2007年02月18日

今週も盛りだくさん

 まずは「バロックの森」。木曜の朝がとくにおもしろかった。「現代の演奏家によるバロック音楽の編曲の試み」と題して、バッハ、ブクステフーデ、フォルクレの鍵盤作品を編曲で聴くという趣向。バッハのBWV.529オルガン独奏用トリオ・ソナタを ―― 本来の形?―― 弦楽合奏( と通奏低音 )で、というのはわりとよく聴くたぐいでしたが、つづく「4つのデュエット」のうち2曲( BWV. 803 − 4 )の弦楽合奏盤というのははじめて聴きました…バッハが 1739 年に出版した「クラヴィーア練習曲集第3巻(俗に言うドイツ・オルガン・ミサ)」にこの長大かつ難解な2声部作品が4つ収められているのですが、弦楽合奏による編曲版を聴いてみますと、模倣しあう各声部の絡みあいがひじょうに明瞭に響いて、なんかべつの曲みたいで新鮮な響きがとても印象的でした。バッハはいままでそれこそいろいろな編曲ものが出ていますが、いずれの場合でもバッハの原曲のもつ無限大の可能性を感じさせて、あらたなバッハの魅力に気づかせてくれます。

 でもなんといっても「おおッ!」と感じたのはブクステフーデのほう。オルガン用変奏曲として作曲された「パッサカリア ニ短調 BuxWV.161」と「シャコンヌ ホ短調 BuxWV.160 」のふたつ。弦楽合奏編曲で聴くと … なんか北ドイツの巨匠の作品というよりヴェネツィア楽派のヴィヴァルディのコンチェルト・グロッソみたいにも聴こえてすこぶるおもしろい! 設定テンポがかなりせっかちだったというのもあるかもしれないけれど … 。このふたつの変奏曲はけっこう好きでよく聴いていますが、耳になじんだ曲がまるでちがった、未知の作品のように聴こえるのも編曲もののもつ魅力ですね。ただたんに飽きっぽい性格という、ただそれだけだのことかもしれないが…それでも自分としては、「原曲を壊さず、生かす方向ならば」という条件つきでありとあらゆる編曲ヴァージョンがあっていいと思うし、そうすることによって ―― 「のだめ」じゃないけれど ―― いままで幸か不幸か、この手の音楽ジャンルにまったく関心のなかった聴き手をも引き込む力になればそれこそいいことづくめです。

 英語では「演奏( 作品解釈 )」も「翻訳」もともに interpretation とか、rendition とか共通の言い方が存在して、翻訳という行為を音楽の演奏になぞらえる比喩もよく見かけますが、個人的には時間制約のある、一発芸的な舞台芸術である「作品演奏」ではなくて、むしろ「編曲」という行為こそ「音楽における翻訳」に当てはまると思う。たとえば ―― きのうも教育TVでそれっぽい企画を放映していたような ――『星の王子さま』の邦訳本。いままで岩波書店が握っていた翻訳版権が期限切れとなってからというもの、それこそ「新訳」のオンパレード状態の感あり。もちろん人の手から産み出される翻訳は ―― 機械翻訳ならいざ知らず ―― ひとつとしておんなじものはありません。この点、編曲とひじょうに似ています。「原曲を解釈→編曲」というのは、「原本を解釈→翻訳という行為」と同様、ひとつとしておんなじものはできませんし、それゆえあらたな発見があったり、また原曲(原典)のもつ魅力が再発見されたりするからです。音楽だったら、たとえば「展覧会の絵」なんかがそう。もっとも「原作曲者(原著者)が言ってないことをさも言ったように編曲(翻訳)する」のはむろん原則的にはご法度です…とはいえ現実にはなかなかこのへんの線引きはむずかしくて、ややこしい。固有名詞の表記ひとつとっても、いまさら「ヴィーン」とか「ニューズ」とか[ 自分だったら ]書かないですし( 日本が自国語発音方式にこだわっているという理由もありますが )。また音楽における編曲以上に、翻訳では「言語文化と歴史のちがいから生じる障壁」が立ちはだかって、「頭ではわかってはいるけれどもけっきょく原作がほんとうに言わんとしているところを的確に再現できない」ディレンマに陥ることもしばしば。「翻訳者は裏切り者( Traduttore, traditore )」という有名な警句のとおりです … 。その点、音楽のほうがまだ「普遍言語」ゆえにもっと大胆に、自由にできるのではないかなと思っています。

 おなじ日の「ベスト・オヴ・クラシック」。アンドレアス・シュタイアーのフォルテピアノ・リサイタルの再放送でした…たしかこれ「芸術劇場」でも放映していたと思いますが、いま一度聴いてみますと…なんかやや調子はずれなスクウェアピアノみたい( 失礼!)…でも現代ピアノのようなダンパーペダルとかはいっさいないので、表現はすべて両手のみ。このへん奏法はまるでちがうけれどもどことなく先輩のチェンバロにも似ています…音色もまだ「チェンバロ色」がぬけていませんし。有名な「トルコ行進曲」では強弱の対比がひじょうに強調されていたようにも感じましたが、これくらいメリハリがあったほうがちょうどいいのか、それともこれが演奏者の考える最良な「歴史奏法」なのかと聴きながら思いました。

 あ、そういえば BBC Radio3 の Choral Evensong は今日から日曜放送に変更されましたね( 2月から放送日時が変更になることはたしか前にも書いたような…もうすでに記憶があやふや )。それと、いまさっきVoAの英国人メンバーの投稿を見たら、The Choirboysのベン・インマンくんのいるサズル ミンスターのビデオがYou Tubeにアップされているとの情報が。そしてこれ、いわゆる「違法ファイル」ではなくて、「宣伝活動」のためのプロモーションビデオなので、聖堂側が You Tube を利用して「新人募集」をかけているととらえたほうがいいのかもしれません。じっさい見てみると、アレッドは出てくるし、なんと Choral Evensong の生中継のもようまで収録されている! …なるほど、こうやって毎週、生中継しているのか…。

 クリップ後半に見えたラジオ。'BBC Digital Radio' と書いてあるので、いま話題の「デジタル FM 放送」かな? さすがこういう点では英国のほうが進んでいるかもしれない。

posted by Curragh at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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