解説役は青島センセイ。で、一介の素人の耳にはこの曲、この時代の作品としてはきわめて「異常な」ものだという感覚がある。青島先生も言ってたけれど、とにかくたたきつけるような強烈なビートが前面に押し出されている(とくに終楽章)。なので自分は「ダンスシンフォニー」だという感覚で聴いてきた。バッハの場合はあるていど資料を持っているから多少突っこんだことが言えるけれども、いま言ったことは100%自分の個人的印象。で、興味津々で番組を視聴したら、なんと! あのグールドまで「ディスコ音楽だ」なんて呼んでいるじゃあないですか!! おお、同志よ! フロイデ、MAN ALIVE(とくに意味はありません)!
青島先生によると、1楽章は「シチリアーノ」、2楽章はおそらく北欧起源と思われる「コントルダンス(田舎の踊り)」、3楽章のスケルツォは南ドイツあたりで流行った酒場のダンス「レントラー」、で、小朝さんの大好きな4楽章は「20世紀のダンス音楽」、とくにアフリカ起源のストンプを思わせるとかなんとか言ってましたね。この時代にストンプ!! カツラも吹っ飛ぶこの熱狂的なビート、うねうねうねりながらクライマックスに達する低音部に乗ってぐるぐるぐるぐる、まるでアイリッシュダンス――そう、Riverdanceのような――のごとく目まぐるしく回転しつづける旋律線…以前ワインがかなり入った状態でこれ聴いていたら、ちょっとトランスに近い状態になったことがある(一説によると、終楽章の第一主題はアイルランド民謡からとられたとか。そういえば以前、「ベスト・オヴ・クラシック」でベートーヴェンの室内楽作品ばかり集めた演奏会を聴いたとき、アイルランド民謡から採譜したという連作を聴いたことがある)。
ベートーヴェンとくると、一般の、あまりこの手の音楽を聴かない人はすぐ「おかたい」だの、むずかしいだのという固定観念で見がちです。でもそれはちがう。なににせよ「食わず嫌い」はよろしくない。ベートーヴェンの魅力は、やはりその破壊力というか、既成観念をぶっ壊してまったく新しいものを創造する革新性にあると思う。「6番(田園交響曲)」だってそう。あんな弱音で終わるシンフォニーなんておそらく当時の聴衆には衝撃的だったろうし、「5番」にしたって1楽章なんかほとんど全曲、あの単純な動機のみで構成されているし、最後の傑作「9番」は、たぶん声楽と交響曲を結合させた最初の作品なのではないかと思う。とにかく斬新。パーセルの音楽も当時としてはかなり斬新だと思うし、バッハだって「ブランデンブルク協奏曲(この地名はじつはブレンダンと関係がある) 第5番」に登場するチェンバロの派手なソロではじめて「ピアノ協奏曲」の原型を作ったし、どんな作曲家にもそれぞれ創意工夫を凝らしているけれども、ベートーヴェンほど革新的な人もいないのではないかな。モーツァルトのいかにもおつにすました「古典的」なシンフォニーも好きだけれども、情熱的でめくらめっぽう突き進む推進力をもったベートーヴェンの激しいシンフォニーのほうが、おなじく短気でしかも飽きっぽい性格の聴き手としては相性がいいのかもしれない(交響曲はもともとダンス音楽の寄せ集めである「組曲」冒頭に置かれた序曲「シンフォニア」などから発展したので、モーツァルトの交響曲にはたとえばメヌエット楽章がよく聴かれる。ついでにシンフォニア symphoniaはギリシア語συμφωνίαを起源とし、これを最初にラテン語化したのが大著『語源論』で知られるセビリャ大司教聖イシドール[イシドルス、c.560-636]だったらしい)。
「7番」の終楽章はとにかく理屈ぬきにノリノリなので、意外と乳幼児にはぴったりかも。飽きる? そんなことはないでしょう、たぶん。ためしに聴かせてみては? 調子のいいヴィヴァルディなんかでも「歩行器」につかまった赤ん坊がキャッキャッ言いながら体をひょこひょこ動かして楽しんでいた、という話を読んだことがある。ちなみに子どもたちにアンケートをとったら、一番人気のクラシック作品はラベルの「ボレロ」だったとか。これだって「踊りの音楽」ですよね。「ダンス交響曲」の「7番」だって、おそらくおんなじ効果があるんじゃないでしょうか。
…激しい性格だったらしいベートーヴェン、青島先生の話によると、40近くなってなんと10代の小娘にぞっこんだった時期があったらしくて(
…ちなみに今夜9時の「ビバ! 合唱」。今夜はそのバッハのモテット(とはいえたったの2曲…orz)!! バッハのモテットはぜんぶで10曲もなくて、うちBWV.230, 231は偽作の疑いあり。そのなかにはあのペルゴレージ作曲「スターバト・マーテル」の独語台本版による編曲まであります(BWV.1083、1968年にベルリンで発見されたもの。もともとの歌詞はもちろん聖母マリアを歌ったセクエンツィア[続唱]ですが、バッハはこれを『詩編 51番』の独語訳に置き換えている)。
本日のおまけ:「アルゴリズムこうしん」、第2ヴァージョンもあるみたいですな。
