2009年06月15日

Billy Elliotにスコット先生

 まずはこちらの演奏会評から。先月26日に、もとセントポール大聖堂聖歌隊の名伯楽、ジョン・スコット先生とシンフォニア・ニューヨークの演奏会が開かれたそうです。会場は「ニューヨーク倫理文化協会」という、聞いたことのない場所(→公式サイトを見たら、どうもここのコンサートホールらしい)。写真で見るかぎりちんまりしていて、古楽演奏にはいい感じ。この演奏会、とても毛色が変わっていて、バロック時代に流行った舞曲、シャコンヌ尽くしのコンサートだったのです。タイトルもずばり、「シャコンヌの芸術とエクスタシー――スペインの街道からバッハの精神へ」。内容もじつに興味深い。スペインのフアン・デル・エンシーナという人の作品からバッハの有名な「シャコンヌ」までをたどるこの演奏会では、踊り手まで登場して、当時のシャコンヌがどんな舞踏だったかを見せてくれる。こんなおもしろい企画の演奏会がなんとadmission free! 事前予約を取らなかった聴衆が長い行列を作ったそうです。

 以前「バロックの森」で、シャコンヌは中米のメキシコあたりが起源だという話を聞いてちょっとびっくりしたことがあるけれども、記事にもそのへんのことが書いてありました。そしてこれはよくあることながら、シャコンヌが流行り始めたころ、教会側はこんな猥雑なダンスはけしからんということで禁止したケースもあったという。

The chaconne, a dance form with roots in the Renaissance and its heyday in the Baroque, traveled to Europe from Latin America and was considered so lascivious in its early days that churchmen inveighed against it and it was banned in places.

 'its foundation is a proto-Minimalist repeating bass line...'というのは、ちょっとおもしろい言い方ですね。たしかにミニマル音楽って、どことなくシャコンヌとかパッサカリアに似ている気がする。おんなじ低音主題が何度も何度も反復するところとかが似ている。

 シンフォニア・ニューヨークというのは古楽オケみたいですが、当日の演奏会では室内楽編成。ジョン・スコット先生はチェンバロ、つまり通奏低音担当で出演。記者の耳には、パーセルの「ディドーとエネアス」の嘆きのアリアが白眉だったようです。バッハの「シャコンヌ」を独奏したClaire Jolivetの演奏も非の打ちどころのない、しっかりとした構成でしかも劇的なきりりと締まった演奏だったとのこと。シュテルツェルの「御身がそばにあるならば」って、BWV.508のアリアかな? 踊り手が当時の衣装を着、仮面をかぶってシャコンヌのダンスを舞ったのはリュリの「アルミードの悲劇」や「アシスとガラテ」など。シャコンヌっていったいどんな踊りだったんだろうか。やはり複雑なステップを踏むのかな? 

 …とそんな折、今年もトニー賞発表の時期になりました。2005年に英国ウェストエンドで上演されて大ヒットしたミュージカル版'Billy Elliot, The Musical(日本では「リトル・ダンサー」という原作映画の邦題のほうが通りがいい?)'、ブロードウェイでも上演されていたとは、寡聞にして知らなかった。トニー賞のミュージカル部門の候補になったという記事を見たときにそのことをはじめて知りました。で、結果は――予想通り? ――受賞したのですが、予想外(?)だったのは最優秀主演男優賞・最優秀作品賞に脚本賞など、10冠だったこと。ついで多く賞をとったのが「子の心、親知らず(原題はすごくて'God of Carnage')」という新作コメディと'Next to Normal'というミュージカルがそれぞれ3部門で受賞。とくに「ビリー・エリオット」のほうは、英国興行でもそうだったけれども主役は三人の少年俳優の回り持ち。なので三人いっぺんに同時受賞! こういうことはひじょうにまれだとのことです(→Wikipediaの記事)。「ビリー・エリオット」と「メアリ・ステュアート」、「エクウス」の三作品はすべてブロードウェイ興行前にウェストエンドで上演された作品だという。またアンジェラ・ランズベリー(「ジェシカおばさんの事件簿」の人、「ナニー・マクフィーの魔法のステッキ」にも出ていた)は今年齢83になるそうなんですが、なんと「陽気な幽霊」という作品で演劇部門の助演女優賞を受賞。アンジェラ女史はトニー賞をはじめて受けたのが43年も前のことで通算5回目の受賞になり、これはジュリー・ハリスとならんで最多記録タイらしい。こちらもすごい記録ですね。

 でも「この不況にかかわらず」、演劇やミュージカルを観るお客さんの出足が好調だったとはいえ、当のお膝元でも年々、トニー賞授賞式のもようを伝えるCBSの視聴率は落ちていっているようで…今年の場合はABCで放映していたNBAファイナルの第2戦が競争相手でした。授賞式のもようは見てないからよくわからないけれど、のっけから候補作品と音楽を組み合わせた派手なパフォーマンスが10分間、繰り広げられたとか。視聴率を稼ぐための演出だったのかもしれないですね。

 「ビリー・エリオット」で演出を手がけたスティーヴン・ダルドリーさんは、映画版の監督にして「愛を読むひと」だったかな、新作映画の監督でもあったんですね。最後に主役を演じたひとりの科白を。

“And we want to say to all the kids out there who might want to dance, never give up,” Mr. Kulish added.

何事もあきらめない、つづけることが大事ですよね。

posted by Curragh at 23:51| Comment(2) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
この記事へのコメント
 そうですそうです、Billy Elliotは映画に負けず劣らず舞台も有名なのですよ。主役にはバレエスクールの生徒が選ばれることが多いので、新キャストが決まるといつもバレエ雑誌で紹介されます。(だから私も舞台があることを知っているのです 笑) 
 見てみたいとは思っているのですが、労働基準法に引っかかるので日本には呼べないそうです。残念。

 それにしてもあのジェシカおばさんが83歳とは!
Posted by すい at 2009年06月16日 22:16
すいさん

お返事遅れまして失礼しました。

2005年でしたか、NYTimesで「元祖」ミュージカル版Billy Elliotの記事が出てました。で、リーアムくんだったかな、彼をふくむ主役三人組が、ローレンス・オリヴィエ賞を受賞したこともありましたね。たしかそのときは、「芸術劇場」でもほんの数秒、彼らが出てきたのを見たことがあります。

子役さんの出る舞台では20時以降でしたっけ、たしかダメなんですよね。とはいえ以前、「NHK音楽祭」でゲルギエフ指揮による「マーラーの3番」をやったとき、TFMの子どもたちが出て歌っていたのですが、あれはたしか20時を過ぎていたんじゃなかったかな…?? 
Posted by Curragh at 2009年06月21日 15:54
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