2006年09月01日

Von Voyage!

 船舶好きな人あるいは西伊豆によく来る方には有名な船、「スカンジナビア(もともとの船名は「北極星」号 Stella Polaris、5,105総トン)」が、きのう8月31日の正午、36年間係留されていた沼津市・西浦木負(にしうらきしょう)から、建造された母国へとしずかに曳航されて姿を消してゆきました(この船が西浦海岸へやってくることになった経緯の詳細はこちらへ)。

 自分もいちおうここの住人なので、何度もこの船を間近で見てきたし、2,3度乗船したりと思い出もあります。でもなんといっても、海に浮かぶホテル「スカンジナビア」として営業をつづけてきた36年、この船を見守ってきた地元西浦の人たちにはことばにならないほどの寂しさでいっぱいであろうことは想像に難くなく、とくに「スカンジナビア」を見下ろす小高い丘の岬の上に建つ長井崎中学校の在校生・卒業生にとってはあまりに身近で「そこにあって当然」の存在だったこの船が自分たちの目の前から消え去って行くのはどんなだろうと察します。昨年3月の営業終了後、所有会社の伊豆箱根鉄道が船の売却先を探しましたが交渉は難航、その間船はなんと一年以上も「放置」。第一級の海事文化財でもあるこの船がスクラップにされてしまうのでは、と危惧した地元有志が保存運動を起こして署名活動も展開してきました。また風景写真屋から見ますと富士に淡島、うねうねとみかん畑のつづくリアス式海岸の入江にこの「白い貴婦人」が佇む、という風景はまさしく日本一の絶景で、西浦地区にとってこの船は文字通りランドマークでした。

 でもこの船で長年、文字通り必死の思いで働いてきた人たちが船の解体などとうてい許すはずもなく、莫大な維持費のかかる「お荷物」的存在だったとはいえ、船主の伊豆箱根鉄道も真摯に売却先を探していたことと思います。だからこそ母国スウェーデン企業への売却話がまとまり、この船にとってこれ以上ないくらい幸せな「第二の航海」へ船出することができたのだと信じています。

 その日の夕方、「スカンジナビア」が36年間係留されてきた西浦木負の入江からタグボートに曳かれて離岸するようすを地元TVニュースで見ていました。これから10日かけて中国・上海まで曳航後、修繕されたのち母国へと帰り、そこでまた海上レストランとして使われるみたいです。

 一部には、「建造後79年も経過して老朽化した船がはたして地球の裏側までの長い曳航を耐えられるのか」と今回の決定を疑問視する声も聞かれますが、わたしに言わせれば、いつ大地震がきてもおかしくない海岸にこのままつないでおくことのほうが「罪」だと思っていたので、老体には少々こたえるでしょうけれども、どうかがんばって乗り切って、ぶじに故国へ到着するよう願ってやみません。しょせんここにいたってロクなことはないでしょう(安政東海地震のとき、典型的リアス式海岸の西浦・内浦地区には10m以上の津波が押し寄せた)。タグポートに曳かれてしずかに岸を離れていく姿を見るとこみ上げてくるものはたしかにあるけれど、「スカンジナビア」にとっては地震が来る前にここを離れることができたわけで、よかったんだな(奇しくもおなじ日の夕方に東京湾北部でやや強い地震があったし)。曳航されてゆく「スカンジナビア」の姿はその後黄金崎(こがねざき)とかからも見えたんだろうか。

 船、とくに帆船好きとしては、↑で紹介したサイト管理人さんとまったく同意見。これでよかったんです。

 たくさんの思い出をありがとう、そしてよき「第三の人生」を
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