2015年12月13日

「ららら ♪ クラシック」⇒ BWV. 566

1). そういえば、この前見た「ららら ♪ クラシック」、なんとなんとうれしいことに、わが愛する楽器、「楽器の女王」、オルガン[ パイプオルガン ]特集ではないですか !!! これは見るしかない。

 で、その感想なんですが … のっけから登場した、かつて全国津々浦々の小学校にあったであろう、懐かしのリードオルガン( 足踏みオルガン )がひじょーに気になった … あれどこから調達してきたのかな? しかも「ドアノブ」型のストップまで 10 個もついているし … 「演奏台の両脇に並ぶドアノブみたいのは、いったいなに?」みたいなお題で紹介していたけれども、すでにその「ドアノブ」を備えたリードオルガンまで登場しているという … 。

 で、これまた久しぶりにお元気な姿を見られてやはりうれしかった、藝大オルガン科の廣野嗣雄名誉教授 ―― しかも「自作」したオルガン原理模型までひっさげて ―― も出演されていた。というか、廣野先生ってこんなにお茶目な人だったのか ?! 廣野先生といえば、だいぶ昔、NHK-FM にて「小フーガ BWV. 578 」の楽曲分析をある番組でされていたことなんかも思い出す[ もちろんご本人の実演つき、しかも使用楽器はいまや「使ってんの?」状態の NHKホールのカール・シュッケ社建造の大オルガンという、いまから考えるとかなり贅沢な企画だったなあ ]。

 本題にもどって … 今回、番組で紹介していたのは NHKホール … ではなくて、東京カテドラル聖マリア大聖堂関口教会のイタリア・マショーニ社建造のすばらしいオルガン。オルガン建造の監修者はロレンツォ・ギエルミ。番組の折々に挿入されていたクリップはたぶん以前、NHK-BS で放映されていた「パイプオルガン誕生」のものだろうと思う( 見たことある場面が出てきたから )。オルガンの起源はアレクサンドリアの「床屋」、クテシビオスの考案した「ヒュドラウリス[ 水力オルガン ]」だとか、足鍵盤がとくに北ドイツにおいて発展して大型化したとか、そのへんの説明はわりと正確( 当たり前 )。クリップに出てきた 16 世紀イタリア・ミラノの聖マウリツィオ教会の歴史的名器は、1段手鍵盤とおまけみたいな足鍵盤つきの楽器だったと思う。各時代、各地域におけるオルガン建造の歴史とか音楽様式によるストップ[ レジスター ]の変遷とか、あるいは「コーアトーン」と呼ばれる「教会ピッチ[ 現代ピッチより約半音高かった ]」なんかも興味深いのではありますが、これを書き出すととてもじゃないが記事を何本も、しかもただのディレッタントにすぎない輩が書くはめになりかねないので、省略( 笑 )。あと少し気になったのは、「8世紀、東ローマ[ ビザンツ帝国 ]皇帝がフランク王国のピピン王にオルガンを献上した」という有名な話、たしかにそうなんですけどそれを紹介するイラストがなぜか「水力オルガン」になっていた。このころにはすでに「ニューマチック」、つまりふいごで送風する現代とほぼおなじ機構の楽器になっていたはずなので( ただしストップ装置やスライダーチェストなどはまだない )、ここはちょっといただけない。当時のオルガンについては拙過去記事と、そこからリンクしているすばらしい解説ページをご参照ください。19 世紀の、とくにカヴァイエ−コル製作の一連の巨大楽器は、ひとことで言えば「ひとりオーケストラ」を実現するためのもの、と言ってよいと思う。当時は交響曲全盛時代、こういう時代背景があったからこそ存在しえたようなオルガンなんですな。ヴィドール、ヴィエルヌ、そしてサン−サーンスやセザール・フランクなんかは、みんなこの時代に活躍したオルガニストにして高名な作曲家ですね[ 追記:番組中でかかった3曲のほかに、BGM みたいにかかっていた楽曲、やっと思い出した。英国のアングリカン合唱ものが好きな人にとってはわりとおなじみの聖歌ですね ]。

2). 番組ではバッハ時代を代表する楽器としてハンブルクの有名なアルプ・シュニットガー建造の歴史的楽器も紹介されてましたが、↓ はそのシュニットガーオルガンによるバッハ「トッカータ ホ長調 BWV. 566 」を演奏した動画。「きらクラ!」の「メンバー紹介」の「番外編」をここでも書いたばかりですけど、さらについでに「メンバー紹介」をしたくなったしだい。

 BWV. 566 は、いまでは「前奏曲とフーガ ホ長調」と表記されるのがふつうで、「旧バッハ全集の取っている『トッカータ』という名称には資料的根拠はない[『バッハ事典』p. 307 ]」… とのことですが、ワタシの手許の音友社発行のポケットスコアにはその「資料的根拠」のない「トッカータ」と表記されているものだから、ここでも強引に通そうかと思います( 苦笑 )。もっとも聴いてみればすぐピンとくると思いますけど、まるでブルーンスかブクステフーデを彷彿とさせるような典型的な北ドイツオルガン楽派の幻想様式で書かれていて、トッカータ[ 前奏曲 ]−フーガ−トッカータ−フーガという並列構成をとってます。作曲年代はバッハの「ブクステフーデ詣で」のあったアルンシュタット時代の 1706 年ころで、原曲はおそらく「ホ長調」で書かれていたらしいけれども、のちのヴァイマール時代に「ハ長調」に移調した別稿 BWV. 566a を作成したようです( 原曲の調性では演奏がひじょうにむずかしい、というのもある )。動画の演奏者はこの「ハ長調稿」にもとづいて演奏してます。超有名な「ニ短調トッカータ」のつぎのバッハ作品目録番号を与えられていながら、おそらくオルガン好きを自認する人もまるまる聴き通したことのある人はあんまりいないんじゃないかと思って、ついでに書き足しておきました。さらについでにこの作品、ヴァルヒャの「バッハ・オルガン全集」にはなぜか(?)入っていなかったりします( アラン版「全集」のほうはもちろん収録されてます )。すぐ前にも書いたヴィドールはこの作品の最後のフーガについて、「フーガで始まり、コラールとなり、協奏曲として終わる」と評しています。



posted by Curragh at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | バッハのオルガン作品
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