2021年12月25日

小さき者を想う日

 真夏に猛威を振るった COVID-19 デルタ変異株が秋に入って急に下火になり、思う存分手足を伸ばすこともできない、そんな息苦しささえ感じていたひとりとしては正直ホッとひと息つけた気がしていた。けれども、どうやらそれも終わりで、またぞろ実効再生産グラフは上向きになってきた。欧米しかり。そして遅れて日本でも。

 今回、個人的に思い知ったのは、このウイルスは水際作戦だけでは勝ち目はないということ。いくらルールを守らない人がいるからとはいえ(とはいえ、こちとらマジメに半径ウン km 以内しか移動していないし、伊豆半島の人間なのに同じ半島にある墓参りも行けてなくて嘆息しているというのに、海外から帰国して言いつけも守らず、フラフラ出歩いて市中感染の原因を作った人に対しては正直怒りを覚える。といってもオラは自粛警察ジャナイヨ、だれだってそう思うのではないかしら。自粛警察というのは、ようするに自分とこに火の粉が降りかかると烈火のごとくイキりだし、ふだんはノホホンと過ごしているような典型的マイホーム主義な人のこと)。いずれにせよ、年明けとともに日本国中に厭戦的雰囲気がいよいよ蔓延し、いわゆる専門家の意見や指示を守らず、「赤信号、みんなで渡れば ……」な手合が堰を切ったように急増しやしないかというのが、もっかいちばんの気がかり。

 この感染症の恐ろしいところは、英米で long COVID と呼ばれている、長期にわたる原因不明な後遺症というやっかいきわまりないオマケまでくっついていること。感染しても無症状な人がいる反面(若い芸能関係者にはこの手の人が多かった印象がある)、いつまでもしつこく苦しめられる罹患者もおおぜいいる。だからけっきょく、なんとしても COVID だけは罹患しないようにしないといけない。もっともそれはそれでいいとしても、そのように身構えたまま生活していれば弊害も出てくる。体を動かさなくなったせいで筋力が落ちた、あるいはもっと深刻な場合には「エコノミー症候群」になったり、脚のふくらはぎがパンパンになって静脈瘤(!)ができかかった、とか。もっとも影響が出やすいのは、なんといっても子どもですよね(もちろん高齢者もだが)。事態が長期化しているので、このへんのことも気を配らないといけなかったりで、たしかに厭戦ムードがはびこるのはあるていどしかたないことかとは思う。お気持ちはわかる。

 でもいちばん大切なのは、こういうときこそ、他者への想像力が必要だ、ということではないかと、人一倍 self-serving な人間のくせしてそう思ってしまう(偽善者なので)。前にも書いたが、感染症というのは自分が罹患して治ればそれでよし、という病気ではない。全地球を覆っているのは、未知のウイルスによる未知の感染症なんです。それでもいまはワクチンだって曲がりなりにもあるし、特効薬ではないにしても、承認待ちの飲み薬もある(あいにく mRNA ワクチンはブースター接種なるものを打つ必要があるけれども)。

 いまだ先の見えない COVID 禍ですが、パンデミックが始まった昨年春、英国の NPO の Nesta がこんな未来予測を出しています。「将来の予測なんてアテになるものか」という気もたしかにするけれども、やはりこの手のものがないといられないのもまた人間の性分なのかもしれない(Nesta は、英国国立科学技術芸術基金を母体とした NPO 法人。科学・技術・芸術における個人および団体による先駆的プロジェクトや、人材育成を支えるイノベーション支援を行っている)。

 たとえば「経済」に関しては、こんな「青写真(言い方が古い?)」を描いています。
新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)が引き起こした不況は、2008年の金融危機よりも深刻な事態を招くだろう。しかもそれは、これまでに経験したような「通例の」不況ではない。多くの国で、考えうるかぎり最悪な不況となり、大量解雇も起こり得る。コロナ以前ではラジカルだと考えられていた財政出動や金融政策がもはや政治や国民的な議論の場で当たり前のように取り沙汰されるようになるだろう。コロナ危機を乗り切った企業も、それまで重視していた事業や商習慣の見直しに着手することになるだろう。それはサプライチェーンの抜本的再編だったり、効率一辺倒から事業の強靭性(レジリエンス)への転換だったりする。
この1年で見ても、たとえば急激な「脱炭素化社会」へ舵を切ったかに見える欧州諸国の動きなんかが当てはまりそうな気がします。もっとも「二酸化炭素取引」というカラクリもあったりで、どこまで本気なのかはよくわかりませんが。それでもひとつ言えるのは、島国日本の企業さんたちが手をこまねいている時間はあまり残されてないってことです。ヘタすると 19 世紀末の欧州列強の再来にもなりかねない気がする。興味ある方は一読してみるとよいでしょう。

 一連の予測項目はあくまで英国国内のことなので、これらがいちいち日本の事情に当てはまるわけでもない。しかし参考にはなると思う。というか、向こうの人ってホント筋金入りのマスク嫌い、ということがこの1年半のあいだでよくわかった気がする。人種差別の件も含めて。

 「一連の予測は推測の域を出ない」と断ってはいるが、「新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは、世界のありようを根底から恒久的に変えた。向こう数か月、この新型感染症の蔓延を制御できる国があったとしても、政治、経済、社会、テクノロジー、法律、環境の各方面に与えた影響は甚大であり、それは今後数十年にわたって続くだろう」という見立ては、おそらく間違ってないでしょう。

 というわけで、なんか暗い話になってしまったが、いみじくもローマカトリックのリーダーがクリスマスイヴのメッセージでこんなことを言ってましたので最後に引用して終わりますね(以下、さる全国紙記事の引用)。
「不平を並べるのはやめよう。(イエスは)われわれに人生の小さなことを見直し、大事にすることを求めている」

 昔、写真評論ものの大部の本を何人かで下訳したとき、福音書の一節がそのまま引用された箇所にぶつかった。たまたまローマ教皇の記事を見て、忘れかけていたそんな記憶も久しぶりに甦りましたね(日本語版聖書の引用は「新共同訳」から)──「はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこのもっとも小さい者のひとりにしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(Matt. 25:40)

 よきクリスマスと新年を。

タグ:nesta
posted by Curragh at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のニュースから
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