2008年12月28日

オバマさんは歴史本好き?

Times記事関連はここのところ書けずじまいでした。なので古いものばっかりですが…とりあえず目についたものから。

1). 一ユーザーとしてあんまりいい印象のないMS社ですが、そんなMS社もエンドユーザーのためにいろいろがんばってやってくれている面もあります。たとえば、いま流行っている「ボットネット」の尻尾を捕まえようと日夜、奮闘している「ボットネット・ハンター」なるMS社内チームの話とか。そんなMS社がとある報告を公表した。中身は、'ciberchondria'について。この造語、「心気症」を意味するhypochondriaとcyberとを引っかけたもの(ミトコンドリアじゃないです)。記事中の例を引けば、朝方ひどい頭痛で悩まされた人がさっそくWebで検索して、これは「脳腫瘍」にちがいない、と早合点してしまう、というような行動を指します。早合点くらいならまだしも、なかには真剣に悩んでしまう向きもすくなからずいます。「サイバー心気症」ということばじたいはすでに2000年から登場しているそうですが、今回のような系統だった調査というのははじめてらしい。自分の症状を検索エンジンで調べることじたいはとてもいいことだとは思いますが、問題は向こうが機械的に返してくるこたえを、人間のお医者さんとおんなじような「診断結果」として額面どおりに受け取る人の多いこと。もうひとつは検索結果上位に表示されるリンクしか見ていないこと。なのでもし上位リストに「脳腫瘍」とか「筋萎縮性側索硬化症」とか表示されるととたんにそれに飛びつく。あるいは悪性・両性のものとある場合、悪性のほうに目が行きがちだったりする。「頭痛」で検索すると、「脳腫瘍」によるものにしてもカフェインの禁断作用によるものにしても、表示される検索結果はどっちもおなじくらいの数で、しかも前者に起因する頭痛はかぎりなく可能性が低い。にもかかわらず「悪いほうの」検索結果にしか目がいかない、という方は「サイバー心気症」を疑ったほうがいい、とのこと。記事によると全Web検索キーワードのうち2%が健康関連だとか。調査対象者の2%が、調査期間中にすくなくとも一度は健康関連で検索していて、うち3分の1の人がさらに検索を重ねて「深刻な」症状のほうへ深入りしていったそうです。いっぽうでこのような人間の傾向というのは早くも70年代に観察されていた、とも。つまりは人としてごくごく普通の反応ということなんでしょうが、いずれにしても気になることがあったらきちんとお医者さんに診てもらったほうがいいですよね(→国内関連記事)。

 MS社がこんな調査をしたのは、独自に健康関連アドヴァイザー的役割を果たす「現状よりさらに高度な」検索サービスを開発するためでもあったらしい。健康関連にかぎらず、検索エンジンもどんどん「人工知能化」していくのだろうか(記事では、MS社が90年代に妊娠と保育にかんする似たような助言提供システムを作っていたことにも触れている)。

2). Time誌の'The Person of the Year'にも選ばれた、次期米国大統領(president-elect)のバラク・オバマ氏。先月16日、大統領選当選後はじめてCBSの'60 minutes'に出演したさい、「F.D.R.――フランクリン・デラノ・ルーズベルト――政権発足後の百日について新しい本を読んだ」と具体的な書名は明かさずにこたえたところ、いったいだれの書いたなんという本なのかと憶測を呼んだそうです(→元記事)。フランクリン・ルーズベルトとくれば、「ニューディール政策」とか写真がらみでは農業安定局(FSA)によるドキュメント写真によるキャンペーンとかが思い出されますが、大恐慌まっただなかに米国の舵取りを任された先達の「最初の百日」についての本を読んだとオバマ氏みずからが語ったから、いっそう関心を惹きつけたのでしょう。「F.D.R.政権最初の百日」を書いた本として「候補」にあがったのは3冊。放映翌日から「ウチで出したこの本じゃないのか?」とか、候補に挙がった本の著者に――ちと気が早いが――'congratulations!'と祝メールが送信されたりとちょっとかまびすしくもなったりしたけれど、けっきょくその日のうちに次期大統領のスポークスマンが候補にあがった本の著者のひとり、ジョナサン・オルター氏の本(The Defining Moment: FDR's Hundred Days and the Triumph of Hope)と、ジーン・エドワード・スミスという人の書いたFDRという伝記だったと発表した。前者は一昨年、後者は昨年刊行とけっして「あたらしい本」ではなかったけれども、これがきっかけでF.D.R.ものが売れているという。時節柄、これはしごく当然の成り行きなのかもしれませんが、いずれにせよ版元の人が言っているようにこういう「歴史もの」が売れるのは悪いことではないと思う。オバマ氏がじっさいに読んだ本ではなかったけれども、候補として取りざたされた本の版元の場合、初版は5千部以下、書評もほとんどなかったという(つまり話題にならなかった)。それがオバマ次期大統領の「読書」がきっかけで急遽5千部増刷、書店最大手のB&Nでも注文が多く寄せられるようになったとか。世の中そんなもんですな。オバマ氏の読書リストからは惜しくも漏れた本の著者までが、おなじ過ちを繰り返すのが歴史を忘れた者の常とすれば、次期大統領が過去の歴史から教訓を学ぼうと努めていることに歴史を書く者はみな喜ぶべきだとべた褒め(もっともヨイショではなくて、これは歴史家の本心だと思いますが)。5千部増刷した版元の広報担当はこんなおもしろいことも言ってます。

Jeff Seroy, a spokesman for Farrar, Straus & Giroux, said he was delighted to have a president-elect who might improve book sales. “Maybe he’s the new Oprah,” Mr. Seroy said, “and a rising tide of interest in F. D. R. could float a number of boats, even the ones he hasn’t read.”

 オプラ・ウィンフリー女史はTVのトークショーの司会者のみならず、本の評論家としても非常に有名な方なので、こんなたとえになったのでしょうね。それにしてもたまさかTVニュースで耳にするオバマさんの演説には得もいえぬ独特の魅力を感じます。人柄がにじみ出ているというか。このへん、どっかの国の首相とかどっかの知事さんみたいに、人の話にはろくに聞く耳を持たず、ただ人を威圧して黙らせるタイプの人とは文字どおり天と地ほどの差をどうしても感じてしまう。だから、というわけではないが、NHKラジオ第一に出ていた「日本のオプラ(?)」児玉清さんが、「この本いいよ!」と勧めていた書籍に入っていたのがその名もズバリ『オバマ演説集』。これひじょうに売れているらしい。売れているものにはいっさい目もくれないたちながら、この本ばかりはおおいに興味あり。こんど本屋に行ったときに置いてあったら、買おうかしら。対訳形式らしいから、英語の勉強にもなりますしね(大統領選に敗れた共和党候補のマケイン上院議員の「敗北宣言」もラジオで流れたとき聞いていたんですが、その爽やかさというか、党派のちがいを乗り越えてともに団結することが大切だ訴えた内容も負けず劣らずすばらしくて、じつはこっちのほうにも感動していた人)。

posted by Curragh at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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