1). 今週の「バロックの森」は「舞曲特集」。中南米起源とも言われるシャコンヌ、シャコンヌとしばしば区別のつかないパッサカリア(passacaglia, 原意は「通りで踏むステップ」、すなわち「通りで踊るダンス」)、サラバンド、アルマンド、フォリアが取り上げられました。で、シャコンヌの起源…についてはやはり以前、この番組にて中南米だと教わりましたが、じつは! サラバンドもそうだという。なんでも中南米のスペイン植民地で人気があった踊りだったんだとか。シャコンヌといっしょに欧州へ入ってきたのかな? サラバンドという形式はすでに15世紀にはあったらしいから歴史はけっこう古い。で、サラバンド形式ないしはそれっぽい様式で書かれた楽曲は数あれど、個人的にはやっぱり「ゴルトベルク」のあの美しい主題が頭の中で鳴り響く。アルマンド allemandeは「ドイツふうの」という仏語から、フォリア fol(l)iaは以前ここに書いたから今日は省略(笑)。
で、その「ゴルトベルク」なんですが…きのうの「リクエスト」にてかかった、ブクステフーデの「カプリッチョーサ BuxWV250」というチェンバロ変奏曲。なんとなんとこの作品――主題かな? ――が、バッハのあの「ゴルトベルク」第30変奏に引用されているという!! ちょっと待った(ヒゲじい風に)、30変奏ってたしか「キャベツとかぶらがどうした…」とかいう「クォドリベット」の引用じゃなかったっけ? 松田アナがそう言っていたから、たぶんそうなんだろう…でも気になる、と思ってたまにはいつも利用している隣町の図書館じゃなくて自分の町の図書館にひさびさに行って、『バッハ事典』を見ようとしたらだれかさんが借りているらしくて見当たらず。orz …検索画面では「禁帯出」扱いのはずが、どうもこれ借りられるらしい…これだからなあ。まったくもっていいかげん。いつもの図書館に行けばよかったかも。
あいにくハイポジテープを切らしていて、しかたないから耳を皿のようにして聴いていたのですが、ブクステフーデのこの変奏曲、たしかに30を越える変奏の規模といい、「ゴルトベルク」にけっこう似ています。ほんとにこれバッハの「ゴルトベルク」の着想源のひとつだったんだろうか? ググってもあんまり出てこないけれども…。要出典ってとこかな。
2). 音楽とまるで関係ないけれども、今年もまたこの時期がめぐってきました…とりあえず今年のBeaujolais Primeur の出来は100年に一度の当たり年と言われた2003年なみとか(2003年の欧州は熱波に襲われた年でもありました)。で、さっそくデュブッフおじさんのSélection Plusの大瓶と、となりにちょこんと並んでいた「お試しサイズ」と書かれた250ml入りのかわいい瓶入り「ヴィラージュ・ヌーヴォー」もついでに買ってみました(コート・ドールの老舗ネゴシアンPatriacheのもの)…とり急ぎこの小瓶のほうで今年の出来を確認しようかな、と思ったもので。「お試し」とはいえ、グラスに注いだら芳醇な香りが立ち上りまして、味もけっこうしっかりしているし、これは大瓶のほうも楽しみです。
…ボジョレの新酒はフランス本国では1000円くらいで買えるらしいけれども、デュブッフさんの(ふつうのBeaujolais Nouveau)は定価が酒税込みで2180円だったかな、毎年おんなじ値段。ときおりディスカウントの酒屋で2000円以下で売られているのを見たこともあるけれど、なんだかんだ言っても高いですね。自分はいつもデュブッフさんの高いSélection Plusとか「ヴィノスやまざき」特製のシャテルスさんとこの蔵元直送ヌーヴォーとかを4本くらい買うと万札飛びますし(笑)。でもだからといって、どっかのスーパーが売り出している「低価格」なボジョレ・ヌーヴォーはいただけない。…なんとペットボトル入り! 旬のもの、走りのもの、新鮮なヌーヴォーをペットボトル入りで売るなんて、よくフランス本国の人は怒らなかったな、と思ったら、やっぱり怒ってました(苦笑)。いくら新酒とはいえ、ジュースじゃなくてれっきとしたAOCワインなんだし、そりゃないでしよ、と思っていたので、お怒りはもっともだと思う(ちなみに静岡の人なので、ペットボトル入りのお茶も嫌い)。
