2010年02月06日

アンタイとバッハのBWV.593

 「バロックの森」、チェンバロつながりではもうかなり前になりますがガルッピの「チェンバロのなぐさめ」から「ソナタ 第5番 変ロ長調」というのが印象的でしたが、先々週の月曜にかかったバッハのひじょうに有名な「半音階的幻想曲とフーガ ニ短調 BWV.903」もすばらしかった。演奏者はレオンハルトの弟子でもあるピエール・アンタイ。この人は自前の古楽アンサンブルで指揮もしてまして、昨年の――早いもんだ――LFJ音楽祭にて実演をはじめて聴ききました(バッハのカンタータ二曲)。小柄な体型に似合わずエネルギッシュな指揮が印象的でした。で、チェンバリストとしてのアンタイ来日公演のもようが1日の「ベスト・オヴ・クラシック」にて放送されまして、こちらも負けずおとらず秀逸。フレスコバルディ、フローベルガー、クープラン、ドメニコ・スカルラッティ…とどれもすばらしかったのですが、バッハの「イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV.807」も脂の乗り切った円熟の名演だったんじゃないでしょうか。プログラムもバランスがとれていたと思います。また録音もよかった。たいてい、チェンバロの実演を集音マイクでひろうとなんとも頼りない響きしか聴こえてこないんですが、今回は会場もよかった(?)のか、さほど音量をあげる必要もなくエアチェックできました。

 今週の「バロックの森」の月曜日の回ではボアモルティエの「カンタータ 冬」なんていうめずらしい曲が聴けてよかったけれども、「冬」とくれば本家(?)のヴィヴァルディの「冬(もち、「四季」の)」もかかりました。木曜朝にはブクステフーデの「テ・デウム」というオルガン作品もかかりまして、いかにも北ドイツオルガン楽派らしい、出だしからしてバリバリと豪壮に轟くコラール幻想曲ふうの作品でした。

 ブクステフーデとくると若きバッハの「リューベック詣で」がつとに有名ですが、バッハは北ドイツオルガン楽派のみならず、南欧の楽派、とくに当時の音楽の中心イタリアの、もっとも先進的だったヴェネツィア楽派からも多くを学んでいます。ちょうどそのころ、バッハの仕えていた領主の甥っ子、ヨハン・エルンスト公子が「教養旅行先の」オランダ・ユトレヒト大学から二年ぶりに帰ってきた――大量に買いこんだ楽譜とともに。そのなかには1711年にオランダで出版されたヴィヴァルディの「調和の霊感」もふくまれていた。またエルンスト公子(オランダに旅立ったときはまだ14歳!)はアムステルダム新教会の盲目のオルガニスト、デ-グラーフによる「妙技」にも強い感銘を受けていた。それは、イタリアふう協奏曲をひとりで弾いてのける、というものだった。というわけでエルンスト公子の命を受けたバッハはさっそく「合奏協奏曲」を「オルガン独奏用の協奏曲」へと編曲を開始する。ヴィヴァルディの「調和の霊感」からも編曲をおこない、こんにちBWV.593の作品番号がつけられているオルガン編曲もこのときの産物です。

 先週のBBC Radio3のDiscovering Musicという「楽曲解剖番組」では、このバッハ編曲版とヴィヴァルディの原曲とを聴きくらべしてまして、これがひじょうにおもしろかった。バッハ編曲版を弾いたのがダニエル・ハイド氏。まだ若い人ながら、名門ケンブリッジ大学ジーザスカレッジの学内礼拝堂聖歌隊の音楽監督をつとめていた人(いまはオックスフォード大学モードリンカレッジに移籍)。ストリーミング放送はまだあと一日残っているので、興味のある方はこの機会にぜひ。

 …ここでまったく関係のないガス抜き恐縮。せんだっての朝青龍関の引退…はそんなにおどろかないけれども、もっともおどろき呆れたのは某自動車メーカーの執行役員氏(?)の暴言、いや妄言。「ブレーキの違和感は運転しているあなたの感覚の問題だ」という趣旨のものでしたが、いやもうaghastするほかなし。ブレーキですよ、ブレーキ! 止まってほしいときに「あれ? なんかこのブレーキおかしい」ではおっかなくって、とてもじゃないけど運転なんかできやしないですよ。クルマは「走って、曲がって、止まる」ことがきちんとできればいい。でもこの三つのうちどれかひとつでも不具合があったりしたらもう×。これがほんとうにクルマを作っている会社の人間の発言だとはにわかに信じがたし。げんに事故だって起きているのに、なんというたわけた無神経な発言だろうか。その後国交相の批判を受けるかたちであわてて社長が謝罪会見を開くとは、ここもそうとうヒドイ大企業病にかかっているとしか言いようがないですわ。

posted by Curragh at 20:59| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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