2008年05月05日

『赤毛のアン』も100周年

 「3か月トピック英会話」で放映中の原書で読む『赤毛のアン』。連休真っ只中にいままでの放送分をまとめて放映していたので、さっそく見てみました(こういうときでもないと、じっくり見られないし)。

 『星の王子さま』は内藤訳で読んでいたけれど、恥ずかしながらこちらのほうはいまだにきちんと読んだことがない(ようするに知らない)ので、いい機会だと思って見てみるとこれがけっこうおもしろい。TV番組なので、内容はどちらか言うと「プリンスエドワード島紀行」みたいな感じではありますが、それでも島の自然の美しさには心打たれるものがある。以前放映された『アヴォンリーへの道』とかも思い出しました。ちょうどときをおなじくして、翻訳者で番組講師をつとめる松本侑子さんが、地元紙に『赤毛のアン』関連のエッセイを寄稿されてました。

 見ていて思ったのは、『赤毛のアン』も『星の王子さま』も、けっして色あせることのないすばらしい「読み物」だなあ、ということ。主人公がひじょうに魅力的に、生き生きと描かれていて、なんとなく見はじめたとはいえ、すぐにお話の世界に引き込まれた。やはり「古典」というのは、なるべくしてなるんだ、とあらためて感じたしだい(言い出したらきかない頑固なところはどことなく「王子さま」と似ているかな)。

 文学好きのアンの科白にはそこここにシェイクスピアや聖書の引用が出てきます。番組でも言っていたけれども、はじめてグリーン・ゲイブルズにやってきたとき、自分をコーディリアと呼んでくださいと頼むところなんか、いかにもという感じ。ほかにもアーサー王伝説とかも出てくるそうですが、けっきょくすぐれた児童文学というのは大人の読者の鑑賞にも耐えられる作品にほかならない。逆に言うと、すぐれた児童文学を書けるのはよっぽどの名手でなければならない。どうりでマーク・トウェインも絶賛したわけだ(「古典は酒だが、わたしの本は水だ[つまりみんなが読む]」という名文句も思い出した)。

 今回、松本先生の紹介でいろいろとアンの「名(迷?)科白」の数々にお目にかかったけれども、語学的に笑えたのはダイアナと「親友になる誓い」をたてる場面。「誓う」という意味でswearと言ったのに、ダイアナのほうはもうひとつの悪い意味しか知らず、「そんなことできないわ」と返すところ。

"Will you swear to be my friend forever and ever?" demanded Anne eagerly.

Diana looked shocked.

"Why it's dreadfully wicked to swear," she said rebukingly.

"Oh no, not my kind of swearing. There are two kinds, you know."

"I never heard of but one kind," said Diana doubtfully.

"There really is another. Oh, it isn't wicked at all. It just means vowing and promising solemnly."

"Well, I don't mind doing that," agreed Diana, relieved. "How do you do it?"

こういうところでアンがことばをよく知っている少女だということがわかる。またアンがギルバートを石板(!)でぶんなぐる有名な場面のあと、ギルバートが先生に「自分が悪い」と打ち明けるところで'Gilbert it was who spoke up stoutly.'とある。強調構文なのですが、冒頭部がさらにひっくりかえって、さきに先生に詫びを入れたのは「ギルバートのほうだ」ということが強調されている(ついでに"You mean, hateful boy!" she exclaimed passionately. の'mean'は、動詞のmeanではありません、念のため。本来の形は"You [are] mean..."。アンのたたみかけるような科白ではよくbe動詞が省かれているので注意)。

 いまも昔も、「これだけできればペラペラ」みたいな商売がありますが、あるていど基礎ができたら、「もっと深く理解する」訓練をしないといつまでたっても相手のことばの背後に隠れた「気持ち」が理解できないし、また英文もきちんと読めない、と思います。外国語なので、このへんの理解の落差はあるていどしかたないことではありますが、たとえば孤児院から引き取られたアンが自分の生い立ちをリンド夫人にとつとつと語る場面、

"Were those women--Mrs. Thomas and Mrs. Hammond--good to you?" asked Marilla, looking at Anne out of the corner of her eye.

"O-o-o-h," faltered Anne. Her sensitive little face suddenly flushed scarlet and embarrassment sat on her brow. "Oh, they meant to be--I know they meant to be just as good and kind as possible. And when people mean to be good to you, you don't mind very much when they're not quite--always. They had a good deal to worry them, you know. It's very trying to have a drunken husband, you see; and it must be very trying to have twins three times in succession, don't you think? But I feel sure they meant to be good to me."

この科白からはアンの意地らしさというか、アンの気遣いが伝わってきます。

 …そう言えばもうかなり前のことになるけれど、地元紙に掲載されたある若者の話も思い出した。その人は『赤毛のアン』を読んでいたく感動し、肉体労働のアルバイトをしてお金をためて、ついに憧れの地、プリンスエドワード島へ行って、島の美しい自然を写真におさめた。帰国後、ふたたび島を訪問しようとしたが、道路工事の現場で交通事故にあい、志なかばで亡くなってしまった。遺作展が開かれたそうですが、番組を見終わったあとで、この青年の気持ちというか思いの深さというものがようやく理解できたような気がする。この物語にはそれだけの力があるということです。

 …それでまた思い出したのが、NHKラジオ第2放送でやってた「原作で読む世界文学」という番組。20年ほど前になるかな、自分はこの番組を通じてはじめて『チップス先生さようなら』の原書を読みつつ、英語の勉強をしたのは。すっかり黄ばんだペーパーバックがいまも本棚の隅っこに収まっているけれど、ひさしぶりに読んでみたくなりました(とはいえいまは大急ぎで図書館から借りている音楽本を読まなければ…orzこっちはこっちで興味深い本なんですけれどもね)。

*…Anne of Green Gablesの引用はすべて「グーテンベルク・プロジェクト」サイト内の該当ページから。

posted by Curragh at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 語学関連
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/14684958
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック