2016年06月05日

よい音楽と、そうでない音楽

 いまさっき視聴したこちらの番組。4月 16 日に開かれた「第 1832 回 N響定演」からで、前半は大好きなバッハのさまざまな仮面、じゃなくて、いろんな編曲ものの至れり尽くせりオンパレードみたいなプログラム( まったくの偶然ながら、1+8+3+2+= 14、BACH だ !! )、後半は「革新的」と指揮者スラットキンが評するプロコフィエフの「交響曲第5番 変ロ長調 作品 100 」。

 スラットキンはインタヴューで開口一番、「この世には二種類の音楽しかない。よい音楽と、そうでない音楽だ[ 'There is good music, and there's the other stuff.' のように言ってた ]」とおっしゃってまして、個人的にまったくそのとおり、というか、ふだん思っていることをまんま言ってくださったのがうれしかった。スラットキンさんはジャンル横断的になんでも聴くと言っていて、その際基準になるのがたしかな耳があるかどうかだ、とも。ワタシもこのブログで、好き嫌いの問題という言い方をよくしてきたけれども、行きつくところはとどのつまりそうなるとは思うが、好きか嫌いか以前に聴くに値する音楽なのかどうなのか、これが的確に判断できるということも大事だと思う。そういう能力ないし感覚を持ちあわせてないと、いつぞやの「 HIROSHIMA 」事件ではないけれど、音楽とまるで関係ないところで文句つけたりすることにもなる( いまは著作権とかうるさいからしかたないけど、バッハ時代はふつーに人さまの作品をせっせと筆写して好き勝手に編曲して演奏していた )。作曲者がだれかではなく、作品としてどうなのか、ここが大事だと考えます。

 と、前置きはさておいて、この日の定演は生中継で「らじる」でも楽しんでいたけど、TV はやっぱいいもんだ。最近、NHKホールのシュッケオルガンの出番がなにげに増えているような気がして(?)そちらもうれしい。でもスラットキンさんの指揮でこの日の公演のもようを見ているうちに、ああ、この定演だけは実演に接するべきだったかも、と思ったり。なんたって「教会カンタータ BWV. 26 」の出だしのシンフォニア、原曲の無伴奏パルティータ BWV. 1006 前奏曲と、さらに管弦楽編曲版と、なんと3回も !!! 楽しめてしまうという、なんともぜーたくなプログラムだったのだから。オルガン弾いていた美しい女性奏者はどなたなのか、クレジットもされてなかったのでわからなかったけれども、オケのメンバー同様、オルガン界にも若い人材がどんどん出てきているから、だんだんこういうことが増えてくるのだらう。

 もうひとつうれしかったことは、なんと !!! 若きスラットキンさんとN響との懐かしの初共演に、これまたなんともひさしぶりにお目にかかれたこと。1984 年 10 月 17 日、というから、32 年前! しかも演奏曲がヴェーベルン編曲による「リチェルカータ」。そうか、スラットキンさん指揮N響の初顔合わせはバッハだったんだ。で、自分は中学生のとき、「N響アワー」でこれを見ています。眺めているうちに涙目になってきてしまった。原曲は言わずと知れた「音楽の捧げもの」の「6声のリチェルカーレ」で、「大王の主題」が一音ずつ金管から木管、そして弦楽へと受け渡されていくというひじょうにおもしろい、色彩的な管弦楽語法が駆使されてます。ヴェーベルン好きな人は、まずもって聴くべきすぱらしい編曲ものだと思います。

 そして最後の締めが、またまたバッハ、それも「シャコンヌ( BWV.1004 の終曲 )」を、4人のチェロアンサンブルで !!!! こういう編曲は寡聞にして聴いたことがなかったから、なんか今宵はすごく得した気分だ。チェロは音域のとても広い楽器だから、なるほどこういう芸当もありというわけなんですね。

 冒頭のインタヴューにもどるけれども、スラットキンさんは子どものころ、身近なところにオルガンを持つ音楽ホールもなく、またユダヤ教徒の集会所のシナゴーグにもオルガンなんかなかったから、バッハ体験はもっぱら管弦楽編曲されたもの、オーマンディ、ストコフスキー、レスピーギといった人たちの編曲を通して聴いたのが最初だったと話してました。「それがわたしにとっての authentic なバッハだったのです」。でも、前にも書いたことの蒸し返しになるが、どんなに転がっても、どんなに姿かたちを変じても、バッハはバッハなんですねぇ。この日の定演のもようを聴き直してみて、あらためてバッハの音楽の持つ測り知れない奥深さ、果てしない広がり、そしてなによりもその生き生きとした生命力、エネルギーをバシバシ感じました。ありがたいことです。マエストロ・スラットキンに、心からの感謝を捧げます( ほぼおなじ内容のことがこちらのページにも掲載されてます )。

posted by Curragh at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/175577604
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック