2025年09月30日

シュテフェンス、カルゲス、バール

 最近は深夜アニメを地上波で観るクセがすっかりついてしまって、今夏のアニメでは『Summer Pockets』や『雨と君と』、春アニメだと『前橋ウィッチーズ』、『ロックは淑女の嗜みでして』、『紫雲寺家の子供たち』なんかをよく観てました(『ウィッチウォッチ』は「トゥンク、トゥンク、…… トゥングースカ…大爆発」とか、昭和世代なら誰もがツッコミを入れたくなる抱腹絶倒ものの小ネタがテンポ良く仕込まれていた怪作だった。ちなみに最初、この「トゥンク」なる科白を聞いたとき、てっきりラテン語の tunc かとカン違いしていた人)。

 というわけで、いつものことながらなんの前触れもなく久しぶりに、「さてこのへんで一発、NHK-FM ネタでもいってみようか」(方倉陽二『ドラえもん百科』第❶巻から)

 今週月曜(29 日)朝放送の「古楽の楽しみ」を仕事の〆切に追われつつ耳だけはそばだてて聴いていたら、まだまだ知らない北ドイツオルガン楽派の作曲家が出てくる出てくる! スウェーリンクは言わずと知れた「ドイツのオルガニスト作り」の異名をとるこの流派の元祖だからいいとして、つぎのヨハン・シュテフェンスとはそは何者? 状態になった。

 シュテフェンス(1559/60−1616)については詳細は不明みたいですが、北ドイツで活躍した人で、バッハゆかりの地のひとつリューネブルクで没している。番組でかかったのは、どこか牧歌的なやわらかい音色の印象的な「ファンタジア イ短調」で、オルガン曲のほか、6声のドイツ語によるマドリガーレも残しているらしい。使用楽器はリューベックの聖ヤコブ教会の「小さいほうの」オルガンを改作したことでも知られるシュテルヴァゲンが、シュトラールズントというバルト海に面した港町の聖マリア教会に建造した歴史的楽器(1659 年;3段手鍵盤と足鍵盤、実動 51 ストップ)。

 ヴィルヘルム・カルゲス(1613/14−1699)はベルリン生まれ、同地で没した人で、生涯、ベルリン近辺で活動していたらしい。スウェーリンクの弟子アンドレアス・デューベンに教わったようなので、ようは孫弟子ですな。6曲のオルガン作品が現存しているようで、そのひとつ「前奏曲 ホ短調」がかかった。コーダ近くで足鍵盤に野太いリード管の低音が響いていた。使用楽器はゴスラーという街にある旧修道院付属教会に 1737 年にクリストフ・トラウトマンというビルダーによって建造された歴史的楽器(3段手鍵盤と足鍵盤、実動 42 ストップ)。ということは、大バッハのライプツィヒ時代に建造された楽器になる(もちろんその頃には修道院教会はプロテスタントに改組済み)。げんにバッハ時代の音響を求めて、多くのオルガニストがここを詣でているみたい(↓ の埋め込みクリップはバッハではなく、ブクステフーデの「パッサカリア ニ短調」 BuxHV 161 ですけど。ちなみにこの曲は、アニメムジカの豊川祥子が読んでいたヘッセの教養小説『デミアン』(1919)に出てくる、「悪魔信仰」な若いオルガニストが主人公シンクレールに弾いて聴かせていた曲でもある)。



 最後にヨハン・バールなる作曲家(1655−1700)。出身はオーストリアで、宮廷人にして著述家でもあった多芸多才な人だったらしいけど、佳人薄命と言われるがごとく、狩猟中の事故で 45 歳 で亡くなっている。インキュナブラ特有の太いゴシック体の判読しずらい古いドイツ語で書かれてあるからよくわかんないけれども、ユーモラスな挿絵本を Jan Rebhu なる偽名で(!)何冊かものしているらしい(リンク先の書物は €5,000 〜 でオークションにかけられてますね ……)。こちらの使用楽器も同じ、トラウトマンの建造した大型の楽器になる(同一音盤)。

 スウェーリンクについで2番めにかかっていたのは、ドイツ3Sのひとりザムエル・シャイトの有名な「タブラトゥーラ・ノヴァ」からの1曲。録音に使用された楽器は番組で紹介されていた音源ではもっとも古く、1612/13 年に建造されたルネサンス様式の歴史的オルガンだった(いわゆる「燕の巣型オルガン」)。

 しんがりにかかったブクステフーデの「前奏曲 ト短調」BuxWV 148 を奏でていたオルガン(リューディングヴォルトの聖ヤコビ教会のヴィルデ/アルプ・シュニットガー改作の歴史的楽器)のピッチは、解説でも触れられていたけれども現代ピッチより高い、いわゆるコーアトーン(合唱ピッチ)で調律されている。北ドイツの、とくにシュニットガーのオルガンではわりとよくある話で、絶対音感の持ち主だったらとても気持ち悪くて聴いていられない……かもしれない(この国では絶対音感が神聖視(?)されているようですが。たしかにかんたんに「耳コピ」できるから一見、良さげではあるが、こういう場面では思わぬ苦痛を味わわされたりする)。



 …… というわけで、9月も終わろうというのに残暑が続くなか、朝からなんとも言えず清々しい風≠ェ吹き抜けたのであった。マルっ ◯ (Liella! の嵐千砂都ふうに)るんるん

posted by Curragh at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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