2007年01月23日

スコット先生のブクステフーデ連続演奏会

 「今年注目の人」とは…じつはこちら。自分にとっては今年はシベリウスイヤーではなくて、ブクステフーデイヤーなのです。

 現在、5番街にあるこの有名な聖トーマス教会音楽監督兼オルガニストをつとめるのが John Scott。かつてセントポール大聖堂聖歌隊でバロウズ三兄弟やアンソニー・ウェイなど優秀なコリスターを育てた名伯楽、あのジョン・スコット先生なのです。ここの教会音楽監督の地位に就任したのが 2004年のこと。現在セントポールの音楽監督兼オルガニストをつとめているのはもとウェルズ大聖堂音楽監督・聖歌隊長にして作曲家のマルコム・アーチャー。セントポールと言えば、今週の'Choral Evensong' で生中継されますね。

 ディートリヒ・ブクステフーデは一説によるとデンマーク出身らしい…『新グローヴ』にはドイツ出身と書いてあるらしいが … 記事の冒頭、ペンシルヴェニアにある大学の生徒が一昨年、バッハが徒歩でリューベックに旅立ってからちょうど 300年の節目の年 (1705年) だからと、バッハの誕生日 (3月21日) にあわせてニュージャージーからニューヨークのマンハッタンめざして33マイルの距離を3日かけて歩きとおした…んだそうです…なんだか3そろいですが、もちろんこれは学校のスケジュールと折り合いをつけるため。で、目的地に到着したあと、てっきりどっかの教会で当のブクステフーデのオルガン曲でも聴いたのかと思いきや、あいにくそのようなコンサートはなくて、けっきょくリンカーンセンターのエイヴリー・フィッシャー・ホールにて NYフィルによるメンデルスゾーンを聴いて帰ってきたらしい。ま、バッハつながりだからこれでもまだ妥当な線かもしれませんが…。

 ここの教会のオルガン…記事を見たあとでオルガンビルダーのサイトにて仕様を確認すると、たしかにスコット先生の言うとおり、おなじ北ドイツオンガン楽派の作品を演奏するんならセントポールよりこちらの楽器のほうがふさわしいですね(→教会サイト)。実働ストップ数21、2段手鍵盤と足鍵盤というちんまりした構成、送風装置もなんとバッハ時代の手動式(!)まで備えるというある意味本格派。これなら停電しても大丈夫?! 何人か「ふいご係」が必要ではあるけれど…。そしてこれは妄想ながら、この楽器がブクステフーデ作品の演奏にふさわしい北ドイツ型オルガンのレプリカならば、おそらく現代のアーレントオルガン (東京御茶ノ水のカザルスホールにもあります) のような、よく澄んだ、乾いた音色を奏でる楽器のような気がします。

 NYTimes の記事にはもちろんバッハが「夕べの音楽」を聴きに行った有名な逸話にも触れていまして、バッハが休暇を4週間から勝手に 4か月 ( ! ) に延長してリューベックに居座りつづけたことについて、スコット先生は「離れがたいなにか」があったにちがいないと述べています。けれどもブクステフーデの自筆譜というのは現存しておらず、現在伝えられているのはおそらくブクステフーデの即興演奏を記譜した弟子たちの筆写譜。なかには「偽作」もあるとか…それゆえ研究者・演奏家にとっては演奏上、いろいろと難題をはらんでいる…バッハでさえ何十年も研究者を振り回しているくらいなので、このへんはいたし方ないところでしょうか。

 記事中、「われらがイエスの四肢」なる声楽曲はいまだ聴いたことなし。今年にあわせてこの作品を収録した新譜が2枚、出たらしい。「バロックの森」にでもリクエスト出そうかな? またオルガン曲として引き合いに出されている'Prelude in C'というのは、たぶん「前奏曲、フーガとシャコンヌ ハ長調 BuxWV.137 」のことだろうと思う。念のためこちらのサイト(よくこれだけ作ったなぁ…バッハやパッヘルベル、モーツァルトもあるし…世の中にはすごい人がいるもんだ)で確認しても、ほかに「ペダルパートのソロ」で導入される自由オルガン曲はこれしかないみたいですし。この曲は20年以上前、NHK-FMでエアチェックしたことがあります(大掃除のとき取り出したカセットをついこの前まで聴いていた)。また紹介したMIDIサイトに掲載されている「トッカータ ニ短調 BuxWV.155 」*。 これ出だしなんかほとんどバッハのあのトッカータ BWV.565そっくり!。この曲をやはりNHK-FMで聴いたのもだいぶ前になるけれども、解説書のたぐいを見てもこの作品とバッハのトッカータとの関連性に触れたものは見たことがない。もしこの曲の作曲年代がバッハの「リューベック詣で」以前とすれば、おそらくバッハも聖マリア教会で尊敬する師匠の生演奏によってこの曲(もしくはこのような感じの即興演奏)を耳にしたはずです。両者の終結部も雰囲気が似てますね。あと目新しいところでは「パッサカリア ニ短調 BuxWV.161 」とバッハ唯一のパッサカリア(BWV.582、ちなみにバッハはシャコンヌもパッサカリアもたったひとつしか、それも独奏曲としてしか残していない)との類似性について。以前、自分はアンドレ・レゾンの主題から着想した…という説を信じていたのですが、新ブクステフーデ全集編纂に参画している米国人オルガニストのクリスティ氏によると、「疑わしい」。バッハ版パッサカリアにしても、いまだに作曲年代がまちまちで、ヴァイマール時代と書いてあるライナーもあればケーテン時代の作、としているものもあったり…ヴァイマール以前、なんてのも見たことがあります (いったいどっちなんだ ?! ) 。orz

 名オルガニスト、ジョン・スコット先生のブクステフーデ・オルガン作品連続公演は先日の日曜(21日)からはじまり、不定期に5月下旬まで開催される予定とのこと。この手の音楽が好きで、ニューヨークへ出かける予定のある方は行ってみる価値はおおいにあると思われます(しかもなんと無料!! なんとぜいたくな!)。

 …NHK-FMの「ベスト・オヴ・クラシック」。昨夜はマーラーの 6番「悲劇的」でした。全曲聴く機会はあんまりないから、とてもよかった。

 * 追記。「トッカータ ニ短調 BuxWV.155」の演奏風景をYouTubeで見つけましたのでご参考までに。どこの教会の楽器かはわかりませんが、足鍵盤の最低音域がショートオクターヴ、および手鍵盤の最低音域がブロークンオクターヴ仕様になっているように見えるので、17世紀北ドイツによく見られるタイプの楽器のように思う。またコーダ直前、ポジティフ鍵盤を押し込んで下のハウプトヴェルクと連結して音量と音色とを増強しています。一段でふたついっぺんに弾くために鍵盤は重くなり、かなり力を入れて弾いている…はず。ブロークンオクターヴについてはこちらの拙記事を。↓





posted by Curragh at 03:32| Comment(0) | TrackBack(1) | Articles from NYTimes
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