2009年10月25日

日本丸と海王丸

 先週末、日本最大級の帆船「日本丸」と姉妹船の「海王丸」が清水港に同時入港した、と聞いて、頭の疲れる本を読んだせい(?)か、だるいしカッタルイ(静岡地方の方言です)けれども帆船好きとしてはやっぱり行くか! と気合い(?)で見に行ってきました。

 当日はいわゆるピーカンでして、ちょこんと冠雪した富士山まで見えるという絶好の写真日和。凪もよくて、まさに理想的な撮影条件。この日は「日本丸」で乗船見学、正午過ぎから「海王丸」でセイルドリル。こういうぜいたくが楽しめるのも二隻同時入港ならでは。

 「海王丸」は2004年10月に襲来した台風で被災して、無残にも防潮堤に打ちつけられるショッキングな映像を見たことがどうしても思い出されます。1996年に清水港に来てくれたときは、自分もこの練習帆船を見学しているので、あんな大きな帆船がまるで木の葉のようになすすべもなく大波に翻弄されている姿を見たときはなんとも言えない気分になった。でもきれいに修繕されて、ふたたび「海の貴婦人」にふさわしい威容を取りもどしました。いま、こうして目の前にたたずむ帆船を見ますと、船体の塗装とかつやつやしていて、「日本丸」にくらべてあきらかにあたらしい感じがします。

 で、しばし並んでアルコールで消毒(苦笑)して「日本丸」乗船とあいなったわけですが、「海王丸」のときは中の食堂とかも見せてくれたけれども、今回はデッキのみ。とはいえデッキ上では若い実習生の方々がふだん「おか」ではけっしてできないような体験を見学者にさせてくれていたのはとてもよかった。たとえばロープの結び方。「もやい結び(bowline knot)」くらいならなんとかできるけれども、ほかはさっぱり。みなさん実習生から手ほどきを受けて、がんばって挑戦されてました。またいろいろな結び方(clove hitchとか)なんかも展示されてまして、こっちのほうがはるかにおもしろかった。ロープで「とんぼ」なんか作れるんですねぇ、びっくり! また実習生さんたちは「ヤシの実」たわし(!)でデッキをごしごし磨く作業なんかも実演して見せてくれたり、子どもたちに教えたりしてました…これで「海王丸」につづいて「日本丸」にも乗船できたわけで、二大帆船はいちおう制覇、ってとこかな(二隻とも「四檣バーク型帆船」というタイプ→帆船用語について。ついでにハワイ沖の「太平洋ごみベルト水域」を調査している「海星」は、横帆マストと縦帆マストがそれぞれ一本ずつのブリガンティン型)。

 午後の「海王丸」のセイルドリルも見ごたえがありました。なにしろ俗にtall shipと言うくらいですから、てっぺんに近い「帆桁(ヤード yard、ちなみにこの手の帆船は『横帆船 square-rigged vessel』という)」までは海上からなんと40m近くもあるのですから。うっかり足をすべらせたりしたらそれこそ一大事。実習生は全員、裸足で横静索(shroud)に張られた縄梯子(ratline)をきびきびと登り、各自担当するヤードの「足場索(footrope)」を移動してヤードに取りつきます(このときもちろんセーフティ・ハーネスをヤードのロープに引っ掛けます)。各横帆はヤードに「帆縛り索(gaskets)」でくくりつけられて畳まれているので、それを解いてゆくのですが、最上部もしくはその下の「アッパートップスル(セイル)」から順番にセイルを解くみたいです。…教官による解説つきで見ていて飽きないけれども、帆船にまるで興味なし(?)の小さい子には少々退屈だったかもしれない。波止場は夏みたいに暑いし、なかにはぐったりして寝ている子とかもいました。この日は北東方向から風が吹いていたので、風をはらまないようにヤードの向きを「転桁索(brace)」でえんやこらと変えていたから、すべて展帆するまでによけいに時間がかかっていたようです(→横帆船特有の用語についてはこちらを)。

 いちばん船尾側のマストに張られた一枚の「縦帆」。これスパンカーと言うのですが、西伊豆にかぎらず、小型漁船にもふつうに取りつけられている帆だったりする。目的はおもに風に流されないようにするため。またこの手の帆船にはたいてい船首像(figurehead)というものがくっついていて、「海王丸」は横笛を吹く「紺青」、「日本丸」のほうは手を合わせて祈る「藍青」です。

 …それにしてもすごい人だかりで、暑いし、「日の出埠頭」は駅から遠いし、帰りの電車は混んでるわで、やっぱり疲れた(笑)。

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