先日、ひさびさに伊豆西海岸のさくらを撮りに行ってきました。今年の春は経験したことがないほどおかしな天候つづきで、2月の高温に3月の低温、そして低気圧が通過するたびにお決まりの嵐、ときて、せんだって三島に行ったついでに三嶋大社のさくらも見てきたのですが、強い雨に叩かれたせいか、花の色がいまいち。花もやっとこさ咲いているというような感じで、あんまり生き生きしていませんでした。うちの近所のソメイヨシノもそんな感じ。西伊豆一帯はどんなあんばいだろうといささか不安でした。
伊豆半島ほどさくらの自生種が多い場所もないのではないかと思います。ソメイヨシノは定説では染井村で作られた品種(オオシマザクラ+エドヒガン)、ということになっていますが、いまひとつ自然交配によってできたとする説もあり、その場所がじつは船原峠あたりではないか、と言われています(→参考までに遺伝研の「船原吉野」の解説ページ)。
さてバスに揺られて国道136号の船原バイパス(数年前ようやく通行料が無料になった)・平石付近を通過していたとき。自分の目を疑いました。例年だったら海岸部のさくら(早咲き種以外)が満開のこの時期、山間部の自生種はせいぜいが咲きはじめです。なのに車窓から見える自生種はどれも満開に近い状態で咲き誇っているではないか。正直、驚きを通り越してそら恐ろしささえ感じました。風は冷たいけれど天気はうららか、「春うらら」なんですけれどもね…。また西天城高原のマメザクラまで見ごろになったらしい。4月はじめで山の自生さくらが見ごろだなんて、ありえない。
いままで伊豆西海岸一帯、北から南までいろんな場所のさくらを、人の手で植えられたものにせよヤマザクラのような自生種にせよ撮ってきましたが、まだ鰹節で有名な田子(たご)・月之浦の旧道にあるソメイヨシノ並木は撮っていない。というわけで今回の目的地は田子だったんですが、峠のさくらのありようを見て、とたんに不安に駆られてしまった。
果たせるかな悪い予感は当たりました…それも咲いている花の数じたいがきょくたんに少ない。ここの並木は通過するたびに見てきましたが、こんなのははじめてです…たぶん、春の嵐つづきで猛烈な西風に乗って飛んできた海水の飛沫を浴びてしまったせいではないか、一種の塩害ではないかと思います。じっさい、このようなきょくたんに花のついていないソメイヨシノを何本も見かけました。いずれも海岸に近い場所に生えている樹です。せっかく来たのにこれでは…と思い、またバスに乗ってさらに南下、松崎の那賀地区へと向かいました。
松崎の街中を貫流する那賀川提には、河口付近から内陸へ向かってえんえんとソメイヨシノ並木がつづいていて、とても見ごたえがあります。そしてここの見どころは農閑期の田んぼを使った大規模な花畑。
バスを降りて川の土手沿いに上流へ向かって歩きはじめると、このへんは塩害もなく、例年どおりソメイヨシノ並木は満開です。正確に言えばもう散りはじめていましたが、川面には幾重にも花いかだが流れていて、これはこれで風情があっていいものです。
以前撮影に来たときは車だったんですが、15年ぶりに歩いてみると、その変わりように驚いてしまいます。まず田園風景に突如として出現したコンビニ。「100円均一」とくっついたショッピングセンターまであります。さらに川を遡って花畑が見えはじめたとき、道路わきになんとイタリアの三色旗! 花畑とソメイヨシノ並木の花見客向けの出店は以前にも見かけたけれど、よもやこんなところでイタリア料理店に出くわすとは思いもよらなかった(ナポリ風本格薪窯ピッツァが750円〜かぁ。そういえば朝もたいして食べてないし腹減ったなぁ、とか思いつつも撮影が最優先!)。
花畑も今年のおかしな天候の影響を受けているのか、以前見たようなそれこそ文字どおり絵の具箱をひっくり返したような花のじゅうたん、ではなかった。どちらかというと従来からある蓮華草のほうが咲き競っていたくらい。かんじんの花畑のほうは、これから咲く矢車草のつぼみがやたらに目立つ感じで、アフリカキンセンカはあんまり咲いていませんでした。松崎町のサイトを見ますと、どうも今年は見ごろの時期が例年より1,2週間ほど早まっているらしい。
けっこうな距離を歩いたので、帰りぎわ、足湯につかってひと休み。腹ごしらえするつもりだったイタリア料理店はタイミング悪く「準備中」になってしまい、しかたないからそのまま松崎のバスステーションへ。
バスに乗りこむと、ややあってにぎやかな集団がやってきました。どうも始業式帰りの児童らしい…一目見てピンときました。先月閉校した岩科(いわしな)小学校と三浦(さんぽ)小学校の子たちです。めいめい行き先のバスの停車位置にかたまってました。閉校したふたつの小学校の児童とも、心ならずも急に新しい学校に変わって、どうかなと思っていたのですが、元気そうでなにより…でも岩科の子たちはまだしも、三浦地区の子たちはいちばん南の雲見まではかなりの距離があるので、毎日バス通学というのはたいへんです…今日みたいに天気がいい日はまだいいけれど…。バスが発車して、仁科車庫バス停からはこんどは中学生のにぎやかな集団が乗りこんできました…こちらは昨年閉校した田子中学校に通っていた子たちでした。どうも新2年生らしい。バス通学はたいへんだけど、がんばって。
そしてけさの地元紙朝刊を見たら、三浦小学校の卒業式に、なんと歌手のさとう宗幸さんが仙台から駆けつけてくれていた…という心温まる記事を見つけました。地元の巡査部長の方が、子どもたちを不憫に思い、子どもたちが第二の校歌のように歌い継いでいた「学校坂道」の歌い手がさとう氏だとわかり、ご本人に、「せめてテープだけでも」とメールした。メールを読んで心打たれたさとうさんは仙台での仕事を終えるとそのまま遠路松崎まで向かい、卒業式当日に小学校のある石部地区に着いた、といいます。もちろんこのことを児童は知りません。当日、会場にさとう氏が現れ、子どもたちはびっくり。思いがけずすばらしい歌のプレゼントを贈ってもらった三浦の子たちにとって、一生消えない思い出になったことでしょう。さとう氏曰く、「子どもの気持ちを考えると、放っておけなかった」。
…さくらはいささか残念だったけれども、最近暗いニュースばかりなので、この話はほんとにすばらしいし、あらたな芽吹きの季節である春にふさわしい。
…というわけで今日は復活の主日。今年は仏教の「花祭り」とも重なりました。
↓今回撮った写真をほんのすこし。
