2008年06月16日

アイルランドがリスボン条約を否決

 EUの改正条約として調印されたリスボン条約。先週、アイルランドでその批准の是非を問う国民投票がおこなわれ、開票の結果、条約は否決(反対53.4%、賛成46.6%、投票率53.1%、関連記事その1その2)。条約発効には27加盟国すべての承認が必要なため、事実上リスボン条約は暗礁に乗り上げたかっこうになりました。アイルランドのみ国民投票にかけたのは、アイルランド国内の規定のため。カウエン首相はリスボン条約推進派だっただけに、国民から突きつけられた結果にショックを受けているらしい。

 「拡大EU」と言うと聞こえはいいのですが、加盟国――アイルランドはEC時代からの古参加盟国――の一般市民からすると、あらゆる権限がブリュッセルのエリート層のみに集中し、民主主義そのものが軽視されかねない、自分たちのあずかり知らぬところでつぎつぎとことが決定されるのはまずい、という「不信感」もまた強いようです。アイルランドは自主自立志向の強い国民性、というイメージがあるので、今回は批准しないというボールを投げた、なので批准してほしければこんどはブリュッセル側からボールを投げ返すべきだ、というメッセージにも思えた。その昔、聖コルンバヌスが教皇ボニファティウス4世に宛てて「対等な立場で」物申した私信をしたためたのとおなじような感情なのかもしれない。

 アイルランドのあるニュースサイト内記事には、キャメロン英国保守党首の発言として、こんなことが書いてあります。

“The elites in Brussels have got to listen to people in Europe who do not want endless powers being passed from nation states to Brussels. They do not want these endless constitutions and treaties.”

アイルランド国内のあるシンクタンク所長もこんなこと言っています。

“This is a resounding victory on behalf of ordinary people across Europe over an out-of-touch and arrogant political elite,”

 アイルランドはいま経済が好調だから、国民は自分たちの利益重視の結論を出したのだ、という評もあるようですが、それだけでもないでしょう。基本的に欧州の人は、自分たち国民の意見を無視する独裁に走ることをなによりも警戒している。いまの欧州はある意味最大の実験をしているとも言えますが、あるていど揺り戻しはしかたないところでしょう。とはいえ環境対策ではEUは世界を引っぱっている印象を持っているだけに、このへんの擦りあわせはたしかに難しい問題かもしれない。

 アイルランドは日本よりも早くIT化が進み、税制上の優遇措置と移民を労働力として受け入れ、「ケルトの虎」の異名をとるまでに経済発展してきましたが、最近ではいっときの勢いはなくなっている。一字ちがいのアイスランドもまたIT先進国で、長らく好景気に沸いていたけれど、こちらのTimes記事にもあるように金融不安が広がって、通貨クローナの価値まで下落している。EUも、加盟国が増えれば増えるほどまとまりがつかなくなりがち。木曜日からEU首脳会議が開かれて対策を講じることになるそうですが、EUはまさに正念場を迎えているということにはちがいない。

 …EUついでにもうひとつ。EUの世論調査機関ユーロバロメーターがまとめた統計によれば、一回当たりの酒量がもっとも多いのはアイルランドだったそうです。酒の種類は特定していないものの、「一回につき5杯以上」飲むという回答率はアイルランド人34%と、EU加盟国中最多だったとか。ついでフィンランド、英国とつづき、もっとも飲まない国民はブルガリア人で、5杯以上飲む人の割合は1%だったらしい。だからといって、アイルランド人がみな飲んべえでブルガリア人は健康的だ、というわけではないが…自分も夏になると、ギネスが飲みたくなる口なので(先日飲んでた人)…。

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