2009年11月08日

「大聖堂の雀たち」にコープマン

1). 先日の「芸術劇場」は、ひさしぶり! にオルガンリサイタル、それもあのトン・コープマン! とあっては、見ないわけにはいかない(笑)。その前に放映していた、ズビン・メータ指揮ウィーンフィルによるベートーヴェン「7番」ほかもすばらしかった。「7番」は全体的にテンポが気持ちちょっと速いかなとも感じたけれども、若い指揮者のように勢いに乗って突っ走る心配もなくて、聴いていて気持ちのいい快演でした。さすがは名門ウィーンフィル。SS席(?)なんか、さぞかし高かったんだろうな…でもテジタルハイヴィジョン対応受像機に買い換えたせいか、音楽番組はほんとすごい臨場感です。まるで会場にいるみたいだ。いままで見ていたのはいったいなんだったのだろうと…。写真で言えば、「'写るんです'からいきなり4x5インチの大判フィルムに切り替わった」ような、そんな感じです。

 で、つぎのコープマン。昨年9月の来日公演からでして、楽器は東京オペラシテイ・コンサートホールの大オルガン(大阪ザ・シンフォニーホールとおんなじスイス・クーン社の楽器)。この人の演奏の最大の特徴は、「弾いているのはオルガンなんだけどチェンバロみたいに弾く」こと。なのでチェンバロっぽい語法(奏法)が随所に出てきて、聴いていて理屈ぬきに楽しい。装飾音も、ほかの奏者とくらべてひじょうに多いですし。見入っているうちに、2005年11月の静岡音楽館AOIでのオルガン・チェンバロコンサートのこととか思い出してしまった(そういえばあのとき、ティニ・マトー女史との二重奏で「フーガの技法」から数曲、弾いてくれましたっけね)。コープマンは巨匠レオンハルトの弟子のひとりでもありますが、その派手な演奏スタイルはおなじオランダ人の師匠とはまるでちがう。だからなのだろう、若いときにヘルムート・ヴァルヒャの後任として独アルヒーフレーベルからバッハのオルガン作品全集を出すはずだったのが、あまりの新奇さ(?)に保守的なアルヒーフ側が難色をしめしてあえなくお蔵入りになってしまったという話もあるくらい。

 若いときの録音にくらべていまのコープマンはゆるぎない演奏様式を確立して、親しみやすさとともに堂々たる風格も感じられます。親しみやすい演奏とくると、たとえばサイモン・プレストンなんかもそうですね。でもいかにも英国人らしく几帳面さが前面に出ていて、少々のミスも気にしない(?)コープマンとはやっぱり「親しみやすさ」の中身がちがう。レジストレーションも奇をてらったところがなく、各旋律線をくっきり際立たせることに重点が置かれていることがよくわかります。

 「チェンバロのように弾く」コープマンの演奏スタイルは、プログラムにもあった北ドイツオルガン楽派の雄、ブクステフーデとかがぴったりです。そしてこの人の弾く「小フーガ BWV.578」はたぶん最速(笑)。3分くらいで弾き終わってしまうので、カップ麺のあたため時間として使うとちょうどいい(冗談です、もちろん)。でもページには「バッハを中心に…」とあったけれども、ブクステフーデのほかにはクープランの「修道院ミサ」とかあったし、バッハ作品はたったの二曲しかなかった(「小フーガ」と詩人中原中也が大好きだったという「パッサカリア ハ短調 BWV.582」)。

2). けさの地元紙朝刊の教育欄に、あの郎朗がなんと子どもたち相手にピアノレッスン! をしたという話が掲載されていて、ちょっと驚いた。でも記事を読んで納得。郎朗自身も、――重複失礼――「トムとジェリー」の「ピアノコンサート」でトムがリストの「ハンガリー狂詩曲 第2番」を鮮やかに(?)弾きこなすのを幼少時に見たことが、ピアノへの憧れをもつきっかけだったというくらいですから、「子どものときの音楽体験」をとくに重要視しているらしい。そんな彼なので、このような企画もたしかにうなずけるお話ではあります。また彼はこうも言ってました。「親の強制はダメだ」と。「親の期待でピアノが強制されているとしたら、それは音楽教育ではありません。心からピアノが好き、だから楽しみながら演奏できるという純粋な気持ちを持たせることが大切です」。今後は小中学校にも出張する計画だとか。おおいに楽しみですね(→主催者サイト)。

3). 「世界ふれあい街歩き」という番組。これけっこう好きなんです。こういう番組が作れるのがNHKのいいところ。もっとも放送じたいは終わっていて、再放送なんですが、たまたま見た南独の古都「レーゲンスブルク」の回。期待はしてなかったけれどもなんと、あの「レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊」のめんめんも登場! これはちょっと驚いた。彼らの通う学校(ギムナジウム)も紹介されてました。たしか本放送のときにも途中から見たおぼえがあるけれども、彼らについは記憶がトンでいるから、登場場面のあとから見たんだろう。2004年夏に来日したときにアルトパートを歌っていた子だと思うけれども、「トップの雀たち(聖歌隊の少年たちは、Domspatzen=「大聖堂の雀たち」という愛称で呼ばれている)」として練習のこと、みんなと歌うことが好きでなければならないこととか、ほかのひとりとともに聖歌隊活動についてしゃべってました(当然のことながら、背丈はずいぶん伸びていて、体つきもたくましくなっている)。紹介していた子はソプラノパートのオスカルくんという年少隊員さん。最後のほうで彼も練習に加わって歌ってましたが、とてもさわやかな、「雀のさえずり」にも似たソプラノヴォイスでした。「ぼくたちは毎週日曜日に歌ってますから、ぜひミサに参加してください!」とアピール。また「大聖堂の雀たち」はWSK同様、二種類の楽器演奏ができるようになることが必須事項のようです。

 余談ながら、レーゲンスブルクも昨今の日本同様、ゴミ問題とか治安の問題とかいろいろと抱えているようです。ゴミ問題では、番組でも登場していた「インディアン」なる渾名の男性。この方、旧市街外れにあるゴミ捨て場だったところを、なんとたったひとりで緑あふれる菜園に変えてしまったというすごい方。「市当局は見て見ぬふりさ」と見物人のひとりが言っていたように、いまやこの人は市民にとっては英雄的存在になっているらしい。と、ここでつまらない疑問が…この人、どうやって生活しているのかな? 番組で見たように、採れたての新鮮な野菜と引き換えに、応援してくれるみんなから入り用のものを「物々交換」してもらって生活してるのかな? 畑の脇にはテントみたいなものもあったし…でもこういうやりとりってすばらしい。子どもたちにも人気があるみたいだし、金がすべてみたいないまの世の中、こういう大人がひとりくらいいてもよいと思う。

 また大聖堂聖歌隊がらみではさるOBが、聖歌隊の送迎用の車が盗まれたとかこぼしていたのを以前、Almost Angelsというサイトにて読んだことがある。欧州の失業率もひどいし、いまも治安状況はけっしてよくはないだろう(番組でもそこここに落書きが写っていた。でも旧市街地区は世界遺産に指定されているから、車の乗り入れができないのかもしれない。通行車両をまったくといっていいほど見かけなかったので。すくなくともこれはいいことだと思う)。

 …「バロックの森」、今週はバッハ尽くしでしたが、来週のテーマは「追悼のための音楽」。しんみりしそうだ…。

posted by Curragh at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
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