2007年01月22日

Google, iPhone, and YOU.

1). 新年明けていきなりの地震と津波、となにやら不穏な感じではありますが、しばらく更新できずにいたら、またしても、というか…「ペコちゃん」の件もそうですが、ひじょうに頭にきたのはこちら。なんですか、ここのガス会社は? もともとガス管網は北見市が管理していて、2年くらい前にこのガス会社に譲渡したものらしいが…いくらなんでも自分が生まれる前に「ねずみ鋳鉄」なんていまどき使われない材料でできたガス管を敷設後、一度も交換せずガス供給していたとはいったいどういうこと? また調査結果を公表した会社の幹部だかだれだか知りませんが、まるで他人事のようにしゃべるあの態度にも腹が立つ。唖然として評することばもなし。「微量だったから…」とはなんたること! 微量だろうと大量だろうと、3日前から猛毒の一酸化炭素をふくんだガスが漏れているとの通報を受け取っているんだからとにかく現場へ急行して住民を避難させることが最優先に決まってるじゃないですか。なおあきれたことにはこの動画報道でも「一連の検証作業について、結果として妥当だったかどうか検討してみる必要がある…」なんてことをいまだに平然と言ってのける。死者を出した時点でもう信用ゼロなんです! ほんとにその道のプロかと目を、耳を疑う。

 …都市ガスを供給するという、いざ事故を起こせば惨事につながりかねない重責を担う企業体で働く人の発言とはとうてい信じられないほど、この人の物言いはいかにも軽い。北ガスの経営不振云々…なんてことも聞きますが、経営が苦しいからそこまで手が回りませんでした、なんて冗談じゃない。すくなくとも突然の予期せぬ災害(人災)で亡くなった住民の方や、事故のために最愛の家族を奪われとり残された遺族のことを考えての発言ではない。土下座しろと言いたくなる。取材にたいして、ピアノ講師だった女性の息子さんが気丈にこたえていましたが、「あんなに元気だったのに…」。そのショックの大きさはいかばかりかと思うと察するにあまりある。20歳…だからきっとご両親といっしょに成人式を祝われたばかりだろうに…。

 先週、NHK-FMの「私の名盤コレクション」という番組を聴いていたら、指揮者の故朝比奈隆氏の特集をやってました。亡くなられる直前、まったく偶然に神戸へと帰る新幹線に番組ゲストの落語家の方が乗り合わせた。「先生!」と声をかけたら、公演を終え、顔に黄疸症状が現れ意識朦朧状態の朝比奈氏からこう言われたんだそうです。「…ああ、なんだきみか。こんな年寄りの相手なんかしてないで、落語の稽古を積みなさい!」。以前NHKのTVで、シカゴ響を振る米国公演のもようを見たとき、米国人スタッフから「椅子はいるか?」と訊かれた朝比奈氏、なかば憤然としてこうこたえました。'No! Standing is my profession!'。朝比奈氏はどんなときでも「本分を尽くす」人だった。不二家の事件にせよ、北見市のガス漏れ事故にせよ、いずれの場合も「プロとしての本分」を尽くしていない。なんかこういう、本末転倒な人・企業があまりにも多いと思うのは自分だけだろうか…。この手の報道に接するたび、すくなくとも昔の日本人には朝比奈氏のように、一本筋の通った、真に教養あるdecentな人がたくさんいたんじゃないかとつい思ってしまう。

