2010年04月30日

'bigoted'ひとつで大騒動

1). 以下、かんたんにメモ書き。総選挙さなかの英国で、ブラウン首相のオフレコ問題発言が物議を醸していますが、BBCニュースによると、とくに問題になったのは'She's just a sort of bigoted woman'という部分だったらしい。

 けさの朝刊紙面の記事を見たら、「首相が使用した『bigot』は、『自分の考えに凝り固まって、それ以外の意見を持つ人に不寛容な人』の意味。英国ではかなり直接的な表現で、人種差別主義者らに対して使われる場合がある(下線は引用者、以下同)」と書いてありました。手許の辞書(『リーダーズ』)でbigotedを引くと、「頑迷な」、もとのbigotでも 「偏狭頑迷な人、頑固者」とじつにあっさりした語義しか載ってなくて、新聞読むまでこの形容詞が英国でこのような印象をひとに与える、ということまでは知らなかった(語源は『ランダムハウス』には「[1598.<中期フランス語(古期フランス語ではノルマン人に対するフランス人の蔑称(べっしょう)として)]」とあるからもとはアングロ・ノルマン語から入ってきたらしい)。知っていて損はないとは思うけれども、'bigoted'は使わないほうが無難な単語みたいですね。またおなじく新聞記事で、「まったく台無しだ。あの女をおれに質問させるべきではなかった」となっている個所は、'That was a disaster - they should never have put me with that woman. Whose idea was that? It's just ridiculous...'という発言部分みたい。典型的な仮定法過去の言い方。すぐあとに'I don't know why Sue brought her up towards me'とつづくから、それも考えたうえでもうすこし自然な日本語にリライトするなら、「よくもあんな女に会わせたな。だれの発案だ? まったくバカバカしい…なぜスーはあの女を連れてきたんだ?」くらいでしょうか。BBCの記事を見ると、参考になる表現がほかにもいろいろと出てきます。たとえば'I'm afraid that sometimes you get picked up by a microphone in this way, saying something that yes you don't believe, but you say in the heat of a moment.'。「今回のような発言をマイクがひろってしまうことは残念ながらときおり起こってしまうものです。ついカッとなってあんな心にもないことを口走ってしまいました」くらいだと思うけれども、なるほど、「ついカッとなって」は'in the heat of a moment'なのか。

 そういえば以前、英国人はいまだにことば遣いでその人の階級を判断するようなところがあると、もと常葉大大学院教授先生の書いたコラムで読んだことがあった。たとえば上層中流以上の人は「昼食」を'lunch'と呼ぶのにたいして、労働者階級では'dinner'と言うとか、午後4時ごろのお茶の時間を前者はたんに'tea'と言い、後者は'afternoon tea'と呼ぶとか。また相手の発言が聞き取れなかった時の定番、'Pardon?'というのは英国中流以上の人からはいまだにひどく嫌われていて、彼らは'Sorry ... what?'と訊き返すとか、上層中流以上の人はこんにちでも食事の最後に出される甘い食べ物を'pudding'と呼び、彼らより低い階層が使う'sweets', 'afters', 'dessert'とかの言い方は受け入れがたいもののようだ、とか書いてありまして、こちらもたいへんおもしろかった(上層中流以上の人はトイレを'loo'とか'lavatory'と呼び、それ以下の階層の人はふつうに'toilet'を使うといったことまで書いてあった。辞書には「英略式」としてlavvieも載ってました)。

 …とにかく「口は災いの門」ですな。おなじく気の短い人なので、他山の石にしたいと思ったしだいです。orz

2). 先日、いつも行っている図書館にあるO.E.D.を見ていたら、ひょんなことから英国特有の「クワイヤオルガン(choir organ)」の見出しも発見してしまった。ついでにchoristerの項目もさっそくコピー(笑)。本来は二段手鍵盤のみのタイプのオルガンを指すことばだったのですが、これについては以前「チェア・オルガン」が訛ったものと書いたような気がする(O.E.D.の見出しにも'choir organ, chair organ'と併記してあった)。O.E.D.(Vol. III, p.153)にもおんなじような断り書きが書いてありました。

'The latter is the original name. Choir organ, if not a blunder to begin with, has often been wrongly substituted for chair organ in printing 17th c. documents; and thus, even writers of repute have erroneously alleged that it was the original.'

 また'chorister'についてはもとは'queristre'と綴り、初出は1360年ごろらしい。The English Choristerにはラテン語表記の'chorista'の初出が1267年ごろとある。

 …といましがた、映画「奇跡のシンフォニー」で教会のオルガンを弾きこなしていたフレディ・ハイモアくんが出ているページを発見。でかくなったねー、そして声も低くなったねー(当たり前だが)。「アーサーと魔王マルタザールの逆襲」という作品について話していて、前作に引きつづいてtitle roleを演じたんですって。ちっとも知らなかった。

posted by Curragh at 23:47| Comment(0) | TrackBack(1) | 語学関連
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