2010年02月15日

樫本大進さんの「ゴルトベルク」

 先週の「ベスト・オヴ・クラシック」、水曜日に放送された樫本大進さんの「ゴルトベルク」がすばらしかった。シトコヴェツキーという人が編曲した版での演奏で、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのトリオというかたちでのものでした。こういう形態でこの長大な変奏曲(技巧的に高度なカノンが入れ代わり立ち代わり現れる)を聴くのはおおいなる喜び。最近、寝るときはきまって「ゴルトベルク(いま聴いているのは曽根麻矢子さんの録音盤)」か、グレン・グールドの残した「バード&ギボンズ作品集」を聴いていますが、とくに後者は買って大正解!! バードの「ヒュー・アストンのグラウンド」あたり、どこかにスコアがないかしら。自分でもすこしだけ弾いてみたくなった。

 ところで曽根麻矢子さんの盤のライナーに、この「ゴルトベルク」主題の「アリア」が収録された『アンナ・マグダレーナのためのクラヴィーア小曲集 第二巻』について、この「アリア」の直前に書かれたのが、なんとあの有名なシュテルツェルの歌曲、「御身がともにあるならば(BWV.508)」だという。「死と安らぎ」を歌ったこの歌曲が「眠りの音楽」の「アリア」とならんで置かれていたわけですが…たんなる偶然?? 

 また金曜日の「第1668回 N響定期公演」ではマーラーの「交響曲 第5番 嬰ハ短調」をひさしぶりに「生で」聴いた。マーラーがアルマと結婚してまもないころに作曲した作品で、心身ともに充実していた時代のもの。「ベニスに死す」で超有名になった第四楽章のAdagiettoも、じつはアルマに捧げた「愛の歌」だったらしい。出だしの楽章で金管がすこし…ということがあったけれどもそれはさておき、第四楽章が予想外にキビキビしていて気持ち速くてそっちのほうがすこし驚いた。指揮者はロシアの出身…らしいけれども、このキビキビ感が心地よくて、絶妙のテンポだったように思いました。ともすれば「感傷べったり」な演奏になりやすいので。弦楽とハープの絡みも立体的ですばらしかった。でもこの指揮者、ちょっとやかましかったかな…「ウン! ウン!」って、何度も聞こえてくるんですが(苦笑)…。ゲストの池辺晋一郎先生は、「入魂の指揮」だったと評していたようですが、なんか妙に耳障りだったのは自分だけ…? 

 …グールドが出たついでに、この前図書館から借りて聴いていた1950年代の「ライヴ・イン・ザルツブルク&モスクワ」という盤。どんなんだろうと興味津々だったけれども、やっぱりこの孤高の天才は、衆目の面前でのコンサートというものにはまるでそぐわない演奏家だったのかもしれない。とにかく演奏が荒いのです。しばらく聴いていると、「え?! これがあのグールド?」という感じで…弾き方はたしかにグルードにしかできないであろう独特な弾き方ではあったけれども…ライヴ録音のわりに「コホン!」の一声も入ってなくて、まるでスタジオ録音みたい。モノラル音源ということもあるのかもしれないけれども。

 …今週の「バロックの森」、けさはたいへん珍しくテオルボ独奏曲なんかがかかってましたね(ヴァイスの「嘆き」)。明朝はパーセルの声楽作品がかかりますが、そういえばきのうの日曜はたまたまうまいぐあいに「聖ヴァレンティヌスの祝日」でしたが、いま読んでいる本によると1556年のこの日、英国宗教界のトップ、カンタベリー大主教トマス・クランマーが司教職を剥奪された日だったらしい。「血みどろメアリー(Bloody Mary)」治世下で粛清の対象となり、3月21日、火刑にかけられ非業の最期を遂げています。現代の国教会(英国聖公会)の典礼形式や音楽は、もとをたどるとこのクランマーが編纂した『共通祈祷書』と『42箇条』(「礼拝統一令」に盛りこまれた)にもとづいています(1549年に第一次の、1552年に第二次の版を編纂している。その後も『共通祈祷書』は政治的思惑に振り回されて「改訂」がつづけられ、1662年に最終版が出た)。英語によるモテットつまり「アンセム」をはじめ、福音書朗読と詩篇唱をすべて英語で執り行うとかとか、八つあった中世以来の伝統的な「聖務日課」を「朝の祈り・夕べの祈り」に集約させたのもこの人(アングリカン・チャントと呼ばれる「英語詩篇唱」は150篇の「詩篇」をひと月で一巡するようにできている)。とにかくこの時代はカトリック信仰への急激な揺りもどしがあるかと思えば、今風に言えばたんなるこちこちの「原理主義」に走ったプロテスタント過激派が修道院や大聖堂の聖遺物箱や調度、貴重な写本や聖歌隊席までぶっ壊したという、疾風怒涛の混乱期でした――もっともこれはほんの「前兆」で、ほんとうの意味での大混乱は、「清教徒革命」時代になってからなんですけれどもね。ウィリアム・バードはまさにこの動乱時代を生き抜いた作曲家、ということになります。

関係のないおまけ→山のようなチョコレートをもらって喜ぶひこにゃん

posted by Curragh at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | NHK-FM
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