2006年12月04日

自分の耳が悪いのか

1). 先週の東京カテドラル聖マリア大聖堂でのモスクワアカデミー来日公演。この手の演奏会は――日本では当然のことながら――教会の聖堂ではなくて、せいぜいよくて音響効果のよいクラシック音楽専用ホール、最悪の場合はいわゆる「多目的」なプロセニアムホール。一度でよいから残響の長い石造り、もしくはそれに準じる造りの教会で聴きたいものだなぁ…と思っていた矢先、日本におけるローマカトリックの総本山でコンサート、しかもイタリア製新オルガンの音も聴ける! とあって、楽しみにしていました。

 カテドラル聖マリア大聖堂に入るのは今回がはじめて。当夜は大聖堂の真上に上弦の月が白々と輝いていました。きのうも書いたとおり外は寒くて、やっとの思いで聖堂内に入ったら、暖房がけっこう効いてましてほっと一息。聖堂入り口から聖堂に入ると、オルガンの真下を通過して信徒席へ。オルガンもしっかり見てきました。見た目は聖堂のデザインにマッチするモダンなケースでしたが、伝統を重んじるビルダーらしく、構造はきわめて正統派。北ドイツのシュニットガーオルガンよろしく、しっかりリュックポジティフまで背負ってます。残響の長い聖堂に音響学的にもっともふさわしいのが演奏台を基壇に組み込んだメインケース+リュックポジティフのケースという形…らしい。もっとも南ドイツではゴットフリート・ジルバーマンの製作した楽器のように、メインケースのみで小型ポジティフオルガンを演奏者の背後に背負っていないタイプが主流なので、このへん音楽の趣味・流儀ともからんでなんとも言えないが…。

 プログラムはその聖堂ご自慢の新オルガン(46ストップ)の独奏から。なぜかバッハの超有名なニ短調トッカータBWV.565。どうせ聖堂でやるんなら、季節柄、オルガン小曲集の第1曲目(待降節コラール)「いざ来ませ異邦人の救い主よ BWV.599」ぐらいにしてもらいたいところでしたが…レジストレーションにもよるけれど、ここのオルガンの響きはとてもやわらかで暖かい。聖堂の残響もこれだけ聴衆がいながらしっかり2秒もあるので、なんとも心地よい音のコートにすっぽりくるまれる感じ。これはおそらくたんなる平均律ではなくて、5つの純正5度を鳴り響かせる独自の調律法も一役買っているのだと思います。音響のよろしくないホールではときおりオルガンの各部、足鍵盤の低音パイプとかポジティフとかが「分離」して、わざとらしいステレオ効果で聴こえてきたりする場合があるんですが(新××化センターのオルガンがそうだった)、そんなことはなくて、各ストップ、各鍵盤のパイプ列がみごとなまでにひとつに溶けあって響いていました。それでいて各鍵盤のパイプ列の音はひじょうにクリアに聴こえます。各声部がぐちゃぐちゃに混ざったりしません。とはいえ背後から音が聴こえてくる…というのは、どうしても最後まで馴染めなかった。欧州の人にとってはこの「感覚」が当たり前なんでしょうけれども。

 オルガン独奏が終わると、いよいよ合唱団の入場…ここの合唱団は数年前に混声になったようで、構成は成人男声パートが16人、成人女声パートが12人、少年パートが8人、それと成人女性ソリスト歌手がふたり。プログラムは古今東西いろんな作曲家による「アヴェ・マリア」を中心に、あまり聴く機会のないロシア正教の聖歌にもとづく作品(ラフマニノフの「晩祷」とか)を織り交ぜたもの。

 ところがここでまったく予想もしていなかったことが。歌っている彼らの目の前で聴いているのに、どういうわけか少年の高音パートがさっぱり聴こえてこない! 女性ソリストと女声パート、男声パートはこれでもか! というくらいに聴こえてくるんですけれども…???と思っているうちに、けっきょく総勢8名の少年合唱団員の声は、成人団員の歌声+成人ソリスト+オルガンの響きに掻き消される感じで自分の耳にはまったくと言っていいほど聴こえてきませんでした…orz。

 10年ほどボーイソプラノを中心に声楽ものの来日公演を聴いてきたけれども、こんな経験ははじめて…歌っているときの子どもたちの表情は真剣そのもの、まさかlip-syncではありますまい。

 ということで、少々肩透かしを喰らったような演奏会でした。せっかくこんなすばらしい聖堂でのコンサートだっただけに、残念! 

