いま図書館から借りている2枚のCD。もう返さないといけないから、ちょこっとメモっておきます。
一枚は巨匠レオンハルトの演奏したヘンリー・パーセルとその師匠ジョン・ブロウの鍵盤作品集。とくにパーセルのほうは400以上と言われる全作品のうち、オルガン曲はほんのひとにぎりしか現存していない。これはライナーにもあるように、王政復古期の国教会における典礼では大陸、たとえばドイツやネーデルラントほどにはオルガンは活躍しなかったことがあるように思う。オルガンが活躍するのはせいぜい詩編唱やヴァース・アンセム(フル・アンセムというのは基本的にア・カペラ)の伴奏、最後のオルガン・ヴォランタリーくらいだったから(いまも基本的には変わっていない)。またパーセル作と言われているオルガン曲にも偽作の疑いのあるものもあり、以前ここにも書いたけれどもじつはジェレマイヤ・クラークの作品だった、という場合もある。レオンハルトの盤でもそのような疑いのある作品が収録されていたけれども、それでもすこぶる新鮮で、おもしろい。師匠ブロウのオルガン曲というのもめったに耳にすることなんてないから、こういう組み合わせのディスクが図書館にあったことじたいがたいへんラッキーなことだったかもしれない(ちなみにこの図書館はほかにも掘り出し物のたぐいが多い。先日借りた東京カテドラル聖マリア大聖堂の伊マショーニ社のオルガンのDVDビデオとかもそう)。なかでもブロウの「ヴォランタリー ニ短調」はなんだかおなじ調で書かれたバッハの(作と言われる)有名な「トッカータとフーガ」冒頭部のモルデントを思わせるような装飾つきの下行音型ではじまるなど、スリリングな展開。ただし弾いているのはパーセルたちが使っていたような英国の二段手鍵盤の楽器、「ダブル・オルガン(チェア・オルガンもしくは訛ってクワイヤ・オルガンともいう)」ではなくて、オランダの教会堂に備わっているでかいオルガン(笑)。だからか(?)、パーセルとブロウの時代にはなかったはずの足鍵盤パートがところどころ出てきたりします(英国のオルガンに足鍵盤が備えられるようになったのは18世紀以降のこと)。
オルガン曲のほかにハープシコード作品もいくつか収録されていますが、ライナーで目を惹いたのはパーセル作曲の「全音階によるグラウンド」。なんとこれ、バッハが「ゴルトベルク BWV.988」で使ったのとおんなじ通奏低音にもとづいて展開されているんだとか。1693年にパーセル自身の歌劇「年老いし独身者」から取られたものとも書いてあった。とにかくこれはひじょうに興味深い。バッハはこの作品の筆写譜をもっていたということなのだろうか? また「あたらしいアイルランドの調べ」なる小品はライナーにもあったけれども、たしかにモーツァルトっぽいところがありますね。パーセルの作風はたしかに斬新なところがある。時代を先取りしているというか。それにしても36歳で亡くなっているんですよね…師匠よりも早く。死因はよくわかってないらしい。
もう一枚のほうは日本を代表するオルガニストのおひとり、椎名雄一郎さんがあの聖トーマス教会の「バッハ・オルガン」を弾いた録音盤。こっちも負けず劣らずいいんですよねぇ…バッハとメンデルスゾーンというある意味すばらしいカップリング。メンデルスゾーンもパーセルも今年が記念イヤー(昨年は師匠のブロウがそうだった)ですが、メンデルスゾーンのオルガン曲はけっして有名ではないけれども、どれも味わい深いものばかり。たとえばディスクにも収録されている「オルガンソナタ 第6番」。コラール「天にましますわれらの父よ」にもとづいて展開される一種の変奏曲になってまして、最後の静かに曲を閉じるあたりは作曲者自身の祈りというか瞑想といった感じで、聴いているほうも心洗われる思いがします。トーマス教会のこの新オルガンは2000年のバッハ没後250年を記念して建造されたもので、バッハが理想としていた音響を再現した楽器なんだとか。とにかくこの2枚のディスクは個人的にかなりおすすめです。
…と椎名さん関連でクグっていたら、えッ、あのカザルスホールが閉鎖?! ってそれいったいどういうこと???
2009年10月31日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/33303864
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
http://blog.sakura.ne.jp/tb/33303864
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。
この記事へのトラックバック
