2010年02月28日

「グラゴル・ミサ」!

1). いやあ、まさかTVでも放送してくれるとは思っていなかったもので、先週の「N響アワー」で予告聞いたときは、ひとりで拍手喝采でした。

 で、見てみた感想としては…まさか巨匠シャピュイまでご登場とはこれまた思いもよらなかった(来日していたことも知らなかった)。しかも――以前紹介した、東京カテドラルの新オルガンのDVDのように――シャピュイみずから弾きながらストップの説明までしてくれまして、心憎い演出もりだくさん。なるほど、NHKホールの大オルガンの「機械ストップ」って、ストップボード向かって左端の列に並んでいるのかな(番組では「トレモロ」をかけるストップを引っ張り出していた。コラールの定旋律に使われる柔らかいリード管も、ひとたびトレモロがかかるとなんとも言えない心地よいうねりが生じていいですねぇ)? Voix Humaineストップは三段目の手鍵盤だから、演奏者のすぐ上、オルガン技師望月氏父子の作業していた「ブルストヴェルク」のパイプ室にあるみたい。

 ここのホールの大オルガンは日本初の本格的コンサートオルガンで、いわゆる「万能型」の楽器。で、この楽器のあと、しばらくはこの手の楽器ばかりが増えてしまった。模倣好きな国民性なのかどうかはわからないけれども、とにかくこの楽器の「亜流」はひじょうに多い。真に個性的というか、その音響空間にふさわしいオルガンが建造されはじめたのはここ十数年くらいではないかな。

 NHKホールの楽器は旧東独のカール・シュッケ社製で、望月氏は建造当時からこの楽器に携わっている人らしい。90ストップというのは実働ストップ(speaking stops)の数で、じっさいにはさまざまな「機械ストップ」とか、「ツィンベルシュテルン」と「グロッケンシュピール」ストップがあるから、もっと多い(後者ふたつの「打楽器ストップ」は1984年に改修されたときに追加されたもので、それもふくめれば実働92ストップになる)。TVではややわかりにくいけれども、五段目の鍵盤は演奏しやすいように、気持ち手前に傾斜している。

 ヤナーチェクの「グラゴル・ミサ」は1926年に作曲されたもの、ということしか西村先生は言わなかったけれども、とにかくこの作品はオルガンが活躍する曲、ということしか知らなくて、また演奏される機会がひじょうに少ない。なのでオルガン好きとしては、12月定期でこの希少な(?)プログラムを組んでくれたマエストロ・デュトワには感謝しなくてはならないかも(glagolicは、9世紀なかばにいまのスラヴ地方で布教活動を行ったキュリロス・メトディオス兄弟のこしらえた、スラヴ圏最古のアルファベットのこと。のちにいまのキリル文字へと取って代わる)。

 NHKホールのオルガンの保守業務を長年、つづけている望月氏のお話はとても興味深くて、こういう裏方さんの話を聞くのがなにより大好きなほうとしては、頭が下がりっぱなしである。この企画を実現してくれた方に感謝! m(_ _)m

 …でもなんか最近、ここのホールはオルガンリサイタルそのものをやってないんじゃないかという気が…するのですが。

 そういえば…番組中に説明のために携帯型オルガンの「ポルタティフ portative」が出てきたけれども…岩槻アナが、「木管、金管(プリンシパルのこと)、…チャルメラ??」と言ったあとの妙に間のぬけた沈黙が個人的には受けました。たしかにリード管のあの音って、チャルメラ以外のなにものでもないですよね…ちなみにNHKホールのオルガンには鉄砲よろしく突き出した「水平トランペット」というのがありますが(サントリーホールとすみだトリフォニーホールの楽器にもある)、あれも単独で使ったらまるで壊れたチャルメラ。でもほかの音色とうまくブレンドして使うと効果を発揮するからあら不思議。「オルガン作りの長い歴史には『わさび』まで用意してある!」とか、『残響2秒』という本で昔読んだ記憶がある。たしかに。言い得て妙とはこのこと。

 …でもオルガニストの出入口の内側があんなふうになっているなんて、はじめて知った。てっきり通路は通路として仕切られているのかと思っていた。オルガニストも保守点検の人が出入りするのとおんなじ「パイプ室」のすぐ脇を抜けてコンソールへ向かうんですねぇ。それと昔はすけすけの「手すり」しかなかったけれども、最近は手すりを覆うようにして赤いカバーがかけられているんですね。

2). きのうの朝の「ウィークエンド・サンシャイン」。バラカンさんがデイヴィッド・サンボーンの新譜を紹介していましたが、そのタイトル、Only everythingの訳がちょっと引っかかった。…「(サンボーンにとって、敬愛する故レイ・チャールズは)すべてにすぎない」という意味だという…Only everythingと聞いた瞬間、「彼はすべてにほかならない」と理解していた当方は「え? そうなの?」と当惑してしまいました…うーん、これはそんな斜に構えた言い方だったのか? 「彼はすべてにすぎないさ」ということなのか、それとも「すべてにほかならない」のか…耳で聞いた印象は、まるでちがいますね。英語はむつかしいな、いや、日本語のほうか(溜息)。

本日のおまけ:NHKホール→シャピュイ→仏人オルガニストときて、四半世紀前、NHKホールの大オルガンをまるで巨大なおもちゃのごとく、とてつもない超絶技巧を駆使して弾きまくっていた人がいたことを思い出した。その人はジャン・ギユー。1930年生まれだから、ちょうど満80歳になりますか。というわけで、ギユー先生の「妙技」をとくとご覧あれ。この曲をこんなふうに弾けるのは、この人だけかもしれない↓



posted by Curragh at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽関連
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/35761883
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック