2008年11月17日

ここの聖歌隊のCDもほしいな

 最近のBBC Radio3 Choral Evensongは再放送もしてくれるみたいで聴取できる期間も一週間長くなって、正直とてもありがたい。で、今週はMappa Mundiで有名なヘレフォード大聖堂から。最後のオルガン・ヴォランタリーこそバッハですが、あとはぜんぶ近現代英国の作曲家の作品ぞろいで、これはこれでたいへん聴きごたえがありました。出だしの入堂聖歌は、今年で75歳になるもとヘレフォード大聖堂オルガニストだった人の作品。カンティクルは、ハーバード・ハウエルズが1969年、この大聖堂の委嘱を受けて作曲した「ヘレフォード・サーヴィス」(スタンフォードやグッドールなど、アングリカン系作曲家はたいていこの手の作品を書いています)。アンセムはエドワード・ベアストウが1914年に作曲した「祝福されし街、聖なるセイラムよ」。最初の朗読はイザヤ書から、二番目はマタイ福音書の有名な「山上の説教」の「腹を立ててはならない」というひじょーにむつかしい教えの箇所(主任司祭も'some of Jesus's most challenging words'なんて言っていた)。いちおう新共同訳はもっているので、なるほど英訳ではこうなってんのかーとか思いつつ朗読を聞いていた(くわしくは知らないけれど、使用聖書はNew Revised Standard Versionだろうか? 'You fool'って言ってるし)。いつも聴いている人には無用の説明ですが、朗読が終わるとここからカンティクルの後半部分、つまり「ルカ福音書」の有名な「ザカリアの賛歌」がはじまる(Nunc Dimittis)。アンセムで歌われたベアストウの曲も美しかった。終止直前にボーイソプラノのソロも短いながらありまして、澄み切った声が印象的でした。

 最後のバッハですが、BWV.537の「ファンタジーとフーガ ハ短調」。これ構造的にけっこう興味深いのですが、残念ながらあまり頻繁(「はんざつ」じゃないですよ)に演奏されないみたいです。ファンタジーはいわゆる南ドイツのパッヘルベルといった作曲家によく見られるタイプの、息の長いオルゲルプンクト上でゆったりと展開される曲想のもの(いわゆる「歌唱ポリフォニー」書法)で、最初の終止でhemiolaと呼ばれる技法が使われている。じつはこの作品を伝えているのはライプツィッヒでバッハの弟子だったクレープス親子の筆写した楽譜たった一点のみで、ある意味ひじょうに貴重ではあります(筆写譜末尾には'Soli Deo Gloria'につづいて「1751年1月10日」の日付けも記入されている)。1712-17年、ヴァイマール時代の作とされるこの作品は、ファンタジーとフーガの両者の内的結びつきが強くて、ほかのハ短調作品(「パッサカリア BWV.582」とか「前奏曲とフーガ BWV.547」)の先駆けを思わせるような重厚で、渋くて、「ため息」の半音下降音型進行や半終止が妙に感傷的で、なんだかいまの季節にぴったりな感じの作品です。フーガ(2/2)のほうはちょっと変わってまして、中間部に最初の主題とは関連性のないふたつの新主題が顔を出して、第一主題と結合することなく三つ巴で突き進んで終わります。不完全ながらも、その後書かれる雄大な「ホ短調の前奏曲とフーガ BWV.548」の原型みたいな、ダ・カーポ・フーガです(ケラーはソナタ形式の影響が強いと言っている)。ウィリアムズ本によれば、後半40小節のやや稚拙な書法を問題視する研究者もいるようですが、ウィリアムズも書いているように、これはBWV.548の「完成形」の途上にある作品として位置づけていいような気がします。多主題フーガ…ということでは、晩年の「フーガの技法」にもつながってゆきます。

 ついでに前回放送されたカンタベリー大聖堂聖歌隊の回では、エルガーの有名な「エニグマ交響曲」から採られたLux aeternaがアンセムとして歌われてました。

 それと、毎年恒例のこんな大会も。こっちのほうもあとで聴いてみますか(残念ながら、今年のYCOYは聴き逃した orz)。

posted by Curragh at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
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