先週の「バロックの森」はオールバッハ。で、個人的にもっとも興味を惹いたのが一連の「チェンバロ協奏曲」シリーズでした。
バッハがライプツィッヒ市聖トーマス教会カントルだったとき、音楽好き学生を集めて結成した「コレギウム・ムジクム」を率いて、当時流行っていたカフェで「青空コンサート」をたびたび開いたのですが、そのときに演奏したと伝えられるのが、手持ちの曲を「管弦楽とチェンバロのための協奏曲」として編曲した、一連の「チェンバロ協奏曲」シリーズ。チェンバロを弾いたのはもちろんバッハ。いわゆる「弾き振り」で指揮したこのカフェコンサート、けっこう評判がよくて大盛況だったと言います。自分はこのうちトン・コープマン盤をもっていて、ときおり聴いて楽しんでいますが、最近、バッハ研究が進むにつれて、これら一連の「チェンバロ協奏曲」の「オリジナル」を復元する試みがなされています…先週もその試みのうちいくつか紹介されていて、なかには知っている曲もあったけれども、はじめて耳にする「原曲」もあってとてもおもしろかった。もっとも驚いたのはBWV.1052の復元版でして、最近の研究によるとこれの「原曲」がなんとオルガン協奏曲?! オルガン協奏曲…というとすぐライヴァル(?)のヘンデルの一連の作品がすぐ思い出されますが、バッハも作曲していたんですね…。もっともバッハはヴィヴァルディの合奏協奏曲集「調和の霊感」からいくつかオルガン独奏版の協奏曲を編んでいるので、それほど意外なことではないのかもしれませんが、こっちもすこぶる楽しい曲に仕上がってます…この復元版でオルガンを弾いているのはフランスの名手アンドレ・イゾワール。すぐ購買意欲を掻き立てられたのですが、あいにくAmazonでは扱っていないらしい。とにかくひじょうに新鮮な演奏でした。
こういった「復元版」の試みはあくまで一研究成果にもとづくもので、異論も出たりしていますが、こちらのサイトではそんな試みの一端をわかりやすく紹介しています。
…最終日にオンエアされたのは「BWV.1060にもとづく復元版」として「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲」でしたが…その演奏団体がこれまたカフェ・ツィマーマン(笑)。なにもそこまでしなくても…でも演奏者は大まじめに取り組んでいるのでしょうけれども。
これら「原曲」と「チェンバロ協奏曲版」とを聴きくらべてみると、バッハという作曲家がいかに多種多様な楽器に精通していたのかがわかります…たんなる「使いまわしの」編曲ではけっしてありません…もともとヴァイオリン協奏曲だった作品も、じつに自然にチェンバロ用の協奏曲に仕上がっていて、どちらも味わい深い。独奏楽器の可能性を最大限に引き出しているという点についてはいずれも遜色なし。このへんがバッハのバッハたるゆえんでしょうか。手持ちのコープマン版ライナーに、コープマン自身が、「音楽学は概してこれら一連の『編曲もの』であるチェンバロ協奏曲を演奏家ほどには高く評価していない」ということを書いてますが、まったくそのとおり。もっと演奏されてよいでしょう。
追記です。
コーヒーの日、日本酒の日、浄化槽の日(?)…これぜんぶ10月1日が記念日…らしい。いま、「気まクラ」でダブル鈴木さんのおしゃべりではじめて知りました…で、音楽ではそうそう、「SONYが音楽CDとプレーヤを発売開始した日」でした…音楽CDも登場してもう四半世紀近くになるのか…(ついでに当時のSONYはmade in Japanの代名詞的存在でしたが、昨今のリチウムイオンバッテリ発火騒動といい、信用を落とすような不祥事つづき…)そういえばヴァルヒャのバッハ・オルガン作品全集の初CD化が1988年ごろだったかな。おなじころアレッドくんのアルバムがつぎつぎとCD化されて日本Victorから国内盤が出て評判を呼んだのもこのころ…いまや音楽CDのみならずDVDまで個人がかんたんにコピーできてしまう時代に。音楽CD開発当時、24年後にこんなことになっていようとはまったくの想定外だったのではないでしょうか。
音楽CD(CD-DA, Compact Disc Digital Audio)の演奏時間約80分(開発当初は74分)について、「ベートーヴェンの『第九』が入る長さ」というのが定説になってますが…ほんとのところはどうなんだろ。
2006年10月01日
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