2). 本題。きのうこちらの番組を――「N響アワー」のあいまに――見ました。考えてみれば自分も一種の「検索」中毒かも。自分がはじめてこの検索エンジンを知ったのがまだ日本語版さえなかったころだったので、隔世の感ありですが、なんだか最近のGoogle社を見てますといつぞやのMS社みたい…「全世界の情報を収集・管理」なんてちょっと空恐ろしいものを感じるのは自分だけか? たしかにここのサービス――Google Earth、Googleマップ、Gmail、News検索にBlog検索、米国内発行の主要雑誌・新聞の過去記事全文検索に図書館蔵書検索(このふたつについては実現まで紆余曲折がありました)、画像管理ソフトのPicasa2などはたしかに便利だしおもしろいけれども…また、「Google検索結果上位に引っかからなければこの世に存在しないのとおなじ」とハッパをかけるSEO会社の社長も出てきたけれどたしかにそうなのかも…自分のサイトだって、こっちが「サイトこさえたからURLを登録するね!」と申請してかなーり経過してから――作った本人がすっかり忘れているころ――いきなり検索結果にヒットするようになり、それと相前後していろいろな方からメールをいただきはじめたし…たしかにGoogle効果はありますね。でもしょせん一私企業にすぎない組織が「全世界の人々のありとあらゆる情報」をかき集めて管理する…というのはやっぱりこわい。番組の最後、Google本社ロビーのホワイトボードが映し出されたとき、ますますこわさを感じた。ボードには、世界中から集められた博士号をもつ天才的なエンジニアたちが「将来の夢」を寄せ書きしてあったのですが、「株式市場を支配する」だの「Google通貨を作る」、「Google.gov(政府)を作る」…ワインが入って酔ったアタマでこれらの寄せ書きを見せられると、サリン事件を引き起こした某カルト教団幹部の映像とどうしてもダブってしまう。

 ちなみに日本ではいまだにYahoo! 強しみたいですが、番組にもあったように世界的に見ればいまやGoogleのひとり天下、みたいな状況なので、知らないうちに周囲を見たらみんなGoogle、なんてことにならないともかぎらない。知らないうちに知られたくない個人情報までGoogleの手に渡って管理される、ということだってありうる。そういう自分もGmail使ってたりするから、いまさらどうしようもないような気もするが(苦笑)。とはいえ…あのジョン・ゲールという青年、ほんとにGoogleの広告収入だけで毎月90万近く入るんだろうか…ほんとの話かいな…??? 「納豆オチ」、なんてことはないとは思いますがどうですかね > NHK。ちなみにここまで如才ないGoogleですが、「千慮の一失」はあったようで…それが動詞用法のgoogle、つまり「ググる」。当のGoogle社が昨年になってあわてて商標申請したから、うっかり「ググりました」なんて使えないみたいです。商標使用料を払えなんて警告がくるかも。

 …年末はブレンダン本優先の読書だったので、いまごろになってTime 誌の'Person of the Year' を読んでました。知ってのとおり「今年の人」はずばりYOU、つまりわれわれ自身ですと。いまや情報は有名メディアに属する一部の人から発信されるものではなくて、有名無名問わずみんなが平等かつかんたんに情報を発信・受信、共有できる――それも世界的規模で。この新たな動きが従来の情報の流れを根底から覆しつつある、というわけで「あなた」ということになったらしい。

 それを実現させた技術はWeb2.0、その代表としてYouTubeが取り上げられていました。「Web1.0がページどうしを結びつけるための技術とすれば、Web2.0は人どうしを結びつけるための技術。TVや新聞コラム欄に登場する特別な一部の人だけのものではない。Web2.0をかたち作っているのはごくふつうの人たちだ」。なるほど。YouTube創業者3人組についてもそれぞれ経歴とか書いてありましたが(現在スタンフォード大在学中のカリム氏はあとのふたりと不仲らしい?)、むしろWeb2.0を利用して「有名になった人」の記事のほうがおもしろかったりして。とくにこの人とか。Web2.0もいいけれど、いまのトレンドはOpen Sourceなのでは…と思っていたら、ちゃんとFirefox開発者のひとりという、弱冠21歳の青年の話も載ってました。そうそう、まず最初に「お金ありき」じゃないから、とことん納得行くまで打ちこめるんですよね。この点はひじょうに共感します。そうは言っても糊口を凌ぐにはライフワークならぬライスワークも必要ですが…。

