2007年04月29日

欧州の少年合唱団が抱える問題

 先日、夕方のNHKニュースを見てややびっくり。今年、来日公演をおこなうウィーン(ほんとはヴィーン)少年合唱団・ブルックナーコア。その一員として、合唱団創設以来初の日本人団員も参加、と報じられていたからです。しばしあっけにとられて見ていましたが、公演主催者側も記者会見まで開く熱の入れよう。

 自分もせんだって楽器屋に立ち寄ったとき、某雑誌を立ち読みして、「あ、今年は日本の子がいるんだー」と感心していました。なんでも2年前に来日したウィーン少のコンサートを聴いて、本人の意志で入団を決めたんだとか。

 3年ほど前だったか、ウィーン少が本格的に日本でのリクルート活動をはじめたという新聞記事を目にしたことがありました。そのときは、遠い異国の地での寄宿舎生活に厳しい練習、規律も厳格なうえにことばはドイツ語、そんな苛酷な環境にいまどきの子(失礼)がはたして耐えられるのかといぶかったものですが、そんな勝手な思いこみはみごと払拭されたかっこうです。

 とはいえ、渡墺してたった2年でドイツ語があれだけ話せるようになるには、目に見えないところで血のにじむような努力をしたはずです…いつだったか忘れたけれど、さるウィーン少OBの話では、練習のあいまに学業をこなさなくてはならないため、「トイレに入っているあいだも自習していた」。だからカイ少年の頑張りには心から拍手を送りたい(歌うのはアルトパートらしい)。

 「純粋な」日本人の子が入団し、公演に参加するというのはたしかにカイくんがはじめてですが、日系ハーフの子ではかなり前から実績があります(今回もそんな感じの兄弟団員がいますね)。たとえばこちらの体験記など。9年前のクリスマス時期に聴きに行った、オックスフォード・クライストチャーチ大聖堂聖歌隊とケンブリッジ・セントジョンズカレッジ聖歌隊合同公演でも、父親が英国人でもとセントジョンズの少年聖歌隊員、母親が日本人という子が、かつて父親も在籍していたセントジョンズ聖歌隊の一員として歌ってました。

 ウィーン少の場合、かなり前から「募集しても団員がなかなか集まらない!」という問題を抱えていました。このままでは500年もの歴史を誇る合唱団存続の危機になる、とついに少女にも門戸を開いて、女子クラスも併設したという経緯があります。そしてこれはなにもウィーン少にかぎったことではなくて、たとえば13世紀に創設されたスペイン・モンセラート修道院付属聖歌隊学校も同様の理由で存続の危機に陥り、やはりウィーン少とおなじ「男女共学」にする方針だとNYTimes の記事で読んだことがあります。また米国でもこれまでにいくつか名の知られた合唱団が解散しています。合唱大国・英国でも似たりよったりで、最近読んだThe English Chorister: A History という本にも、新規聖歌隊員の確保にまつわる苦労話と、1990年にはじめて女子聖歌隊員を導入したソールズベリ大聖堂での事例が短く紹介されています(p. 258, pp. 268-9)。英国ではいまだに「男声のみ」の聖歌隊にこだわる人も多く(VoAでもいわゆるmixed choirの是非について論争に発展することがしばしば)、聖歌隊指導者もたいへんだなぁ、とつくづく思う。このように本場欧州の有名どころの少年合唱団/聖歌隊はいずれも似たような問題を長年にわたって抱えていて、台所事情もけっして芳しくないのが実情のようです。

 ただしウィーン少の場合、もう何年も前から構成団員の「多国籍化」が進んでいるので、はたしてこのままでよいのかという問題が残ります。ようはバランスの問題かと思いますが、贅沢なようでも聴くほうとしてはやっぱりウィンナワルツにポルカは生粋の「ウィーンっ子」の少年に歌ってほしいもの。

 …そういえば今年は「パリ木」創立100周年にあたりますね。最近は来日してないけれども…。

 …そしてこれはまったく個人的なことながら、これを書いたのはほぼ24時間前のこと。いつもたいしたこと書いてない、というか書き散らしたたぐいの駄文を綴っているにすぎないとはいえ、人がそこそこ気合入れて書いているときにかぎってここの大家はきまって接続さえできなくなる。先月にひきつづいてこれでは、書きたいことがあっても書けませんなぁ…と愚痴っているひまがあったら本家の更新でもすればいいだけの話なんですけれどもね。

 大家の「お知らせ」では、先月中に復旧したはずなんですが、これじゃぜんぜん変わってないみたいですな。orz

posted by Curragh at 21:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽関連
この記事へのコメント
あ、やっぱり、ごちゃごちゃしてたんですね・・こんな記事を書いておられたとは・・・今知りました。カイくんのことは、私もとりあえず自分のBBSにミーハー調で触れておきましたが、インタビューでも本当に厳しい生活を絶えて頑張っている雰囲気がびしびし伝わってきたので、親御さんもこの子自身も相当の決心があってのことだったんだなと思っていましたよ。でも、今のところは、かんじんの歌声が聴けないので、歌手としてはなんとも言いがたいですからね・・・(つまり話題性ばかり先行してますけどね)
Posted by Keiko at 2007年04月30日 09:03
Keikoさん:

カイくんの取材記事はAera(p.59)にも掲載されていますね。またもうひとり、カイくんにつづいて団員になった子のことも紹介されていました。

ご本人の弁によると、ウィーンでの生活はとても楽しく、充実しているようです。それにしてもわずか10歳そこそこでひとり異国の地に留学、というのは並大抵のことではありません。もって生まれた才能、音楽にかける情熱を人一倍もっていたということなのでしょうが、たいへんな行動力だとあらためて感服します。
Posted by Curragh at 2007年04月30日 19:08
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/3863017
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック