2009年01月18日

二次喫煙ならぬ三次喫煙の害

1). まずはこちらの記事から。「二次喫煙(受動喫煙)」というのはすでに耳なじみの感ありですが、喫煙者の紫煙を直接、吸いこまなくても「受動喫煙の危険」があるということが、今月号のPediatricsという学術誌に発表されたという(→Pediatricsの掲載論文[PDF])。

 この研究結果を発表したのはハーヴァード大学医学部小児科准教授のウィニコフ博士らのグループ。具体的には当の論文記事を読んでみないとなんとも言えないけれど、たとえば前日、だれかが煙草を吸った部屋に翌日入ると、カーペットやカーテン、その他調度品類の表面にくっついている煙草の発癌性物質を吸いこむことによっても有害である、ということ。とくに乳幼児のいる家庭では要注意だと強調しています。「受動喫煙」は、車のウィンドウをちょっと開けて煙草の煙を逃がしたり、子どもを外に出してそのあいだ家の中で吸う、という「配慮」をしても、なおダメということで、ようするに喫煙習慣そのものを捨てなさい、ということです。

 またウィニコフ博士らは2005年9−11月にかけて、乱数にもとづいて自動生成した番号に電話をかけ、全米1500人から聞き取り調査もおこなっています。それによると、「二次喫煙」の害については非喫煙者で95%、喫煙者で84%の人が認識しているものの、「三次喫煙」については当の用語がまだ耳慣れないためもあってか、「前日だれかが喫煙した部屋に翌日入ってきた乳幼児・子どもがその部屋の空気を吸うと、彼らに健康被害をおよぼす危険がある」ということをきちんと認識している割合は、非喫煙者で65%、喫煙者で43%のみだったそうです。

Third-hand smoke is what one smells when a smoker gets in an elevator after going outside for a cigarette, he said, or in a hotel room where people were smoking. “Your nose isn’t lying,” he said. “The stuff is so toxic that your brain is telling you: ’Get away.’”

たしかに煙草のあの臭いっていつまでもしつこく残っていますね。なるほど、「鼻はウソつかない」わけだ。問題なのは、煙草にふくまれる有害物質には猛毒物質もけっこうあるということ。ブタン、鉛、砒素、シアン化水素(!)、それと驚いたのが、ポロニウム210という放射性物質。これ、2006年にもとKGB職員だったロシア人毒殺に使われたものですよ。このあたらしい知見については、こちらの専門家の書かれたブログにも書いてあるので、あわせて紹介しておきます。「残留受動喫煙」ですか。うまい訳語ですね(→Daily Telegraphサイトの関連記事)。しかしこの話題、日本のメディアではちっとも取り上げられていないような気がする。taspoだっけ、あんなんでお茶を濁しているような国ですから、しかたないかも。

 関係ないけれど、全国ではじめて受動喫煙防止条例制定を目指している神奈川県知事さんが、なんと! 20日におこなわれるオバマさんの大統領就任式(the Inauguration Day)に招待されたっていうから、こちらもびっくり。

2). 先日のUSエアウェイズの事故。まさしく間一髪でしたね。ほんと、奇跡的な不時着でした。で、こちらの記事を見ますと、いわゆる「バード・ストライク」って、飛行機の歴史が始まったときからあったんですね…。野鳥との衝突記録でもっとも古いのは、なんと1912年だそうで、キティ・ホークでライト兄弟が初飛行してからわずか9年後のこと。鳥と衝突したあと、カリフォルニア州ロングビーチ沖に墜落して、操縦士が亡くなったという。また1962年、というからまだケネディ大統領の時代、ボストン空港から離陸しようとしていたプロペラ機がムクドリの群れと衝突、四基あるエンジンのうち三基が鳥を吸いこんで失速、ボストン湾に突っこんで乗っていた62人が犠牲になるという痛ましい事故も起きているらしい。ニューヨーク近辺では2006年12月、ケネディ空港から離陸直後のボーイング767機がオオアオサギを吸いこんで急遽引き返し、乗客は代替機に乗り換えてもらったということがあった(そういえばそんなことあったな)。今回、事故の起きたラ-ガーディア空港では2003年にも、やはり離陸時に雁の群れと衝突、一基のエンジンが使えなくなり、ケネディ空港に緊急着陸したという。

