先週の「バロックの森」は、チェコ出身でザルツブルクで活躍したハインリッヒ・イグナーツ・フォン・ビーバー(長い…)の代表作、「ロザリオのソナタ」特集でした。ヴァイオリンの名手にしてザルツブルクの宮廷楽長だったビーバーは、言ってみればモーツァルトの大先輩にあたる。全曲通して聴くことはあんまりなかったので、あらためて聴いてみると変則調弦(スコルダトゥーラ)の効果もあってか、受胎告知から聖母マリアの戴冠まで、たいへん生き生きとした音楽による活写のように感じました。またこの作品は、15通りの変則調弦を要求されるがゆえに、全曲を生演奏で一気に聴ける、ということはめったにない。たまにはそんなすごい演奏会もあるようですが…。終曲の「パッサカリア」は、なんとなくバッハの「無伴奏」ものの先駆けのような気もした。バッハの有名な「シャコンヌ(BWV.1004の終曲)」だって、「パッサカリア」と似たような変奏曲ですし。また作曲者の指示なのかどうかくわしくは知らないのですが、曲によって通奏低音の担当がオルガンになったりテオルボやチェンバロになったりしていたのも興味深かった。金曜日の放送ではアーチリュートという楽器も出てきましたね。テオルボに似ているけれど、調弦がちがうらしい。また「レクイエム」からの抜粋もかかったし、「技巧的で楽しい合奏音楽」からも「ニ短調のパルティータ 第1番」がかかりました。週末の「リクエスト」では、ひさしぶりにガルッピの「チェンバロのなぐさめ」から一曲、かかりましたね。それと、マラン・マレーの「ヴィオール曲集 第2巻」から「スペインのフォリア」。「フォリア」って人気者だな。この時代からラフマニノフにいたるまでじつにさまざまな作曲家がこの主題にもとづいた変奏曲を書いていますね。
そして今週は、いよいよHoly Week。つまり移動祝祭日の「復活祭」目前というわけで、「バロックの森」ではアレッサンドロ・スカルラッティの「ヨハネ受難曲」がかかります。昨年のいまごろだったか、テレマンの「ブロッケス受難曲」* を聴いたけれども、こっちは聴いたことがないから、楽しみ。また「トリエント公会議」以後、ドイツのルター派圏で発展した「受難曲」も、もとをたどると中世のトロープスから派生した典礼劇のひとつ、「墓場でだれを探しているのか?('Quem quaeritis in sepulchro?')」にまで行き着くらしい(→参考サイト。cf. Alan Mould, The English Chorister, pp.63-5)。いま、聴いている「ビバ! 合唱」でも、ちょうどおあつらえ向きにシュッツの「マタイ受難曲」の「最後の晩餐」とかかかってます。ア・カペラで歌っているのはフレーミヒ指揮、名門ドレスデン聖十字架合唱団。
BBC Radio3のChoral Evensong。先週分はヘンデル尽くし。でもなんか日本人には耳に馴染まないんですよね、あの英語式発音。「ジョージ・フレデリック・ハンデル」って、たしかにそうなんだけれども…(笑)。
*... ハンブルクの法学修士でのちに市参事会員になったバルトルト・ハインリヒ・ブロッケスが1712年に書いた受難詩『世の罪のために苦しみをうけ、死にゆくイエス』を台本とした受難曲の通称。テレマン(1716年)のほか、ラインハルト・カイザー(1712年)、ヘンデル(1717年)、ヨハン・マッテゾン(1718年)、ヨハン・フリードリヒ・ファッシュ(1723年)らの作品があり、バッハも「ヨハネ受難曲 BWV.245」(1724年初演)でこのブロッケス台本の一部を採用している。
2009年04月05日
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