2008年03月23日

「フーガの技法」がヒットチャート1位!?

 今日はイースターサンデー。英国など欧米諸国では、たいてい聖金曜日から明日の月曜日まで4連休になります(聖金曜日はふだんどおり営業、という会社もある)。メールのやりとりをしている英国の方の話では、今年のイースター、かの地では異常なほど寒くて、なんと雪(!)まで降ったそうです。今年の主の復活を祝うミサは大魚の上のブレンダン院長にまかせておくとして、そんなイースターの日、見つけたのがこちらの記事。現代音楽を得意とする仏人ピアニスト、ピエール-ロラン・エマール氏。このほど(3月11日)、米国にてバッハの「フーガの技法 BWV.1080」のアルバムをリリースしたそうなんですが(日本国内盤はもっと早く、今年の1月)、リリースされるや、なんと「ビルボード」誌のクラシック売り上げチャートのトップに躍り出て、またiTunes StoreでもU2とならんでトップページに大々的に紹介されたというから、こちとら口あんぐりです。こんなとっつきにくい作品のCDを、こぞって買い求めるとは、以前、「グレゴリアンチャント」がバカ売れしたときのことを思い出してしまいました。

 で、そんなエマール氏の演奏会が、「洗足木曜日」の夜、カーネギーホールで開かれまして、詰めかけた聴衆――書き方からして批評子も? ――はみな同氏の名演に圧倒されたもようです。

 「フーガの技法」は文字どおり難曲ぞろいで、各声部をそれぞれ独立して受け持つ合奏形態ならばともかく、これをひとりの奏者が両手で弾く、となるともうたいへんです(ちなみにDie Kunst der Fuga[sic]というタイトルはバッハの手になる自筆譜[BB, Mus.ms.autogr.Bach P 200]に書かれたオリジナルだが、じっさいに書いたのは娘婿のアルトニコルだということが筆跡鑑定で判明している)。

Bach notated the individual voices of the fugues on separate staffs, leaving no indication of the instrument (or instruments)for which he intended them. For a pianist, projecting the awkwardly intricate voices of the fugues with clarity requires a subtle kind of virtuosity.

最初の数曲だけでもじっさいに音を出してみれば実感されると思いますが、4つの声部を「明瞭に」聴こえるように弾くのはほんとうに至難の技、真に高度な技巧が要求される作品です。でもひとたび名手にかかれば、たとえばグールドの演奏を聴けば、この作品が永らく言われていた「抽象の極み」のような音楽なんかじゃなくて、じつに生き生きとした躍動感に満ちあふれる作品であることに驚かれるでしょう。ついでながら下線部は、各パートがそれぞれ独立して書かれた、いわゆるオープンスコア(総譜)の書法を指しています(最後の「未完のフーガ」だけはなぜか二段の「鍵盤譜」で書かれていて、その理由についてはいまだ研究者のあいだで意見が分かれている。ようするにわからないのです)。リサイタル後半はバッハ同様、複雑でポリフォニックな作曲技法を追求したシェーンベルクとベートーヴェンの2作品。アンコールでもシンメトリックに「フーガの技法」から一曲(ただし、'Contrapunctus XII'というのは、たぶん初版譜の「2声の拡大と縮小のカノンの初期稿(a)」のことだろうと思う。'Bach’s homage to the spare polyphonic writing of Renaissance masters.'と書かれてあることから察して)。記事中のmp3サンプル(出だしの「基本主題による4声単純フーガ[初版譜表記 Contrapunctus1]」)を試聴してみますと、きょくたんに遅かったグールドと正反対、かなり速めのテンポで、ピアノと言うよりむしろチェンバロのような弾き方だなあ、という印象を受けました。参考までに、すでにこのエミール氏のアルバムを聴かれた方のblog記事を紹介しておきます。

 イースターついでにこちらの記事も。スイスでイースターの日だけに供される郷土料理みたいなタルト。なんだかおいしそうです(笑)。かつて四旬節期間はいっさいの肉、卵でさえも口にしなかったキリスト教徒の家庭では、イースターのごちそうにはいまよりもはるかに格別で、切実な思いがこめられていたはずです。また料理は家庭のマンマが手作り、というイメージの強いイタリアでも、イースター用料理の一部(ピッツァ・アル・フォルマッジョとか[→現物はこういうものらしい])はイースターマンデーのピクニック用で、家庭では作らずにパン屋で買うものらしいです。

 …静岡や東京で、ソメイヨシノの開花宣言が出ました。西伊豆の海岸線沿いも、きのう見たかぎりでは早咲きのオオシマザクラなどはすでに咲いていましたが、ソメイヨシノはこれからが本番。昨年のいまごろはあちこちで異変が起きていたけれども、今年はきれいに満開になるといいな。

posted by Curragh at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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