2008年10月04日

ブラジルの巨匠ジスモンチ

 いまさっき見た「芸術劇場」。今月最初の放送は、この夏、ブラジルからやってきた作曲家エグベルト・ジスモンチという人の作品特集でした。みずからギターとピアノも弾いて、東フィルをしたがえての来日公演の模様を見ていたのですが、いままで聴いたことのない独特な響きというか、とにかく新鮮な音楽でした。基本的にはブラジルの伝統的なダンス音楽の旋律と西洋音楽のいいとこどりみたいな印象を受けましたが、あの複雑なリズム、波打つように揺れる特有のビート感をもった作品は、演奏するほうはいささか勝手がちがって大変だったろうと思いますが、聴いているほうはなんだかハッピーな気分になれる、そんなコンサートだったように思いました。10弦ギター…の演奏もひじょうに変わっていて、ネックの部分で爪弾いたり楽器を叩いたり…作風もギター曲のほうがやや難解な感じはしたけれど、ピアノ作品はときおり強烈なビートの効いたパッセージもあるかと思えば物思うような流麗な旋律ありと、こちらは理屈ぬきで楽しめた。ゲストの鈴木大介さん(今年3月まで「気まクラ」のMCをつとめていたギタリストの方)が、「洗練された野性」という形容矛盾をあえて使っていたけれど、聴いてみてほんとそのとおりだと思った。とにかくユニーク、「創造的」な音楽とはまさにこのことという感じ。指揮者は沼尻竜典氏でしたが、ピアノ弾きながらしっかり合図送ってるし、ほんとの指揮者はやっぱり作曲者ご本人かなと(笑)。でも真っ赤なバンダナ姿に長髪、飾らない気さくな人柄、ギターソロのときには合い間にベビーパウダー(! 手の汗を取るためのものらしい)をタオルでポンポンつけたり、「このベビーパウダーがいちばん!」と聴衆に語りかけたり…といった光景を見ているうちに、フリードリヒ・グルダの来日公演を収録した番組を見たときのことをふと思い出した。グルダもまた音楽の垣根を楽々と飛び越えていた演奏家で、来日公演のときにはバッハやベートーヴェンも弾いたけれど、同時に「パラダイス・バンド」という自前のジャズバンドを率いて自作を中心にセッションも披露したり。お二方とも音楽の伝道師という名がふさわしい。前回来日時に大介さんがジスモンチにインタヴューしたようですが、取材しているというより、自分が「伝道されている」という印象を受けたそうです。

 グルダは来日公演が終わったとき、「今日、わたしはとてもハッピーだった。聴衆もみんながハッピーな気分で帰ってくれた」とか言っていたけれども、それはこのジスモンチ公演にも当てはまる気がする。聴いているみんながハッピーになれる。そんな豊かな音楽体験をさせてくれたブラジルの巨匠(と東フィルのみなさん)に、感謝。

 …ブラジルで思い出したけれども今週の「バロックの森」は中南米の植民地時代のバロック音楽という毛色の変わった特集もやってました。水曜の「オランダの音楽」ではレオンハルトの弾くスヴェーリンクのオルガン曲もかかってましたが、ワッセナエルという人の「ソナタ第3番 ト短調」が印象的。リコーダーにテオルボ、オルガンという組み合わせが自分の好みとぴったりあってます。木曜の「スコットランドとアイルランドの音楽」もまた興味深かった。スコットランドのほうはたとえば「バルカーレスのリュート曲集」はフランスから入ってきた組曲形式と古謡の旋律とが組み合わさったもの。アイルランドのほうは、なんだか酔っ払いの歌みたいなのが流れた(笑)。ただしただの酔いどれ歌ではなくて、作曲者カロランはアイリッシュハープの名手だったとか。なので伴奏もザ・ハープ・コンソートでした。月曜朝はチェコの音楽特集でした。バッハの6つ年下のゼレンカの作品に、はじめて聞くザハという人のレクイエムから主題をとったというフーガと前奏曲は、どちらもゆるやかな半音階的進行が耳に残る作品でした。…と、こんどの日曜朝のリクエストには英国の名手プレストンによるバッハの「パッサカリア BWV.582」がかかりますね。

posted by Curragh at 02:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
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