2009年04月26日

最近話題な方二名

1). 最近話題な方、とくると、やはりスーザン・ボイルさんでしょうか。YouTubeでいっきに'instant celebrity'になってしまったとはいえ、もとは英国の新人発掘番組でブレイクしたのがことのはじまり。当然のごとく(?)NYTimesもこの話題の記事が出てました。とはいえ…なんだかちょっとヘンです。歌は、自分もYouTubeで聴いたけれど、アルトの美声の持ち主、という印象。でも若いときから教会のヴォランティアとして歌っていたらしいから、正式な歌唱法の訓練は受けていないとはいえ、喉には自信があったらしい(だからこそ応募したわけですが)。英国=合唱大国、というイメージが強すぎるせいか、観客のあまりのおおげさな反応にかえって? と感じたのも事実。ボイルさんなみに歌える人なんて、けっこういるんじゃないかしら、と。この違和感はいったいなんだろう…と思っていたら、そうか、こういうことだったんか。

Miss Boyle’s performance has been significant, too, in that it has unexpectedly provoked a debate about prejudice against the not so young and not so beautiful.

... In a blog on The Huffington Post, the feminist writer Letty Cottin Pogrebin said that she had e-mailed multiple copies of the original YouTube clip, with the subject line “Ageism Be Damned,” to the people on her “Women’s Issues” e-mail list. Many of the women who saw it, she said, wept as they watched.
“I’d wager that most of our joyful tears were fueled by the moral implicit in Susan’s fairy-tale performance: ‘You can’t tell a book by its cover,’ ” Ms. Pogrebin wrote.
The audience and judges “were initially blinded by entrenched stereotypes of age, class, gender and Western beauty standards,” she added, “until her book was opened, and everybody saw what was inside.”

歌そのものではなくて、容姿と歌声とのギャップに注目が集まった、ということらしい(苦笑)。でもこれはずいぶんと失礼な話ではないですか。顔で歌うわけじゃあるまいし(一部「容姿」で売っている人気歌手さんとかはべつとしても)。「表紙を開いてみなければどんな本なのかわからない」とくると、これはもう音楽とかは関係ない次元の話。でもあのおおげさな観客と審査員の反応を見ると、いかに向こうの大多数の人が、「人を見かけで判断する」ということにふだんなんの疑問も感じていないかがあぶり出されたように思える。またこの手の過剰反応をまのあたりにすると、英国における「年齢差別」とか「階級差別」、「性差別」というものがいかに根強いかがはからずも露呈したようにも感じる。労働者階級の子どもが、ユダヤ系の子どもをいじめたりということも日常茶飯事だと聞きますし。なんだかこの記事、全体的にたんなるhuman interestものだった感じ…ついでにこの記事を読んだとき、ヨーダがルークに言った科白、「わしを見よ! わしを見かけで判断するのか?」というのも思い出した。この'Britain’s Got Talent'、セミファイナルは来月23日だそうで、もっかボイルさんの目標はこのセミファイナル突破だということです(どうでもいいけれど、審査員席の前面にならんだバツ印って…)。

2). つぎは日本でもたいへん顔の売れた方に取材した記事。エジプト考古庁の顔、あのインディアナ・ジョーンズのかっこうをした考古学者ザヒ・ハワス博士。NYTimesでこの方の記事を見るのはこれで二回目ですが(掲載記事はもっと多いと思うが)、こちらはよくある人物紹介記事のおもむきながら、突くべきところはきちんと突いている。そうそう、博士には他人の功績もみんな自分ひとりの功績みたいに喧伝する癖がありますね(ん? そういえば『ナグ・ハマディ』英語版編者のロビンソン博士なんかもそうか)。

In the seven years since he was named general secretary of the Supreme Council of Antiquities, Dr. Hawass has been in perpetual motion. He personally announces every new discovery, was the force behind plans to construct 19 new museums, approved the restoration of nine synagogues in Cairo and has contributed to countless books, documentaries, magazine and newspaper articles all promoting Egyptian antiquities ― and, of course, himself.

There are Egyptian antiquities workers who complain that he takes credit for their accomplishments.

 記事によると、ザヒ博士って首都カイロの北東にある村の出身で、アレクサンドリア大学でギリシャ・ローマ考古学で文学士をとった2年後の1969年に検査官として考古庁入りしたらしい。その後フルブライト奨学金を得て渡米、1987年にペンシルヴェニア大学から博士号を送られた。エジプト考古最高会議事務局長に就任したのが2002年というから、わりと最近ですね。

 日本のTVにもたびたび登場しては発掘現場の生の声を聞かせてくれる、という点については評価できるし、げんに博士のショウマン効果なのか、エジプトを訪れる観光客の間でもひじょうに受けがいい。つまり好むと好まざるとにかかわらず、ザヒ博士なくしてはエジプトに落ちる金も少なくなってしまう、というのが現実ということです。

“Whether we like it or not, he is a star, and he lives the life of a star,” said Mahmoud Ibrahim Hussein, chairman of the antiquities department at Cairo University. “When he goes to a place, people gather around him to talk to him. Many professors give lectures; but people pay more to hear Zahi speak.”

