2010年05月29日

チャロの黄泉下り

 ラジオ版の「チャロ2」聴いてるんですが、正直申し上げて、初回放送分を聴いたときにはなんだかついていけないな〜と思ってしまった。それでもめげずに(?)聴取しているうちに、ムウの話(Episode 7)のあたりからようやく感情移入できるようにはなったかな。でも聴いていてなんだか眠たいと感じるのは、前のシリーズとちがって、今作では具体的な「演習課題」があんまりないからだろうか(講師の松本先生は、「字幕なしで洋画を楽しめるようになること」を目標のひとつとして挙げている)。個人的には前シリーズの佐藤先生・栩木先生の「教え方」のほうが好きだったですね。

 前回とは打って変わって舞台設定がいきなり――ほんとにいきなり――「ミドル・ワールド(間の国)」なる異界。なんか「中つ国」みたいだ、というのはこのさい忘れて(笑)、翔太の魂を必死に「現世(うつしよ)」に連れもどそうとするチャロを見ているうちに、ふと「大教皇グレゴリウス一世がトラヤヌス帝を引き上げる」話を思い出してしまった。

 これは中世ヨーロッパではかなり知られていた話だったようで、グレゴリウス一世(在位590-604)が、「五賢帝」のひとりトラヤヌス(在位98-117)がほかの罪人と同様に地獄で苦しみを受けるのはしのびない、どうか天へ引き上げるようにと涙ながらに主イエスに懇願する、という内容。話そのものの起源はもっと古くて、8世紀初頭にオリジナルと思われる話が記録されているとか。それ以降、大教皇グレゴリウスの偉大さを称える伝説の一部としてさまざまな脚色が加えられたりもした。1150年ごろにレーゲンスブルクで書かれたとされるKaiserchronikという叙事詩にも出てくるし、神学者オータンのホノリウス(ホノリウス・アウグストドゥネンシス)も「正しい判断の結果として異教徒が地獄の劫罰から救い出せるのであれば、なおのことキリスト教徒にもそれが適用されてしかるべきだ」と説教にも引用しているとか。

 …余談はともかく、先週の回を見てふと思ったこと。魔女(??)ランダが'You will lead Charo to me!'と言った科白。willを使ってますが、たぶん100年前だったらshallを使っていたところだと思う。たとえばWebsterは以下のように規定しているという。

「…shallは一人称では単純未来、二人称・三人称では『決意・強制・義務・必要』などを表し…法律文や決議文などで『するものとする』の意で用いられ、…willのほうは一人称では『意思・義務・必要』を、二人称と三人称では『単純未来』を表し…」(中村保男・谷田貝常夫著『英和翻訳表現辞典』 研究社出版刊 p.474)

 もとのコピーが見当たらなくて申し訳ありませんが、アーノルド・ベネットという英国の小説家の書いたエッセイ(Daily Miracles、たしか邦訳本『自分の時間』所収の話だったと思う)にも、神様(?)だかが「あいつにはもうこれこれのものはやらない」みたいな科白が出てきて、'He shall not ...'と書かれてあるのも思い出した。上記引用で「するものとする」という意味のshallは、たしかにいまでも幅広く使われていますね。あとは'Shall I 〜?'、'We shall see.'みたいな決まり文句くらいですか。ほんとうにshallは見なくなった、と自分でもそう思う。昔だったら'I shall be twenty next month.'と言っていたものが、いまではwillに取って代わられていますし。ついでにノートブックに入れてある『ランダムハウス』には、「{米}では will が普通で, shall を用いるのは形式張った場合に限られる. {英}でも will を用いる傾向が強い. {話}では I'll, we'll となる」とありました。

 …ここで急にNHK-FMへと脱線して…今週の「バロックの森」は「聖霊降臨祭にまつわる音楽」でしたね(今年は今月23日)。カンタータなど声楽作品がメインでしたがオルガン曲も多くて、リューベックの聖マリア教会オルガニストだったトゥンダーの「コラール前奏曲 “来たれ聖霊、主なる神よ(かかったのはヴァルヒャ盤。使われているのはカペルの聖ペトリ・ウント・パウリ教会のアルプ・シュニットガーオルガン)"」、そのトゥンダーの後継者ブクステフーデの「前奏曲とフーガ ト短調 BuxWV.163(レオンハルト盤)」、バッハの「オルガン小曲集」からBWV.631と632の2曲(リオネル・ロッグ盤)。このうちもっているのはヴァルヒャ盤だけだけど、レオンハルトのブクステフーデもいいですね。そしてけさの放送はあいにくほとんど寝ていたのでよく覚えていないが(苦笑)、テレマンの「パリ四重奏曲集」から「四重奏曲 第1番 ト長調」でレオンハルト&クイケン兄弟盤だから、たぶんこれはもってる(レオンハルト50周年記念盤で)。しかも明日の「リクエスト」、のっけからバッハのオルガンコラール「クリスマスの歌によるカノン風変奏曲 "高き御空よりわれは来たれり" BWV.769」ではないか! 1747年6月、ローレンツ・ミツラーの音楽学術協会にバッハが「14番目の会員」として入会したときに提出したもの。ついでに例のカノン譜(「ゴルトベルク」低音主題にもとづく「6声の三重カノン BWV.1076」)の紙片をもってこっちを睨みつけている肖像画も入会時に提出したもの。ルターのクリスマスコラールにもとづく5つのカノン風変奏からなり、主調はみんなおんなじハ長調。あとへ行くほど手の込んだカノン技巧が繰り広げられ、4番目と最後の変奏ではBACH音型も出てくる。また最終変奏では6度、3度、2度、9度の反行形で応答する四種類のカノンとなり、コラールの各行がストレッタでたたみかけるように重なってます。とても快活なコラールパルティータで、カノン技法がどうのこうの、といったことは抜きで聴いて楽しい作品です。いかにもクリスマスという感じ…だいぶ季節はずれではあるが。

posted by Curragh at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 語学関連
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