2007年01月16日

津波にもめげずホクレア号出航

  昨年10月、なんでいまごろ…という感じで青土社から刊行されたこちらの本。原本刊行は四半世紀以上も前。先週ぼんやり新聞見ていたら謎が解けました。あのホクレア号、なんと日本に向かっているのですね…。そういうつながりでしたか。

 ホクレア号ってよかれ悪しかれわりとよく知られた「古代船」ですね。船体はグラスファイバー製とはいえ…記事によると、1881年、ハワイ王カラカウアが訪日して以来の日・ハ交流を記念した試みらしい…もちろんコンパスなどいっさい使わず、ポリネシアの伝統航法のみで日本まで帆走。日本到着後は沖縄・熊本など8か所を廻るとか(こっちにも来ないかな…)。

 記事では週末にも出航予定、とあったけれども荒天のため火曜日まで延期、しかもちょうどその週末に千島列島沖でM.8.3の巨大地震が発生、ハワイ沖にも津波注意報が出されるという困ったおまけつき。さいわい今回の地震による津波の影響はなくて、ホクレア号はぶじハワイのカワイハエに入港。火曜の出発にそなえているとのこと。

 帆船なので当然セイルも艤装されていますが、新聞サイトの画像を見ますといわゆるラテンセイル型の縦帆のようです…ということは現代のsailing boatみたいにあるていど風上へ向かってジグザグに進めるのかな? 「ブレンダン」みたいな典型的な横帆(square sails)型古代船ではせいぜいがブロードリーチ、風を直角に受けて進むのが限界でしたが。こちらのほうが帆走性能は高いように見えます。

 …さてホクレアとは関係ないが、週末はこちらの番組の再放映も見てました。子どもたちに北極圏の氷河調査をさせる、というのはいくらなんでもちとやりすぎのような気もしたけれど…。最初、「地球を救いたい!」なんて現代人によくありがちな発想(誤解)を口にしていた子どもたちも、想像を絶する苛烈な北極圏の自然の中で共同生活をつづけるうちに、自然のなかでは人間の存在がいかに小さいものかを体感しつつ、自分たちにいまなにができるかということを考える過程がこまやかに記録されていました。この貴重な体験は今後の人生においてきっと生きるよすがとなるにちがいない…と思いつつも大の寒がりの自分にはとてもムリだなこれは…でもできることから実行するということはとても大切なことですね。環境問題…といえば、かつてウェルデル・ベリーやビル・マッキベンといった炯眼の書き手によるすばらしい本を読んでずいぶんと考えさせられたことをいまさらながらに思い出す。とくにマッキベンの『情報喪失の時代 The Age of Missing Informationは10数年前に書かれたものですが、あらためて著者の卓見には驚かされます。この件については稿を改めてまた書くかもしれない…けれども、未読の方はぜひ読まれることをお勧めします。これは「必読書」だと信じています。

 …と、いまちょこっと「地球ドラマチック」のバックナンバーを見ていたらヴァスコ・ダ・ガマの航海とか、古代ローマの巨大船とか、見逃しているものがけっこう多い!! ストラディヴァリウスの話は再放映されるみたいだから、録画しないと…。昨年では、タイタニックを沈めた巨大氷山の話がひじょうにおもしろかった…なんといっても革舟「ブレンダン」とまったくおんなじ海で氷山と衝突して沈んだタイタニックの話ですからね。氷山が転がって起きる「津波」の貴重な映像にはほんとうにびっくりしました。ブレンダン号もやはりこの「魔の海域」で浮氷群(パックアイス、オホーツク海の流氷はアムール河の氷が吹き流されて着岸しますが、こちらは海水が凍ったもの。氷河から崩落してできた氷山とは別物)に突っ込んで革の船体に穴があいてあわや浸水沈没…しかけたことがあります。このときはさいわいにして浸水箇所を特定でき、しかも補修可能な場所だったため「継ぎ」を当ててしのいだのですが、これがもしティム・セヴェリンの言っているとおり「硬い木造船」だったら一発で沈没したことでしょう。革舟は「船体がたわんで柔軟性が高い」ため、海氷の浮く最悪の海域を乗り切ったと言えます。

 …とはいえしょせん自分はarmchair adventurer にすぎないが…。

posted by Curragh at 03:16| Comment(3) | TrackBack(0) | 最近のニュースから
この記事へのコメント
ホクレアの帆は建造から1980年代いっぱいぐらいまではクラブクロウ・セイルというリモート・オセアニア海域独特の逆三角帆でした。1990年代から2000年代前半はジブ付きのラテン・セイルを装備していましたが、昨年末の改装で再びクラブクロウ・セイルに換装されています。

クラブクロウ・セイルは古代からポリネシアやミクロネシア人が使用した帆形で、逆風での帆走性能はラテン・セイルと同等かそれ以上という研究報告もあります。

なお『星の航海術をもとめて』の著者のウィル・クセルク先生もティム・セヴェリンの航海はご存じで、以前にメールで「The China Voyage」に言及されていたこともあります。
Posted by 加藤晃生 at 2007年01月17日 00:13
加藤晃生さま

お返事遅くなってしまい申し訳ありません。

「航海カヌーマニア」blog、ときおり拝見させていただいています! ティム・セヴェリン関連で、拙サイトもちょこっと紹介していただいていたとは恐縮です。

「カニのハサミ」型セイルというものですか。はじめて知りました。'The China Voyage' のあと、セヴェリンは英国の植物学者ウォレスの足跡を辿りなおす航海の本を書いていますが('Spice Islands Voyage')、そのとき建造したインドネシア伝統船は長方形のセイルを斜めに張った、たいへんユニークな帆船だったことを思い出します。

'The China Voyage'は、コメントいただいたあと机の引き出しから引っ張り出して、ひさしぶりにパラパラと目を通してみました…おもしろいなと思ったのは、下田港からいよいよ太平洋横断へ出発する直前、クルーのひとりが地元の小学校に招かれ、航海について児童相手に航海について話したときのことが書いてあるくだりです(p.178)。クルーが話し終えて、質疑応答になると、まず真っ先にこう訊かれました。「トイレはどうしてますか?」。出航後、米国の海事博物館の教育プログラムに参加している学校の子どもたちから、こんどは衛星回線経由でおんなじことを訊かれたそうです。著者も書いているとおり、トイレは子どもたちにとって一大関心事ですね(笑)。

また'The China Voyage' では香港から日本までの航海に、小島仁奈さんという当時ホリプロに所属していた画家でモデルの方が参加していらして、どこの地方紙かは失念しましたが、乗船体験を寄稿しています。
Posted by Curragh at 2007年01月21日 20:54
セヴェリンの本は殆ど手元にあるのですが、なかなかホクレアを追うのに忙しく、じっくり読めていません・・・・。チャイナ・ボヤージュには日本人も登場するのですか。ちょっとチェックしてみますね。
Posted by かとう at 2007年02月02日 11:19
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