でも、TVとかで博士がぶっている「仮説」には首をひねりたくなることもしばしば。たとえばツタンカーメン王墓のまん前で見つかった例のKV.63についてのザヒ博士の仮説なんかはとくに(下線強調は引用者)。

When a tomb was found in the Valley of the Kings three years ago, he surmised that it was built for King Tut’s mother, a sure way to drive up ratings, even as scientists involved in the dig rolled their eyes. The chamber was most likely a storage room, they said at the time.

ひさしぶりに公式サイトのぞいたら、先月下旬に今年の調査は終了したこととか書いてありました。発見された壺の調査も終わって、13番の札のついた壺にはミイラ作り用(?)の寝台の破片が入っていたらしくて、こちらはルクソールの博物館で公開展示されるみたいです。発掘者によれば、この「墓」は、アメンヘテプ3世時代から存在していたようだ。ただし、

There is no evidence of a burial but the embalming materials were introduced during several intrusions late in Dynasty XVIII. This occurred during or very close to the time of Tutankhamun.

だそうでして、ミイラ作りの材料とかはツタンカーメン王治世に近い時代に何度か持ちこまれた形跡ありですが、ここが「埋葬場所」であったかどうかについては証拠なしとはっきり書いていますね。

 ちなみにあのトレードマークになっている帽子、おなじものをなんとブッシュ前大統領にも差し上げたんだそうです。で、そのとき奥さんがこう言ったそうです。

“I gave one just like this to President Bush,” he said with the casual tone of a name dropper. “His wife said it was too small for his head. He was very disappointed.”

…前大統領ってそんなに頭が大きかったんだ…というか、こんなことまで記者にしゃべる人ってのも、どうかとはと思いますが(苦笑)。

3). 最後にこちらを。ついに(?)YouTubeがオケを組織してカーネギー・ホールでコンサートを開いた(→公式サイト)!? まだビデオクリップをまともに見てないからなんとも言えませんが、すくなくとも記事見るかぎりでは、いささか難があったようで…たとえばプロコフィエフの「ピアノ協奏曲 第2番」の終楽章。終わりまで演奏するかわりに、途中から「くまんばちの飛行」になったり、取り上げた音楽もヴェツィア楽派のガブリエーリから、現代の作曲家まで15曲、しかもどれもが一部分のみだったらしい(ブラームスの「4番」第3楽章ではじまり、チャイコフスキーの「4番」の終楽章で終わった)。なんでこんな切り張りないしは寄せ集め(a potpourri)にしたのか、については指揮者マイケル・ティルソン・トーマス氏の意向による。このYouTube楽団は送られてきた演奏ビデオをもとにオーディションで選ばれ、世界中から集まった総勢96名の団員からなる。参加者の出身国は30か国にものぼり、できるかぎりさまざまな時代と様式とを取り入れようとした、ということらしい…でも、ちょっと欲張りすぎたという印象を受けますね。またタン・ドゥン氏がこのYouTube楽団カーネギー・ホ−ル公演のために書き下ろしたという作品も「初演」されたりして、プログラムはなんと3時間もの長丁場! たとえ演奏された楽曲が「切り張り」だったとはいえ、全員顔をそろえての練習はたったの二日だったというから、これはこれで快挙だったのかも。

Subtlety? Well, that takes more rehearsal time.

もっと練習時間があって、欲張らないふつうのプログラムだったらなおのことよかったと思う。いまひとつ「耳障り」なことといえば、

Naturally, given the sponsors, the video components of the concert were pervasive, with a cavalcade of clips from the audition entries and introductions to the pieces that zoomed in on the cities in which they were composed. There were so many spotlights and projectors in the hall that pianissimo passages in the music had to compete with the whirring sounds of ventilating fans.

…こういうの、音楽を聴く側からするとひじょーに困るんですけれどもね! 安っぽい演出なんて、いらないんじゃないの? それにしても、YouTubeもずいぶんおもしろいことやるもんだ(というか、記事を読むまでこの企画じたい知らなかった)。記者のことばを借りると、バスケットボールチームじゃなくてオーケストラでよかったのかも(笑)。

posted by Curragh at 21:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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