2017年02月27日

ブルーナ氏 ⇒ Afrojack ⇒ 雅楽とミニマル音楽

1). 「うさぎのミッフィー」で世界的に著名なオランダのイラストレーターで絵本作家のディック・ブルーナ氏が今月 16 日に逝去された。享年 89 歳。ミッフィー、けっこう好きでしたので、ちょっとさびしいですね。奇しくも『帰ってきたヒトラー』をまんま地でゆくような方が超大国の舵取り役に就任したばかりというこのタイミング( 「すべてはタイミングだった」とメアリ・ヒギンズ・クラークの『子供たちはどこにいる』の一節をふと思い出してもいた )での訃報だっただけに、いろいろと去来することが多かったのもまた事実でした。

 26 日付地元紙にはブルーナ作品の翻訳者だった東京子ども図書館理事長の松岡享子先生による追悼文が掲載されてました。また松岡先生は TV ニュースでもコメントされていて、先生のお姿もはじめて拝見したのであった。松岡先生、とくると、個人的には『くまのパディントン』シリーズを思い出す。以前にもここに書いたけれども、'Please look after this bear thank you.' を「よろしくおたのみします」とさらっと名訳されているのをはじめて目にしたときの衝撃はけっこうなもんでした( それはまだ湾岸戦争以前のことだったから、思えばずいぶん古い話 )。

 ピアニストがモーツァルトを引き合いに出して、「ああいうシンプルな作品ほどゴマカシが効かないから、じつは演奏家にとっていちばん恐ろしい」みたいなことを話すのをときおり耳にしたりする。ブルーナさんの描く絵も、一見、だれでも描けそうでいて、そのじつすこしでも線と線との間隔やバランスが乱れるだけでてんで似て非なるものになったりする( 嘘だと思ったら試しにミッフィー、母国オランダでは「ナインチェ・プラウス[ Nijntje Pluis ]」を描いてみるといい )。それとまったくおんなじことがやはり追悼文にも引用されていて、ブルーナ氏がいかに天才的なデッサン力を持っていたかについて言及し、「それだからこそ、子どもたちは、あの単純な絵の中にあたたかみとリアリティーを感じとり、くりかえし、くりかえし同じ本にもどっていくのだろうと思います」。ブルーナ氏の描き方では、まずあの「正面性」が挙げられますね。写真家ルイス・ハインとおなじ技法。感情移入しやすくする工夫の結果、「どんなときでも読者の方を向いている」スタイルに行き着いたんだろうと思われます[ → 松屋銀座でブルーナさんのデザイン展が開催されるみたいですよ ]。

 そして音楽界からも訃報が。S.S.、ロシアの名指揮者、というより世界最高齢現役指揮者、と言ったほうがいいかもしれないが、あのスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏もつい先日、米国ミネアポリスにて帰らぬ人になってしまった。享年 93 歳。ただただ合掌、そして音楽の喜びを届けてくれたことに対する感謝をこの場を借りて捧げたいと思う。

2). きのうたまたま耳にしたNHKラジオ第1の「ちきゅうラジオ」で、おなじくオランダの DJ、アフロジャックさんのことが取り上げられていたので思わず耳をそばだてた。なんでもアフロジャックさんてすごく有名な DJ で、このほど病気の子どもたちのために慈善イベントを開催して、集まった寄付金にさらにポケットマネー( もちろん、半端な金額ではない )を上積みして病気と闘う子どもたちの基金に寄付したんだそうだ。もっとびっくりしたのはオランダの子どもたちにとって DJ というのはあこがれの職業でもあり、なんと学校教育現場でも DJ 講座のような特別授業みたいなことも行われているだとか。こちとらもう唖然とするほかなし。なんでも「世界 DJ トップ 10」みたいなランキングで、オランダ出身 DJ がなんと 5人も入っているというからさらにおどろき。そういえばだいぶ前ここでもすこし言及した少年歌手デーミスくんも、いまじゃその DJ ですし。なるほどねぇ、と感心したしだいです。

3). そういえばおなじ日放送の「きらクラ!」。まずは新年度以降の番組続投決定、よかったですね。でもって「オザケン」こと小沢健二さんって、なんと遠藤真理さんとお友だちだったんですね … で、さらにびっくりしたのが、小沢健二さんの紹介したデニス・ジョンソンという人の 'November' なる作品。曲が流れるなか、「これ、ある音楽がそのまま模倣されているですよ、なんだかわかりますか?」ときた。ふかわさんも真理平師匠も「?」だったみたいでしたが、このときこれを聴いてた門外漢は「なんかこれ、越天楽っぽいなぁ〜」なんてぼんやり思っていたら、なんと「こたえは、雅楽なんです」とおっしゃっていたのにはほんとにびっくりした。小沢さんによるとこのジョンソン氏、その後ぱたっと作曲の道からはずれ(!)、しばらく音信不通ののち NASA の有人火星探査計画( !!! )関連企画に参加して、現在は「5, 6 m 四方の家で」過ごしているという … ??? うーむ、なんだか 21 世紀版『方丈記』みたいなお話だ。ちなみにこの 'November' は、ミニマル音楽のはしりみたいな作品らしくて、「いまこの音源を知っている人はほとんどいないと思います」。

 で、ここからが小沢さんのすごいところ。「ピアノというまったく異なる西洋の楽器でこのように演奏されるからこそ、もとの雅楽の持っていたすばらしさが際立つ」みたいな趣旨のことを発言されていたんです。然り! 話では武満徹氏のことも引き合いに出されていたけれど、武満作品がいかに西洋音楽っぽく作りこまれていても、鳴り響いてくるのはやはり日本らしさと言うか、日本特有の音の響きであり、こうして「翻訳」されるからこそ、それを聴いた向こうの聴衆や批評家は感動する … そのような内容を話されてまして、まったくもってわが意を得たり、みたいな気分に浸ってしまった( とくに翻訳[ ここ重要 ]、という言い方を使ってくれたことに座布団 100 枚!)。とにかくいいお話が聞けてよかった。再放送希望( 笑 )

追記:先月末、地元のくせして一度も行ったことのなかった世界文化遺産、韮山反射炉を見に行ってきました。バスが見当たらず、めんどくさいので伊豆長岡駅からテクシーで行った( わりと近くてよかった )。反射炉周辺の道路もすっかり「観光仕様」に整備され、案内標識も充実しているから迷うことなく現地到着。「韮山反射炉ガイダンスセンター」で反射炉生みの親、江川英龍(号は坦庵)とその子息のこととか年表とか展示を食い入るように見つめているうちに、英龍の5男坊の江川英武がわずか 10 歳( !! )にして家督を継いだこととかいろいろ見ているうちに不意に泣けてきた( 最近涙腺弱いなあ )。ガイダンスセンターを出て反射炉本体を眺めていると、地元韮山高校の女子生徒さんがヴォランティアガイドを務めてまして、その堂に入った解説ぶりとかはたで眺めていた不肖ワタシはとてもとても心強い思いがした。

posted by Curragh at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | おくやみ
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