それにも増してびっくりだったのは、若かりしパパ・ハイドンが、当時流行っていた「自動演奏楽器」のための作品を残していること。お題の「笛時計」というのは、モーツァルトの「幻想曲 ヘ短調 K. 608 」、「小ジーグ K. 574 」なんかの作品がそうなんですが、ようするにからくり仕掛けの自動演奏オルガン。オルゴールの元祖みたいな楽器で、当時は金持ちの家とかにけっこうあったそうなんです。で、当時金持ちならぬ金欠だったモーツァルト氏、この「自動楽器」のための作品を書いてくれと頼まれて、しぶしぶ(?)引き受けた、ということは前にも書きました。ふぅ〜ん、ハイドン先生も書いていたのかあ。小遣い稼ぎ( ?? )にはちょうどよかったかもね( おなじく金欠症の人 )。かかったのは、「ヴィヴァーチェ ハ長調 Hob. 19−13( リンク先ページにはつぎの曲も収録されてます ) 」と「メヌエット ハ長調 Hob. 19−14 」。おそらく2フィートフルート管であろう、口笛みたいな愛らしい音色がころころ転がっていくような作品でした。オルガンつながりでは、コープマンの弾き振りによる音源もかかってました(「オルガン協奏曲 ハ長調 Hob. 18−1」)。「小ミサ Hob. 22−1 」という小品もかかりましたが、作曲したのは 17 歳! のときだそうです。メンデルスゾーンなんか中坊のころに( 失礼 )すでに弦楽合奏のための一連の作品を書いてるし、バッハだってパッヘルベルとかベームとか筆写したりコラール前奏曲を書いてるし、驚くほどのことではないのでしょうけれども … って念のためいま調べたら、この小ミサ、すでに聴いていたという … 。
さらに、バッハもそうだったけれども、ハイドンもまた、当時発明されていたヘンテコな楽器のためにも作品を書いていた ――「2つのリラ・オルガニザータのための協奏曲 ト長調 Hob. 7h−3 」が、それ。こちらは 1786 年ごろ、ときのナポリ王フェルディナンド4世の依頼で作曲したとか。「リラ・オルガニザータ Lira organizzata 」というのは、磯山先生によると、「鍵盤で弾くハーディ・ガーディ」だそうで … なんと珍妙な楽器 !!! と門外漢は思ってしまふのでした … で、期待して音源を聴いてみたら、「フルート2本で代用」した音源でした orz → 関連ブログ記事。
話が前後するけれど、「サルヴェ・レジーナ」の収録された音源には「ミサ 『スント・ボナ・ミクスタ・マリス』」という作品も入っていて、これは 1983 年、北アイルランドの田舎家の屋根裏部屋(!)から、『フィネガンズ・ウェイク』に出てくる ALP の手紙をゴミ溜めの山から掘り出す雌鶏よろしく、サルヴェージされたというからまたびっくり。なんでまたそんなところに … ????
案内役の磯山先生のブログ記事をのぞいてみたら、
… しかしハイドンの初期は資料不足のため研究がまだ進んでおらず、真偽不明、年代不明の作品がたくさんあるばかりか、ジャンルも多岐にわたっている。作品表を調べるだけでも四苦八苦、という状態になりました。でも、やってよかったと思っています。なぜなら、その質の高さは並大抵のものではなく、平素あまり親しんでいなかったことを反省させられたからです。4日間を費やしても、ご紹介できたのは氷山のほんの一角でした。
とあり、楽曲選定にはかなり苦労されたようです。ハイドン、とくると、いつだったか弟ミヒャエルの宗教声楽作品を聴いたことがあったような … たしか「名曲アルバム」だったような気がするけど。