 …ついでにこの記事にはquixotic なる形容詞も使われてました。もちろん『ドン・キホーテ』から派生したことばです。

 最後にApple社が先日発表したiPhoneの試作機について。自分もNYTimes配信の'MacWorldExpo'の動画を見て、おおいに驚いたわけですが(ポーグ氏のblogにリンクがあります)…これはもう電話じゃないですよ。名前こそ「電話」は冠しているけれども…コラムニストのポーグ氏が書いているとおり、電話なんてはっきりいってほんの付け足しみたいなもの。じっさいには電話というより携帯端末にひとしい。入っているのはOSXサブセットベースの専用OS。タッチパネル下の電源ボタンとか、音量調節以外は物理的なボタンはいっさいない斬新なデザイン。メール送受信(ヴォイスメールも)にWebブラウジング…しかもPCとおんなじフル表示ブラウザ! タッチパネルも動画を見るかぎり使い勝手がよさそう。ネット接続はWi-Fi経由か、米国仕様の場合はCingular社の――かなり遅い――回線経由で(携帯キャリアはCingular一社のみ。ただしG.S.M.4バンド対応なので、海外でも使用可能)。Bluetoothも搭載。記憶装置はHDDではなくて4〜8GBまでのフラッシュメモリ(このへんは当然の仕様か)で対応。このへんの作りこみの巧みさはすこしは見習ってほしいくらい > MS社(→iPhone関連国内記事)。ただし現段階では――ポーグ氏も「これはreviewではなくてpreviewだ」と断っているとおり――まだ試作機なので正式リリースまでにはいくつか仕様の変更があるでしょう。

 とはいえNYTimes はなにもApple礼賛、といった記事ばかり掲載しているわけではなくて、こちらの記事のように、きわめて冷静に分析・批判した記事もあるところがいいところ(報道機関ですから当然か)。こちらの問題についてはまた後日書く…かもしれません(明日もNYTimes ネタを予定していますが、今年「注目の人」の話です…)。

 …MS社といえばWindows Vistaがまもなく個人ユーザー向けにも出荷されますが、MS社は土壇場になって一部アイコンのデザインを変更したり、「スタートボタン型の飴玉」を配ったり(元記事)、こんなカウントダウン時計まで配布したりといろいろたいへんですねぇ。でも個人的には時計、とくるとこっちのほうがおおいに気になりますね

posted by Curragh at 07:12| Comment(2) | TrackBack(0) | OS/PC関連
この記事へのコメント
いつも興味深いお話、ざあっとですが、読ませていただいています!
'No! Standing is my profession’・・・素晴らしいですねーー 

ついでながら、「発掘あるある大辞典」の捏造問題にも私は大いに怒ってます!痩せる、だの若返る、だのその手の話にはめっぽう弱いもので(苦笑)あの手の番組はつい信じてしまうのですが、、、製作者はみじんのプライドもないのでしょうか!

Google社の特集・・見たかったのですが、ちょっとまた今週末納品の仕事で青息吐息のため・・ぜんぜん見られなかったので、内容教えていただいてよかったです。私なんかもやはり、自分のブログがHarry Severで検索されて何位でヒットしてるかとかとても気になるので・・・コワイことではありますね・・
Posted by Keiko at 2007年01月22日 19:21
Keikoさま

民放はかなり前から外部の制作会社に番組制作をほとんど丸投げ状態で請け負わせているという話を聞いたことがあります(NHKもそういう場合があるかもしれませんが、おそらくNHKエデュケーショナルとか、NHKの関連会社でしょう)。それゆえチェックが行き届かず「目先の視聴率」ばかりにとらわれた短絡的内容の番組ぞろい、ということになる傾向が強いみたいですね。でも今回の件はやはりおなじく「本分を忘れている」としか言いようがありません。番組に出演されている芸能人の方にもひじょうに失礼ではないですか、とでっちあげをやらかした制作者に言いたいです。

Googleですが、再放映がありますよ。

NHKスペシャル「“グーグル革命”の衝撃〜あなたの人生を“検索”が変える〜」

チャンネル :総合/デジタル総合
放送日 :2007年 1月23日(火)
放送時間 :翌日午前0:00〜翌日午前0:50(50分)
Posted by Curragh at 2007年01月22日 21:30
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