追記。きのうボジョレの新酒が回った状態で見た「ピアニストの贈り物/辻井伸行・コンクール20日間の記録」。国際的に名高いピアノコンクールの舞台裏をぞんぶんに紹介していて、ドキュメンタリーとしても秀逸な番組でした。でも室内楽との共演とか(しかもあのタカーチ!!)、あらためてこのコンクールがありとあらゆるシチュエーションを設定して新進ピアニストの技量を見てやろう、という趣旨のコンペだと知ってそっちのほうも驚いた(こんなハードなピアノコンってあんまりない気がする)。聴衆のひとりも似たようなこと言っていたけれども、辻井さんの演奏のいいところは奇をてらわないこと。技巧に走るのではなく、ピアノから紡ぎ出されるのはまさしく作品そのもの、音楽そのもの。演奏という介在物をいっさい感じさせない。こういう言い方はよくないとは思うけれども、やはりこれは目の見えない演奏家ならではの、まさに天から賜った贈り物のように思う。ヴァルヒャだってそうですし。はじめてあのバッハ演奏を聴いたときの衝撃はいまだに忘れられない。辻井さんの演奏を聴いても、おんなじ感動をおぼえる。コンクールで弾いた「難曲」ぞろいももちろんすばらしいけれども、いちばん感動したのはホストファミリーに感謝をこめて演奏した、辻井さん自作の曲。たしか「波」をテーマにした小品だったと思うけれども、とにかくあの作品はすばらしい。辻井さんの録音盤にも収録されていればいいけれど…(付記。調べたら、収録されているみたいです。波ではなくて、神田川のせせらぎを表現したという「川のささやき」でした)。
2009年11月22日
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記事、おもしろく拝見しました。
さて、
ブクステフーデの「カプリッチョーサ BuxWV250」というチェンバロ変奏曲。なんとなんとこの作品――主題かな? ――が、バッハのあの「ゴルトベルク」第30変奏に引用されている
という件ですが、東京書籍の『バッハ事典』には、ブクステフーデの「ブ」の字もありません。主題に関して要約すると、
主題は、妻マグダレーナのための小曲集第2巻に妻の筆跡で記入された、フランス風サラバンド舞曲で、作曲者がバッハだという確証はない。
というものです。また、第30変奏については(こちらも要約)、
「ごった煮の野菜がおいらを家から追い出した」と「おいらは久しくお前に会わぬ」の民謡を同時に進行させる形式。
というぐらいです。
ところで、前々から思っていたのですが、「ごった煮の野菜がおいらを家から追い出した」の旋律は、ベルガマスカBergamascaとそっくりさんですよね。つまりBuxWV250ともそっくりさん。ベルガマスカによるもっとも有名な曲は、レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」の第2組曲の「ベルガマスカ」ですが、わたしのよくきく、フレスコバルディ、ウッチェリーニ、ロッシ、カプスベルガーといった初期のバロックの音楽家にも、多数のベルガマスカがあります(シェークスピアにも)。ブクステフーデのBuxWV250も、ベルガマスカによる変奏曲といえるかもしれず、じっさい、グレン・ウィルソンのNAXOS盤では、La Capricciosa (32 Variations on the “Bergamasca”)と題されています。バッハの引用は、ブクステフーデからなのか、親族との体験からなのか、さてどうなのでしょうね。
ちなみに、アントネッロのメンバーである西山まりえさんは、「ゴルトベルク」主題そのものがベルガマスカの変形だとして、その興味深い仮説を音にしています。アリアは、YouTubeできくことができます。
西山まりえ ゴルトベルク変奏曲 Promotional Video
http://www.youtube.com/watch?v=86-PeZhHiLk
ええ〜っ、そうなんですか! そう言われてみればたしかにみんな似ているかな…とおぼろげな記憶をたぐりよせています。
西山まりえさんの「仮説」もはじめて知りました。
ふたつの「クォドリベット」のうちひとつが究極的にはベルガマスカの旋律らしいというのはおおいに興味を掻き立てられました。…情報提供、ありがとうございます(『バッハ事典』の記述もどうもです)。またフレスコバルディなど初期バロックの作曲家に多数の作例があるということからして、バッハも知っていたことはじゅうぶん考えられますね。シェイクスピアですが、英語版Wikipediaを見たらどうも『真夏の夜の夢』に出てくるらしいですね。ベルガマスカは、「スペインのフォリア」のようにけっこう有名だったのでしょうか。
…西山さんの演奏についてのコメントも「速すぎる!」なんてのがあっておもしろかったです(あれで速すぎるのなら、曽根麻矢子さんの演奏なんか新幹線級ですな)。ルバートやアゴーギクについては…好みの問題もあるかと思いますし、微妙ですね。
シェークスピアではお調べのとおりで、以下で試聴可。「ベルガマスカ」など、劇中に挿入されたさまざまな音楽をきくことができます。
シェイクスピアからの歌曲と舞曲
http://ml.naxos.jp/album/CDSDL409