2010年01月23日

どこでも風力発電にまつわる問題はあるものだ

1). まずはこちらから。米国東海岸マサチューセッツ州の景勝地ケープコッド沖に浮かぶナンタケット島。そのちょうど中間、ナンタケット海峡のほぼ中央の海上に巨大な風力発電用の風車を130基、建設する計画があるらしい。地元先住民のマシュピー・ワンパノアグ、アクィナー・ワンパノアグ部族が建設反対を表明していて、この二部族代表の要請を受けた国立公園局(NPS)が4日、「歴史登録財」の対象になったと発表したことで、計画はさらに遅れることになった、という。

 'Cape Wind'と名づけられたこの大型風力発電所計画、2001年に建設計画がもちあがった米国初の海上風力発電計画で、州知事も計画を積極的に後押し。風車の建設予定水域はなんとマンハッタン島がすっぽり入るほどの広さ。二部族のおもな反対理由は――「日の出を迎える儀式ができなくなる」こと。海上に風車が林立したら伝統儀式ができなくなって困る、先祖代々の埋葬地も汚される、あの海域には先祖の残した遺物も眠っている、と猛反対。国立公園局の決定は風力発電所計画じたいを頓挫させるものではないけれど、計画の変更もしくは「移転」ということもありうる、という。内務省長官が先住民代表と発電会社とのあいだで3月1日までに合意に達するようにとも言っているそうですが、それでもダメなら長官自身が「歴史的遺産の保存に関する諮問委員会」という第三者機関の意見を聞いたうえで判断するとか…それでも国立公園局の決定という追い風を受けた反対派側は訴訟を起こすかもしれない(反対派にはこういう団体もいる)。記事の書かれた時点でつぎの週に、内務省長官は反対派先住民代表と開発業者双方と直接会って話を聞く予定とも(じっさいに会ったかどうかは知りませんが)。ちなみに「頑強な」反対派のなかにはナンタケット海峡を見下ろす高台に家屋敷をもつ故ケネディ上院議員もいたという(ナンタケット島は超高級避暑地でもある)。

 じつは伊豆半島でもこの風力発電所建設が問題視されていて、たとえば東伊豆町奈良本の背後にそびえる尾根づたいに10基ある風力発電用風車の騒音問題があり、また石廊崎背後の山稜線沿いにも風力発電施設がすでに建設され、今年から運転を開始するということも聞いた。またいま調べてみたら西伊豆町安良里の背後にそびえる標高605mの大野山あたりも風力発電用風車の建設予定地に入っていて、びっくりした。当然、高規格道路の走る西天城高原にも同様の計画が…「風早峠」あたりだろうか。船原峠付近に建設計画があることは承知していたけれど、このせまい半島内でこれだけ風車建設計画があると、これではかえって自然環境にダメージをあたえかねない。かつてのゴルフ場とおんなじだ、という反対派の方の書かれた文章も読んだ。いまのところは「浮体式」と呼ばれる海上用の巨大風車の計画はないようですが、「クリーンエネルギー」という大義名分のもとならなにやってもいいわけではむろんない。あのばかでかいブレードの風切り騒音は深刻のようだし、東伊豆の発電施設であったように、勝手に自損事故を起こしたりして、運用効率的にも問題があるように感じる。こちらのNEDO報告書によると、洋上発電タイプは稼働していない時間、「ダウンタイム」が多いみたいです。

 自分はまだ石廊崎の施設を至近距離で見たことがないけれど、けっきょく問題なのは建設予定地の自然破壊と自然景観の破壊、そして周辺住民の健康被害に尽きるように思う。「バードストライク」など、野生動物にたいする影響もある。ナンタケット海峡の風車は高さ134mにもなる。これが130基も出現したら…事前の環境調査では自然環境にたいする影響は「わずか」だとして計画は推進されたという経緯があるようですが、ほんとに「わずか」なんだろうか。こんな超大型風車ではなくて、マッキベンが『ディープ・エコノミー』で書いていたように、各居住地区ごとに小型発電を設置させたほうが、メンテナンス面でも効率がいいんじゃないでしょうかね(国内の風力発電施設関連では、環境省が4月から低周波音による健康被害の実態調査にはじめて乗り出す予定で、東伊豆町の風力発電施設も調査対象になるという)。

2). 話変わりまして、みなさんは歩行中、ケータイをいじくってませんか? ワタシは――前にも書いたか――ケータイに夢中になっている女子高生の自転車にはねられそうになったことがありますが、こっちの事情もおんなじらしくて、こんな記事が目にとまった。このほどまとめられたオハイオ大学の調査によると、2008年だけで、携帯端末をいじりながら歩いていたことがもとで怪我をして救急にかつぎこまれた人がなんと1000人以上もいたという。この数字は前年度比で2倍、前年度はその前の年度とくらべて2倍近くて、ようするに2008年は2年前にくらべて4倍近い数の人が携帯端末が原因で事故にあっている(この手の調査ははじめて行われたという)。もっとも調査を指導した教授に言わせればこの数字は「氷山の一角」。たしかにコケたりぶつかったりすべったり転んだりしても、たいした怪我もない場合は多いですよね。車を運転しながら…はもちろんご法度ですが、歩いていてもやっぱり「注意散漫」になることが証明されたかたちです。

 また西ワシントン大学で心理学を教えるアイラ・ハイマン教授によると、画面を見てテキストを打ちこんで、ということをしなくても、ただ「通話」しているだけでも「目の前のものをちゃんと見ていない」、「非注意性盲目」という現象に陥るという。教授は学生のひとりに道化の格好をさせてキャンパスの中央広場で一輪車に乗ってもらったら、携帯で通話しながら通りがかった学生は、一輪車のクラウン学生を見ているにもかかわらず、それが脳に「認識」されることなく、文字どおり「右から左へ」抜けちゃっていて、クラウン学生を認識したのは25%にすぎないという。おなじ「会話」でもふたりで会話しながら歩いていた学生のほうが認識率は倍以上だったようなので、携帯電話での「会話」が脳にあたえる影響のほうが深刻だ、ということを暗示している。おなじ「ながら」なら、まだガムを噛み噛み、のほうが「繰り返しの行為ですっかり慣れ、無意識のうちに」できるからまだましだという。これにたいして携帯での通話のほうは、聞くことのみならず見ることにかかわる脳機能も使うから問題だ、ということらしい。米国ではこの手の事故、やはりiPhone発売後から急増しているみたい。ちなみに、

Cognitive psychologists, neurologists and other researchers are beginning to study the impact of constant multitasking, whether behind a desk or the wheel or on foot.

の下線部、behind the wheelというのは「ハンドル(steering wheel)をにぎって」、つまり「運転しながら」。

 カリフォルニア大学の神経科学者先生ももっともなことを言ってます。

“An animal would never walk into a pole,” he said, noting survival instincts would trump other priorities.

典型的な仮定法の文章ですが、たしかにそうだよね。

 …そういえばNYTって来年から有料化…するみたいですね。具体的にどうなるのかはよくわからんけれども(→国内関連記事)。

posted by Curragh at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/34909445
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック