2010年04月19日

まさしく地獄の業火

 アイスランド南部の氷河、エイヤフィヤトラヨークル(Eyjafjallajökull, jökull=glacierの意)火山が大爆発を起こし、成層圏あたりまで吹き上がった大量の火山灰が偏西風に乗ってたちまちのうちに欧州上空に広がり、空の便に大変な影響が出ていますね。旅行客や仕事や学会などで欧州に出かけられていた方もさんざんな目に遭っているのですが、航空貨物や輸入食材(とくにチーズや海鮮、魚などの生鮮食品関係)も足止めされてしまって思わぬところにまで影響が出ています。個人的にもっともおどろいたのは、すでに上空の火山灰は北大西洋まで越えて、カナダ・ニューファウンドランドにも到達していること(参考リンク→NASAの報告ページ)。比較神話学者のキャンベルに言わせれば、これら人智の計り知れないとてつもない現象をじつに明快に「怪物」だと表現していた。TV画面で見てもあの夕陽(?)に照らされているのか、オレンジ色に染まり電光まで走らせもくもくと湧き上がるあの噴煙のものすごさときたら、言語を絶するものがある(折悪しく中国のチベット高原では大地震まで発生してしまった)。日本ではとりあえずとんでもない異変は起きてないとはいえ、たとえば今年の春の異常な天候は、やはり怪物じみたなにものかを感じずにはいられない。なんとominousな春だろうか(→関連記事)。

 ラテン語版『聖ブレンダンの航海』 23-4章に出てくる海底火山および陸上火山の噴火にブレンダン一行が遭遇したと思われる場面。ギリシャ・ローマの古典の記述を参照したのか、それとも北大西洋のアイスランドかカナリア諸島あたりの火山噴火を目の当たりにしただれかさんの証言にもとづいて語られているのか、さだかではないけれど、あのどす黒く、生き物のように刻々と姿かたちを変える巨大な噴煙を見ていると、やっぱりあの記述はじっさいに火山噴火を見た人からその恐ろしさを伝え聞いたからこそ書けたのではないか、と思ってしまう。

 NYTこちらのギャラリーページにもそのすさまじい噴煙がみごとに捉えられています。また画像投稿サイトでは特集(?)ページまで組んでいて、あらためて今回の爆発の規模がいかに大きなものであるかを感じさせられます。

 NYTに写真を寄稿した写真家は30年、アイスランドの気まぐれな火山風景を撮影している人らしいけれども、欧州全域の空の便を事実上麻痺させたような噴火は経験がないという。

But until Sunday morning he had never seen anything like the volcano that is tying up air traffic in much of Europe, he said.

 そしてここの火山は過去200年ほどはおとなしくしていたらしい…ということは富士山もそろそろ危ない?? で、大島の「御神火」とおなじく、アイスランドの人にとっても「観光客向けの噴火」とそうでないものがあって、今回はその後者にあたる。エイヤフィヤトラヨークルでは先月まで「真っ赤な溶岩流を吹き出す」タイプの通常見られる噴火がつづいていたという(これははじめて知った)。それがやっと収束したと思ったら、こんどはその近くからあらたに大噴煙を吹き上げたのだからたまらない。自然の力はやはり計り知れないし、予測不能です(専門家は、氷河とマグマが接触したために大規模な水蒸気爆発を引き起こしたと考えている。そういえば過去にもアイスランド中央部に転がる欧州最大の氷河、ヴァトナ氷河下の火山が噴火したときもこんな感じで噴煙を吹き上げていた)。

 エイヤフィヤトラヨークルあたりは『航海』に出てくる「炭のように黒い」という描写どおり、玄武岩質の真っ黒な火山岩類からできています(アイスランド南岸の断崖絶壁とその下の浜辺もみごとなまでに真っ黒)。とはいえいまのところは中国の地震とはちがって直接の犠牲者は出ていないことは、不幸中の幸いではあります。はやく噴火が収まることを祈るのみ。これだけ大量の火山灰を吹き上げているし、今後の気象異変とかも心配(→Wikipedia日本語版にも詳細な記事が出てましたので念のため。それにしても『アイスランド地名小辞典』なんて地名辞典が30年前に発行されていたとは! 昔セヴェリンの航海記録(The Brendan Voyageです)を読んでいたときに頻出するアイスランドの難読地名の発音がわからなくて、図書館とかに通って大型地図をコピーしたり、日本人OL三人組の書いた『アイスランド 何処ドコ紀行』などの旅行記なんかも手許においたりしてあったけれども…)。

posted by Curragh at 23:48| Comment(0) | TrackBack(0) | Articles from NYTimes
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