 …それとしかたないことながら、信徒席は木のひざまずき台+長椅子の典型的なカトリック教会のスタイルなので、後半になってくるとお尻の痛みのせいでだんだん演奏じたいに集中できなくなってしまった。おまけに暖房をかけているというのに、床から冷えてくるのか、寒くてしかたなかった。欧州のVoAメンバーは鍛え方がちがうんだな。テュークスベリー聖歌隊のフランス公演のときなんか、猛吹雪もものともせず、石造りの教会で聴いたというのですから。

2). きのうのNHK-FM「気まクラ」。「みんなの歌」で聴いたことのある「小さな木の実」。これの原曲がなんとビゼーとは知らなかった! それと、サラ・ブライトマンの歌のベースになったというヘンデルの「ハープシコード組曲第2巻」の第4番・ニ短調。これスペインのフォリア(La Folia)ですね。バッハの息子カール・フィリップ・エマニュエルも当時流行ったこの旋律を使った変奏曲を書いているし、時代をくだってラフマニノフなんかもピアノ曲を書いてます。またけさの「バロックの森」でも取り上げられていた、マラン・マレーもヴィオール曲を書いています(けさそれをかけていた。そういえばけさは「今年はわたしたちも記念の年」ということで、没後300年のパッヒェルベル、生誕350年のマレーを特集してました。というか、もっと取り上げてほしかった! ってそういえば5日はモーツァルトの命日ですね…)。

 …ついでながら、日本でもおなじみになりつつある、東京国際フォーラムで5月の連休に開催されるLa folle Journee au Japon。確証はないけれど、このfolle(fouの女性形)もfoliaとおんなじ単語から派生したことばでしょう、たぶん。

 …いまさっき見た「のだめ」。飛行機の胴体着陸事故のシーンでバッハの「マタイ受難曲 BWV.244」から終曲冒頭部が流れ、つづいて有名なバーバーの「アダージョ」が。これ聴きますと、条件反射的に2003年暮れに聴いた、オックスフォード・ニューカレッジ聖歌隊の子たちを思い出します…あれはほんとに感動的な名演でした。

posted by Curragh at 23:41| Comment(5) | TrackBack(1) | 音楽関連
この記事へのコメント
ユニークなコンサートレポート、私までその場にいたかのように楽しませてもらいました・・そうそう、信徒席って、お尻に辛いですよね・・・(苦笑)存在感のないトレブルというのもつまんなかったでしょう・・「口パクする」ってlip-syncというのですね、知らなかったので勉強になりましたー。ニューカレッジも来日したことがあるのですか?日本にいながらにして精力的に沢山の名演を聴いておられるのですね。
Posted by Keiko at 2006年12月06日 00:33
Keikoさま :

ニューカレッジは2001年と2003年の二回、来日しています。ちなみに招聘者はミントンさんという方で、息子さんがセントジョンズに在籍されていた関係で、1998年にはセントジョンズカレッジも来日公演してくれました。

モスクワアカデミーのほうですが、大聖堂のオルガンの響きはひじょうに気に入りました…これでもうすこしトレブルパートに元気があったら言うことはなかったのですが…。
Posted by Curragh at 2006年12月09日 21:56
ニューカレッジは、Judy Severさんが英国一のレベルとおっしゃってましたが、、2回も来日した
のですね!全然しらなかった。。。

Harryもオックスブリッジに進学するのは間違い
ないでしょうから、、大学のchoirの一員として
再来日も大いにありうるかも??
Posted by keiko at 2006年12月11日 16:27
祝御降誕

コメントありがとうございました。
小生もついこないだ(先週の日曜日)
東京カテドラル聖マリア大聖堂に
行ってきました。

ここの演奏会はさぞかし素晴らしいことでしょう。
Russian State Symphonic Choirとか
来たら絶対聴きに行きます!
Posted by cepha at 2006年12月25日 23:56
cephaさま

お返事遅くなってしまい申し訳ありません。
m(_ _)m

そうですね、たしかに音響効果はすばらしいと思いました。ただ、当時としてはあまりに斬新な建築だったためか、台風でステンレスの外壁がめくられたりと傷みが目立ってきていると聞きました。来年からは献堂以来の大改修工事がはじまるようです。

http://tokyo.catholic.jp/text/katedoraru/daikaishu/panf1.htm

わたしもささやかながら献金させていただきました。
Posted by Curragh at 2006年12月31日 09:53
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Tracked: 2006-12-05 13:22