2009年03月28日

モサラベ聖歌にカバニーリェス

 先週の「バロックの森」は「スペインバロック特集」。月曜の朝はなんとモサラベ聖歌。いわゆる「グレゴリオ聖歌」は 8世紀後半にアルプスの北、カール大帝のいたフランク王国において発展し、11世紀ごろに完成したと言われています。それまではガリア、アイルランド、スペイン、イタリアでそれぞれ地方色の濃い典礼聖歌が歌われてきました。もっともいずれもローマ式聖歌がベースになっているので、ことさら地方色が強いというのは少々誇張した言い方かもしれない。それはともかくこの「モサラベ聖歌」も名前のみ聞いたことがあるだけなので、シャルプラッテンのこの音源は貴重だと思う。で、聴いてみた第一印象としては…なんだか長崎の「オラショ」を聴いているみたいだ。なるほど、だから皆川先生はイベリア半島で伝えられてきた古い単旋律聖歌にたどりついたんですね。「モサラベ」というのはイスラム勢力が席巻していたイベリア半島におけるキリスト教徒を指した言い方だったようです。そしてイベリア半島の音楽において、イスラム圏の影響はぜったいに見逃せない。リュートももとはと言えばアラビア半島の古代楽器が発展したもので、イベリア半島経由でヨーロッパにもたらされたものですし。スペインの音楽がどこか中東風で、独自様式を発展させてきたのも、イスラムの影響が大ということでしょう。

 またカベソンやカバニーリェスという、ふだんはあまりお耳にかけない作曲家の書いたオルガン曲もかかったけれども、カベソンの「ミラノ風ガイヤルドによるディフェレンシア」と「イタリア風パヴァーヌによるディフェレンシア」のほうは寝ていて聴きそびれた(苦笑)。「ディフェレンシア」というのは英語 difference と似た響きのことばで気づかれるとおり、変奏曲の一種。ちなみに「ディフェレンシア」という形式で最初に曲を書いたのは16世紀、フェリペ二世に仕えていたルイス・デ・ナルバエスという人だったらしい。そのナルバエスからも二曲、佐藤豊彦氏によるビウエラ独奏でかかりました。スペインとかイベリア半島の音楽ってこの手の「変奏曲形式」がひじょうに発展していますね、どういうわけか。シャコンヌ、パッサカリア、ディフェレンシア、ファンダンゴとか…ヘンデルやコレッリとか多くの作曲家が曲を書いている「ラ・フォリア」というのも変奏曲の一種ですが、これらに共通しているのはもとはダンス音楽、舞曲だったということ。「ファンダンゴ」とくるとソレールの書いたチェンバロ曲とかも思い出しますが、きのうの朝かかったのは「 2台オルガンのための 6つの協奏曲」でした。演奏者はコープマン−マトー。それと、そうそうこの時代のスペイン音楽でよく出てくる楽器、ビウエラもたびたび登場しましたね。Wikipedia記事を見ると、ギターの親戚みたいなかっこうしてますね。聖歌と言えば、有名な「モンセラートの赤い本」もかかりました。「母なるマリアを」は、たしか「名曲アルバム」でも流れたはず。カスティーリャ王アルフォンソ・エル・サビオ編纂の 400曲以上もある「聖母マリアのカンティーガ集」とかもそうですが、いずれもひじょうにノリのいい歌が多いですね。これらは厳かな典礼で歌うのではなくて、巡礼者一行が目的地にたどり着いた喜びから踊り歌うためのものだった、とのことでなるほどと納得。スペインの大作曲家とくると
やっぱりビクトリア。木曜の朝はビクトリア作品集で、「死者のためのミサ曲」を、いまは亡きジョージ・ゲスト指揮キングズカレッジ聖歌隊が歌ってました。トレブルの独唱がちょっと個性的でしたね。

 また木曜にかかった、アルベロという人の書いた「レセルカータ、フーガとソナタ ト調」という曲もおもしろかった。楽曲そのものというよりは、アンドレアス・シュタイアーの弾くチェンバロの独特な音色に、でしたが。とくに低音の響きがなんかほかのチェンバロとはちがうような気が…かなり独特な重厚な響きでした。変り種と言えば英国人作曲家でのちにアントヴェルペンで活躍したジョン・ブルの書いた「スペインのパヴァーヌ」。ヴァージナルを弾いているのがあのクリストファー・ホグウッド。エンシェント室内管弦楽団指揮者として有名ですが、ほんとは鍵盤楽器奏者だったんですね(汗)。この人の弾くオルガンのCDを探してみようかな。

 先週のBBC Radio3のChoral Evensongはウェストミンスター・アビイからで、今年生誕350年にあたるヘンリー・パーセル作品集みたいな感じでした。珍しく小編成アンサンブルによる演奏もありまして、こちらもとてもよかった。明日の夜の再放送分は「聖母マリアの受胎告知記念日 ( カトリックでは「神のお告げ」、3月25日 )」礼拝のウェルズ大聖堂からで、最後のオルガン・ヴォランタリーではバッハの「マニフィカトによるフーガ、オルガノ・プレーノで(わが魂は主をあがめ) BWV.733 」が演奏されます。5声部、138小節からなる自由なフーガで、しばらく手鍵盤のみで進み、後半になると足鍵盤が定旋律を奏ではじめます。ヴァイマール時代の作で、その技巧の巧みさを指摘したヘルマン・ケラーは「即興演奏を楽譜に書いた」のではないかと推測しています。

posted by Curragh at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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