2009年12月21日

バッハの「パストラーレ」

 きのうの「バロックの森/リクエスト」では、栃木市在住の15歳のリスナーの方がバッハの「パストラーレ ヘ長調 BWV.590」をリクエストしてました。なんでも兄といっしょに毎朝、聴いているんだとか。「この番組を聴くと一日の元気が湧いてきます」と松田アナも心なしかうれしそうにお便りを読み上げてまして、クリスマス寒波に震え上がっていたこちらもなんだかほっこり、ぬくとく(=あたたかくなる)なりました…中学生にしてすでにバロック好きとは、おお同志よ! 、Man alive! とまたしても叫びたくなりました(←また意味もなくこわれた)。

 で、いまさっき見た「N響アワー」でも、西村朗先生がやはりこの「パストラーレ」についてしゃべってました(「今宵はカプリッチョ」コーナー)。「パストラーレ」は、ある意味この時期の音楽の定番でもある。バッハだけじゃなくて、コレッリの有名な「クリスマス協奏曲(先々週、かかってた)」とか、フレスコバルディやパスクィーニとかがオルガン独奏用として作曲していたりしますし、ヘンデルの「メサイア」にも出てきたりします。パストラーレは6/8、もしくは12/8拍子のゆったりとしたリズムが特徴の舞曲で書かれることが多くて、Pastoraleの名前どおり、「牧人」をイメージした作品。バッハのこのオルガン曲もおそらくヴァイマール時代のいわゆる「イタリア体験」の成果だと思われます(1710年ごろ)。構成は、名人バッハにしてはきわめて簡素な(?)足鍵盤つきの第一楽章以外はすべて手鍵盤のみなので、これならワタシにも弾けそう(?)な気がします…ただ、各楽章はレジストレーションで味付けしたいところなので、できれば本物のオルガンでと言いたいところですが…第二楽章なんか、ストップの組み合わせによっては完全に「口笛」になりますね。バッハにしてはこれまたたいへん調子のいい、親しみやすいメロディーラインです。

 …つぎにかかった「協奏曲 ニ短調 BWV.1052」は、「一台チェンバロのための協奏曲 BWV.1052」を現代ピアノに置き換えたもので、演奏はなんと! カツァリスでした。…この名手、いまだに1993年だったか、NHK教育にて放映された「ピアノレッスン」のイメージが鮮烈に残っているのですが、リストかショパンが専門のように思いこんでいた一聴き手としては、バッハもすごい! とベッドのなかでうなってしまった。とくに第三楽章でグリッサンド(?)みたいな箇所が何度も出てくるところ。グールドもこの協奏曲の録音を残しているのかどうか、寡聞にして知らないけれども、カツァリスのこの盤も快演だと思いますよ。お見事、という感じです。

 またけさの「リクエスト」では、バッハの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第5番 ヘ短調 BWV.1018」がかかってましたが、ラインハルト・ゲーベルとロバート・ヒルという組み合わせ、よく見かけますね(手許の「フーガの技法」とか)。これは手勢のMusica Antiqua Kölnつながりなんだろうか。シェリング&ヴァルヒャ盤しかもってないから、こちらの演奏にも清新な印象を受けました。

 最後にかかった次男C.P.E.バッハの「ソナチネ ニ長調 Wq.109」という作品は、すごく斬新な、ギャラントな作風でした。二台チェンバロと管弦楽という、協奏曲ふうの作品でしたが、これはやはり二台のフォルテピアノで弾くべき作品かもしれない。

 …そういえば先日、ここに疑問を呈した'O Little One Sweet'というのがほんとうにバッハの作品? なのかどうかについて。昨年買った、『CD付き クリスマス音楽ガイド』を繰りながら、著者川端先生のオルガン独奏のCDに耳を傾けていたら、あら、やっぱり出てきました! 本文(p.106)によると、なんとこれ、「作曲者は不明です」ですと! なんでもローマカトリックの聖体祝日用の歌だったらしい。1650年、シャイトがこれを四声のオルガン曲としてアレンジして、「ゲルリッツ・タブラチュア集(Das Görlitzer Tabulaturbuch)」に収録したのがプロテスタント側の最初の記録だという。

 …でもよくよく調べてみるとこの作品、ドイツ語タイトルの'O Jesulein süß, Jesulein mild'ではたしかにBWV.493として引っかかる。番号的に「シェメッリ歌曲集」のひとつだと思う。通奏低音だけとか、ほんのちょっとだけバッハが手を加えた、という可能性はあるけれども、おそらくは「だれかさんの作品」なんだろう。当時の流行り歌みたいなものですかね。前掲書には「シェメッリ歌曲集」のこともきちんと書かれていて、数曲はバッハの真作がふくまれ、「まぶねのかたえに」もバッハの数少ないドイツ語コラールの作例のひとつだとして挙げています(p.74-5)。ついでに脱線すると「クリスマスツリー」を飾る習慣はけっこう新しくて17世紀以降。ドイツなどプロテスタント諸国を中心に広まった。それまでのカトリック教会では、この時期の定番といえば断然「まぶね(仏語でcrècheと呼ばれるもの)」でした。「まぶね」とくると、'Away in a manger'も感動的な佳作ですね。個人的に大好きな曲です。前掲書にももちろん紹介されてまして、ひとつは『こどもさんびか』にも掲載されたわりと有名なヴァージョンと、いまひとつはジェイムズ・マレイという人の作曲によるヴァージョン。ビリー・ギルマンがかつて驚くほどの美声とテクニックで歌い上げていたアルバムClassic Christmasで歌っていたのは後者のほうで、米国ではこっちのほうが一般的らしい。

 …どうでもいいけどいま聴いているBBC Radio3のChoral Evensong…なんと、「リパブリック賛歌」ですね!! これが日本にくると教会で歌われるのではなくて、「権兵衛さんの赤ちゃんが風邪ひいた」になるところが、音楽のもつ力のすごいところというか、日本人の感性のすごいところと言ふべきか(似たような例ではたとえば「むすんでひらいて」)。

posted by Curragh at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | バッハのオルガン作品
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