2008年11月23日

今年もありがたくいただきました

 週末、この季節恒例の感ありではありますが、買い物ついでにボジョレの新酒を買いました。

 いつもはここの会社が輸入しているG.デュブッフさんの醸すヌーヴォー(最近は'Seléction Plus'なるお高いやつ)を買うんですが、静岡の老舗ワイン屋ヴィノスやまざきの支店がこっちにもできたので、ちょっとのぞいてみた。基本的にボジョレ地区は小規模生産者ばかりなので、ボルドーの自家生産兼醸造所シャトーのように、葡萄栽培・醸造・瓶詰めまで一貫してやります、というところは少ない。ふつうはデュブッフさんみたいなアッサンブラージュの専門家(eleveur, 醸造家)とか取り引きのある地元ネゴシアン(ワイン商)に買い取ってもらって、彼らの工場で瓶詰め・出荷してもらっているのがふつうです。でもここのお店が扱っているのはバイヤーが直接、蔵元も兼ねた自家栽培農家へ買い付けに行ってアッサンブラージュしたものを自前で輸入してきているらしい。店にあったのは、モルゴン村のローラン・ギヨ氏が樹齢100年を越える古樹から醸したというちょっと変り種のヌーヴォーと、A.O.C.ボジョレの蔵元ドメーヌ・ド・シャテルス生産のヌーヴォー。お店の人の話では、モルゴンのほうはボジョレの新酒にしては条件がついていて、「半日前には抜栓してください」とのこと。古樹の葡萄(vieilles vignes)を使用しているせいかどうかはわからないけれど、いわゆるふつうのボジョレ・ヌーヴォーとはちがうみたいで、「新酒なんだけど長期熟成ワインのような複雑な香りと味わい」が特徴なんだそうな。それに産地がボジョレ地区でも「わりと強い」酒を出す北部モルゴン村。個人的には、新酒というのはあくまでも旬のもの、絞りたてのフレッシュなお酒、理屈ぬきに楽しむものと思うので、けっきょく「わりとふつうの」シャテルスさんとこのヌーヴォーを買いました。ほかにもデュブッフさんの'Sélection Plus'を2本買ったから、これだけでかなり財布が軽くなる(苦笑)。

 でも軽くなっただけのことはありました。サントリー提供の某料理番組でみんなが今年のヌーヴォーをさっそく飲んでいるのを見たら、こっちも無性に飲みたくなりました(笑)。とりあえずはじめて買った自家醸造元詰めのシャテルスさんの新酒を開けてみました。コルクがあまりワイン色に染まっていないことからしても、これが空輸直前に瓶詰めされたことを思わせます。色はすみれ色がかった明るいルビー。薄くもなく濃くもなくちょうどいい感じ。グラスの中でちょっと転がしてから、おもむろに鼻先に近づけると、なんともいえない馥郁とした特有のアロマがたちどころに立ち上ってきました。冷やしてなかった、というのもあるかもしれないが、今年のガメイはけっして出来がいいほうではない(6月に長雨が降ったらしい)と聞いていたので、これはうれしい誤算でした(じつはあまり期待してなかった)。店の宣伝文句じゃないけれど、ここのヌーヴォーにかぎって言えばすばらしい香りにほどよい味わい、酸味もさほど強くはなくて、たしかに全体のバランスはとれていると思います。とてもおいしいです。

 以前、ここにもすこし書いたけれども、いま欧州のワイン産地もグローバル化の影響をもろに受けてどこもたいへんらしい。ボジョレ地区も例外ではなくて、ワイン新興国との価格競争で不利に立たされ、設備投資で借りた資金の返済に行き詰って自殺する農家まで出ているという。その点日本などアジア諸国はいいお得意さんなんだろうか。そんなことも思いつつ、今年もヌーヴォーが飲めることに感謝して、音楽を聴きながらありがたくいただくことにします――ただし飲みすぎには注意して(笑、そういえば大バッハも大のワイン好きだったらしい。あるとき運搬途中でワインが漏れて、それを残念がる手紙を残している、とか読んだことがある)。

 デュブッフさんの醸した'Sélection Plus'のラベルにはご丁寧に収穫時期まで印刷してあって、今年は9月23-30日のあいだに収穫したガメイを使っているみたい。ちなみに2006年もののラベルを見ると9月7-14日に収穫、とあるから、今年は葡萄の実りぐあいが遅かったらしい。また瓶詰め・出荷はネゴシアンに任せている銘柄の場合、ラベル最下段の住所欄を見れば、ネゴシアンが地元の人か、よそからやってきて樽ごと買い付けているだけの人なのかを見分けるいちおうの目安になります。ボジョレ地区のあるローヌ県の郵便番号は69ではじまり、その北隣、マコン地区のあるソーヌ・エ・ロワール県は71ではじまります。また関係ないことながら、ボジョレの中心都市ヴィルフランシュ・シュール・ソーヌの川向こうには、サン−テグジュペリが幼年時代をすごし、「箱根 星の王子さまミュージアム」のモデルにもなっている城館の建つサン−モーリス・ド・レマンスがあります。

posted by Curragh at 19:46| Comment(4) | TrackBack(0) | ワイン関連
この記事へのコメント
実に美味しそうですね。
ミーハーなくせに、いささか天邪鬼の私は、ボジョレーヌーボーには手を出さないできたのですが、最近周りから美味しいお話を聞いて、決心が揺らぎつつあるところで、今回美味しそうな記事を拝見して、心が揺らぎ始めております(苦笑)。

もうブームも去ったことだし、そろそろ手を出しても良い頃合かと思ってしまいました。ちょっと調べてみよっと♪

美味しいワインに、美味しい食事、素敵な音楽&素敵な絵画があれば、人生は最高ですね♪

Posted by alice-room at 2008年11月25日 21:20
alice-roomさん

コメントありがとうございます。m(_ _)m

ボジョレ地区の特産品種とも言うべきガメイという葡萄は、まさにヌーヴォーになるために存在しているような葡萄です。ほかの品種、シラーとかにも新酒はありますが、ここまでフルーティで、理屈ぬきで楽しめるワインというのはほかにないのでは…と思います。オーストリアのホイリゲあたりはどうかな?? 

読書家のalice-roomさんはご存知でしょうけれども、『死霊』の埴谷雄高氏は大のトカイ好きですね。数年前に一度だけ、糖度の低いわりとお安いのを飲んだことがありますが、「濃厚な蜂蜜味のウィスキー」みたいな味わいで強烈な印象でした。こちらもおすすめです。
Posted by Curragh at 2008年11月29日 17:20
いやあ〜お恥ずかしながら、埴谷氏の作品は読んだことないのです。何度か手にはとっているのですが、微妙に戸惑いがありまして・・・。
トカイは、あまり飲んだことなかったですが、そちらも挑戦してみたいです。他にも濃厚で凝縮された貴腐ブドウのは、高くてなかなか手が出ませんがアイスワインとかもそれなりにいけますよねぇ〜。
あ〜、ワイン飲みたくなりました(笑顔)。
Posted by alice-room at 2008年12月01日 21:52
おお、アイスワインというのもありますね! 最近では元祖のドイツ産よりもカナダ産のものが多いようですね。こちらはまだ飲んだことがないので、機会があればぜひ。
Posted by Curragh at 2008年12月05日 21:40
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