のプロ意識も失われたことが背景にありますが、日本の現状も似たようなものでしょう…このまま文化・芸術軽視政策がつづけば、いずれこの手の事件が起きかねません。

 最後に九州大学名誉教授で日本外科学会名誉会長の井口潔医博が主催する「ヒトの教育の会」の記事を読んで、強い共感をおぼえたので紹介しておきます。最近、というよりかなり昔から乳幼児の英才教育についての関心は高いのですが、乳幼児期は知識より感性こそ大切、というもの。井口先生は各地で講演会を開き、「3歳ごろまでは英才教育の時期ではない。知識を得るのは十代からでいい」、「才能や感性は生まれついてあるもの。子どもそれぞれの能力を呼びさましてほしい」と主張、感性と知性をバランスよく見につけることこそヒトが「人間」になるうえで大切なのに、経済最優先の中で知性のみ重視されていると批判しています。

 まったくおっしゃるとおり。そもそもこの会を発足させたのも、「子殺し・親殺しなど、生物学的に見ておかしなことが人間に多発している」ことに危機感を持ち、医学者から見て、「ヒトを人間へと育てる生物学の視点がいまの教育には欠けている」と感じたことがきっかけだったそうです(リンク先は、脳科学者らの知見をもとに心の成長過程を整理したページ)。

 それによると、3歳ごろまでに脳細胞間をつなぐ神経細胞(ニューロン)の回路が8割できあがり、10歳ごろまでに大脳周縁系で感性が目覚める。知性に対応する前頭連合野は10歳を過ぎてから活発に機能する――こうした脳の成長に応じた教育が必要だと井口先生は説いています。

 自分も似たような事例を見たことがあります。黄金崎で写真を撮っていたら、まだ小学校低学年になるかならないかくらいの男の子と母親らしい女性が遊歩道から岬の展望広場へ上がってきました…ところがこのお母さん、「夕陽がきれいだね」とか「花が咲いているよ」とか話しかけるかわりに、「5足す5は?」とか、引き算とか、そんなことばかり幼い男の子に訊くのです…人さまのことながら正直暗澹とした気分になってしまった。幼い子どもはそんなことより、親の無条件の愛情や、美しいものや驚き(sense of wonder)のほうがはるかに重大な関心事なのに…。昨今、まだ十代そこそこの子どもが親を殺したり自宅に放火したりというニュースを見るにつけ、きっとこの子たちは幼少期にもっとも大切なことを学ぶ機会を失ったまま成長したんだなと感じる。

 でもこれはたんに教育にとどまらず、いまの資本主義社会全体を見直さなくてはいけない大きな問題に感じます。そしてこれは温暖化など、地球環境悪化ともリンクしている。なんといってもこの100年、自然環境をここまで破壊してきたのはほかならぬわれわれヒトなのだから、これはきわめて重大なことだと思う。
posted by Curragh at 10:10| Comment(0) | TrackBack(1) | 最近のニュースから
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