2006年09月04日

シュヴァイツァー博士の命日に

 9月4日はシュヴァイツァー博士が90歳で大往生した日(1965年)で、「大和雪原」名付け親でもある白瀬矗が亡くなった日(1946年)でもあるけれど、今日もまたスカンジナビア関係のことから。

 夕方、地元ニュースを見ていたらスカンジナビア沈没の続報をやってました。電話取材に応じた海洋ジャーナリストの方の話では、当時の客船は薄い鋼板をリベット留めで何重にも重ねて造られ、もともと12mmの厚さだった船体の鋼板が一部では3mmほどにも薄くなり、曳航時の振動で鋼板どうしのすきまから大量の海水が入って浸水したのではないか、と指摘していました。昨年、「保存する会」メンバー有志が船体を調べたところ、やはり喫水線以下の錆による腐食がそうとう進んでいたとのこと。ところが曳航許可を取るために船体を検査した神戸の検定機関によると、「問題はなかった」としてあっさり許可を出したらしい。伊豆箱根側も許可がおりたということで法的手続きには問題なしと判断して九州の曳航会社に依頼した…という。

 法的には問題なし…といってもいくらなんでも建造後80年近く経過している老朽客船を、一度も上架して検査なり修理なりしないで、36年間、海水に浸ったままでいきなり引っぱる、というのはやっぱりおかしい。沈没事故ではっきりわかったことは、伊豆箱根の上層部とこの船で長年働いてきた現場の人たちとは船にたいする接し方がまるでちがっていた、ということ。会社の上層部は船を「さっさと処分する」ということしか頭になかったらしい。

 今回の悲報、当然のことながら母国スウェーデンでも報道されているみたいです(読めない…)。とはいえ夕方のニュースでは、あたらしい船主であるスウェーデンの不動産会社(!)が船を引き揚げる方向で検討に入った、とも伝えていて、いまのところはこちらに望みを託すしかないようです。

 いずれにせよいまの大半の日本人にとって最大の関心事はお金に関することのみ、このような古い時代の遺産や文化的に価値あるものをいかに残すかについては無関心な場合がほとんど。まことに遺憾ながら、古いものを大切に保存するという発想が染みついているヨーロッパ諸国の人たちとは雲泥の差。前船主の伊豆箱根鉄道にしても、バブル全盛期までこの船で年間10億円ほど稼いでいたくせして、いざ不景気になり――そして自分たちのグループ企業オーナーが引き起こした一連の事件によって――もはやこの船では稼げないとなるとさっさとお役御免として見切りをつけてしまう。この船が世界の海事史上に残る、歴史的文化財であるのにもかかわらずこのあまりに冷淡な態度。けっきょく「一私企業の一所有物、煮ようが焼こうがこちらの勝手」くらいの認識しかない。スウェーデンの人には申し訳ないけれど、これがいまの日本の現実なのです。

 …「生命への畏敬」をモットーとしたシュヴァイツァー博士はこんなことも言ったそうです。「未来を見る目を失い、現実に先んずるすべを忘れた人間。 そのゆきつく先は、自然の破壊だ」。いまの日本人にもっとも足りない部分かな…。

posted by Curragh at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースから
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