 記事読んで思ったんですが、離陸時に鳥とぶつかる事例が多いですね。そしてこれがもっとも危険な事例でもある。離陸時は当然、ほぼフルパワーで上昇していますから。また渡り鳥の場合、渡りの季節に高度8千フィートあたりで衝突する事例が多く報告されているそうです。渡り鳥の飛行高度上限は1万2千フィートくらいですが、高度3万7千フィート上空で渡り鳥と衝突したなんていう事例も一件、報告されています。空港周辺から鳥を追い払う対策はいろいろ講じられてはいるものの、どうにもならないときは

But sometimes, the airports have been forced to relocate the flocks, or in the most extreme cases, kill them.

“As a last resort you have to do lethal control to convince the rest of the flock that we mean business,” said Russell DeFusco, a member of the steering committee for Bird Strike Committee USA, a group that collects data on bird strikes.(mean businessは「本気だ」という意味)

けっきょく、対処法はこれくらいのもの。何度か追っ払っていれば相手も学習するかもしれないけれど、自然の摂理にしたがって行動している相手なので、むつかしいところではある。もっともエンジンメーカー側も不測の事態に備えた衝突試験はやってるようで、記事によると、エンジンを最高出力まで上げたあと、スズメからサギくらいの大きさの鳥まで、いろんな鳥の死骸を実際に吸わせて、その結果、最低50%の出力を維持できたものだけ合格品として出荷しているんだそうです。とはいえ今回は「ニ基同時に使い物にならなくなった」というきわめて異常なケース。問題のエンジンは着水時に機体からもげて、ハドソン川のどこかにまだ沈んでいるらしい。まずはエンジン引き揚げですね。ちなみに座礁したクジラのようになってしまった機体はいま、バッテリー・パーク近くに係留されているとか。

3). 最後にこちらの記事についても少しだけ。最近の急激な不況で、共働き夫婦もたがいに離れ離れに暮らさなければやっていけない、という話。欧米人はなによりも家庭最優先の人が多いから、配偶者や子どもと離れて暮らすのはさぞ苦痛に感じることかと思います。でもいまはそうも言っていられない。とはいえ、昔の船乗りみたいに何年も生死不明、なんてことはない。たとえば印象的な記事上の写真。Skypeを利用して、PCモニター――iMacだ――越しにわが子に漫画本(? 、しかしこの'The Adventures of Captain Underpants'って…いかにもアメリカンなキャラクターですな)を読み聞かせている、というのはひと昔前なら考えもしなかったこと。子どものしつけなど、いろいろ問題もありますが今後このような「別居結婚」状態の家庭というのはますます増えそうだという。おかげて愛の深さを感じる夫婦もいれば、記事最後に出てくる女性のように離婚を決意される方もいる。

“My short-term project in Europe gave me a new perspective on our 22-year marriage,” said one woman, who asked that her name not be used. “It basically opened a whole new vista on my life and convinced me it was time for a divorce.”

 米国人にかぎって言えば、家庭を犠牲にしてでも仕事をしなくてはならない人ってけっこう多いかと思う。帰宅してもすぐノートPC開いて仕事のつづき、みたいな人を以前TVで見たことがある。欧州の人のほうが、まだしも人間らしい生活を送っていると言えるかもしれない。オバマ政権になったら、米国民の生活もいい方向へ「変わって」いくといいですね。もっともいちばん変わんなきゃなんない国はどこか、についてはむろん承知してはいますが。

posted by Curragh at 17:47| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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