2009年12月06日

最古の外洋航海型木造船? 

1). 昨夜放映のこちらの番組。ハトシェプスト女王にまつわるお話で、ひじょうにおもしろかった。へぇ、あの有名な「葬祭殿」の内部には女王のおこなったとされるプント交易のようすがことこまかに描写されている壁画なんてあったんだ! …だいたいここの葬祭殿って外側から撮影したカットしか見たことがなかったので、ここまでこまかく内部を紹介してくれるとありがたい。でもなんといっても驚いたのは、その交易で使った船。壁画に描かれたその交易船は、なんと現物を正確に模写したものだったらしい。しかもシナイ半島の紅海沿岸部で、その当時の木造船らしいイトスギの木材とロープが2006年に発見されていたという!! でももっと驚いたのは、すでにその交易船のレプリカまで建造し、それで実験航海までおこなっていたこと。もうびっくりですよ。…これってもとの記録ビデオの出所はどこなんだろ…National Geographic?? エジプト考古最高評議会?? とにかく復元船建造の過程や、実験航海のもようを目の当たりにできて、個人的にはおおいに満足でした(ゲストの吉村先生も言っていたけれどもこういうのを「実験考古学」という)。

 …外洋航海型の船にもいろいろありますが、記録に残っている木造船としてはフェニキア船団の使った船とならんで、世界最古のものかもしれない。もっとも2007年に見に行った「ホクレア」とか、復元カラフの「ブレンダン」とかのほうがはるかに古いけれども…そうはいってもこの復元された古代木造船、なんというすばらしい職人芸の極致なんだろうか。手斧(番組では「ておの」と言っていたけれど、「ちょうな」と読んだほうがいいように思う)で木のブロックを削りだし、それらをジグソーパズルのごとく一片一片、はめあわせてゆく。釘とかは使わず、「ほぞ」で連結。みごとな職人技でできあがった船体は、じつに美しい曲線を描いてました(アラブの伝統帆船「ダウ」もかっこいいけれども、こちらの復元船のもつ曲線美にはかなわない)。昔の人の技術ってやっぱりすごい。番組では「両舷にそなえられた舵」について解説があったが、「船尾真ん中」にそなえつけられた舵というのは古代中国人の発明だったらしい(つまり西洋の古代船にはなかった。舵はふつう左舷側にあった)。

 現代の木造船とはまるでちがう工法で建造されたこの復元船、進水式では進水ならぬ浸水で水浸し。これで木材を膨張させて隙間をふさぐ…はずだったのですがあにはからんや排水後ふたたび「浸水」して沈没寸前。…ここのところ見ていて思ったのは、なんらかのコーキング材を塗りたくらないとだめなんじゃないの、ということ。現代の船大工たちは、綿だったかな、植物の繊維を隙間に詰めてました。さらに「蜜蝋(bees wax)」を塗りたくっていました。なるほど、蜜蝋ですか! ちなみに『聖ブレンダンの航海』第4章に書かれた革舟カラフの建造のくだりには、「動物の脂」を船体の外側の革の継ぎ目すべてに塗ったとあります。セヴェリンの復元船は、羊毛脂(wool grease)を船体全体に塗って防水処理してました。蜜蝋も防水効果はたしかにありますね(でも蟻がたかりそうな気もするけれど…)。

 そんなこんなでようやく水に浮くようになった復元船ですが、紅海を300km(150海里くらい)も南下するという再現航海のようすもまたすごかった。航海に乗り出したばかりの映像を見てまず感じたのは、「船体にたいしてヤードが長すぎるんじゃないか」ということ。時化になったらバランスを崩してコケないかしら、なんて思っていたらやっぱり。やがて強風と高波にあおられて長すぎるヤードがぶらんぶらんしはじめ、復元船は危なっかしげにかしいだりした。乗組員が四苦八苦しているうちに、ヤードの一部(?)の木材が破損したり。小ぶりのセイルに張りなおして、ようやく急場をしのぎ、ぶじ目的地に到着。…いま、この復元船はどこにあるのかな? 見た目もとてもカッコいい船でしたが、あの横揺れはすごいですね。船には強いほうだけど、一発で船酔いしそうだ(苦笑)。

2). そういえばその前、NHKラジオ第一の「かんさい土曜ほっとタイム」を聴いていたら、突然、バッハの「小フーガ」が鳴り響いた…??? と思っていたら、なんと、滋賀県のアンティーク家具屋さんがひとりでこさえたオルガンの音色だという! こっちも仰天。なんでも英国にアンティーク家具を買い付けに行ったら、たまたまとある教会が解体されているところを見て、古いオルガンのパイプとかが野ざらしにされていたという。「もったいない」と思い、日本まで持って帰り、独学でオルガン建造をはじめたというからもう頭が下がります。もっともご本人が言われるように、いまはインターネットという強い見方があるから、おおいに活用したといいます。そういえば「送風機」として掃除機(!)を使っているのだとか(あの排気風を利用しているのだそうです)。また送風機とふいごとは、洗濯機のホースでつないでいるらしい(how resourceful!)。

 お話もとてもおもしろかったのですが、印象的だったのは、「オルガンの肺」の話。「ふいご」というものがあるから、「手いっぱいにつかむ(ケラー)」分厚い和音を奏でてもオルガンは「息切れ」しないですむ。キャスターの方は「オルガンって息切れするんですか」と感心したように言ってましたが、オルガンは人間とおなじで呼吸をしている。いまは電動式送風機+風圧調節箱、昔は人力で動かすふいごですが、とにかくこのふいごがなければはじまらない。つねにふいごに一定量、空気を溜めていないとオルガンはすぐ息切れしてしまう。なのでバッハは新オルガン鑑定のさい、全ストップを出して弾きはじめ、こう言っていたという。「まずいい肺をもっているか調べないとね」。嶋村さんというこの家具屋さんがもっとも感心したのがこの「ふいご」だったといいます。なるほど! たしかにそのとおりですね。いくらパイプがよくったって、かんじんの「肺」がヤワければ、どうしようもない。

 それにしても英国では「教会の統廃合」が進んでいるとは…まるで小中高校の統廃合みたいな話だ。「教会に行く人が減っている」から、というのが理由らしいですが、どこもたいへんですね。とはいえオルガンのパイプというのは一から造ったら費用がバカにならないから、たいてい「再利用」されるものとばかり思ってました。でも嶋村さんの話を聞いていると、「使い捨て」にされるパイプも多いみたいですね。なんともったいない話。そういえば昔、やはり教会の古いオルガンからはずされた金属パイプをもったいないからといって日本に持ち帰った人がTV番組に出てましたっけ。…嶋村さんの造るオルガンは小型が中心で、安いものは5,60万円くらいから買えるそうですが、残念ながらうちにはそんなスペースさえもなし、せめて古い楽器から取り外したパイプを数本、ほしいと思う今日このごろ。

posted by Curragh at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・考古学
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